「発達障害があることを併せて考えると、親が亡くなったことも理解できずに、そばでただじっと横になっていたのかもしれません。そうでなくても、こだわりから、母親に食べさせてもらわないと食事を摂(と)れない子や、偏食の強い子もいる。一人で食事を摂るのは難しかったでしょう」(新井医師)

 お腹が空けば何か食べるという"常識"は、Rくんには当てはまらないのだ。実際、10年5月末から6月中旬にかけて、一時保育でRくんを預かった保育士は、食事を摂らせるのに苦労したという。立川市保育課の吉田正子課長は言う。

「保育士によると、Rくんはじっと座っていることができず、食べさせるのに苦労したそうです。こちらが食べさせようとしないと食べない、自ら食べることをしない子だったようです」

 こうした情報は、市の中でどこまで共有されていたのだろう。Rくんの死は、発達障害を正しく理解することの難しさとともに、障害を併せ持つことの危うさについて、社会の理解がいかに乏しいかを教えてくれる。この家庭はハイリスクだったのに、最後まで危険度に見合った注意が払われることはなかったのだ。

※週刊朝日 2012年7月27日号