まだかめるから大丈夫と思いこみ、抜けた歯を放置している人はいないだろうか。実はそのままにしておくと、次々に歯が悪くなる。「歯列欠損」にくわしい宮地建夫歯科医師に聞いた。

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 抜けた歯を放置してはいけません。なぜかというと、最終的に口の中が、入れ歯もインプラントもむずかしい状態になってしまうからです。

 最初に失われることが多いのが、「6歳臼歯」と呼ばれる第一大臼歯です。この歯は、子どものころに生えるのでケアが行き届かず、むし歯になることが多いのです。しかし、片側がなくなっても、反対側でかめるので、放置しがちです。するとどうなるでしょう。

 残った奥歯を酷使することになるので、そちらも歯が悪くなり、左右とも奥歯がなくなります。すると今度は前歯でかむことになります。その結果、上の前歯が破壊されて、失われてしまいます。

 ここまでくると、実は手遅れなのです。歯のない側が痛めつけられて、歯ぐきがどんどんやせていきます。歯ぐきがないために、入れ歯が安定しにくいのです。また、あごの骨も吸収されて薄くなり、インプラントもむずかしくなります。

 こうした悪化は徐々に進むので、気がついたときには、相当状態が悪くなっています。ですから、歯がなくなったら放置せず、早めに歯科医師の治療を受けてください。そのほうが、治療費も結局、安くすむはずです。

※週刊朝日 2012年5月25日号