4月26日、宮内庁の羽毛田信吾長官は会見で天皇、皇后両陛下の葬儀の簡素化に関する方針を発表した。両陛下は自らの葬送を「極力国民生活への影響の少ないものとするように」としており、同庁は葬儀を土葬ではなく火葬とすることや、墓所に当たる「陵」の小規模化、天皇と皇后を同じ陵に埋葬する「合葬」などを検討するという。
 テレビ朝日で宮内庁担当を長年務めた神田秀一さんによれば、火葬は昭和天皇の時代にも検討されたことがあるという。
「宮内庁は1978年ごろにも、昭和天皇の葬儀を念頭に、内々で火葬を検討していました。法令で土葬が禁止されている地域があったためです。天皇家にこの法令は適用されませんが、世の中の流れに逆らう形で土葬を続けていいものかと、宮内庁が行政レベルで検討していたのです」
 だが、昭和天皇が健在な中で公然と議論するわけにもいかず、いつしか立ち消えになったという。
 それだけに、両陛下が羽毛田長官を通じで自らの意思を公にしたことは、宮内庁の関係者にも驚きをもって受け止められている。
 麗沢大の所功客員教授(日本法制史)は、「今回のご意向は、皇太子時代から象徴天皇のあり方を考え続けてこられた陛下が、政府や国民に象徴天皇としてふさわしい葬儀の形や、さらに言えばみたまの祀り方を考えるようにと、重い問いを投げかけたと言えるのではないか」と指摘する。

※週刊朝日 2012年5月18日号