北朝鮮のミサイル発射をめぐり、政府の初動対応は「迷走」した。米国から発射情報を得て、確認作業中にメディア情報が先行。あわてた政府が追認する形となった。こんなことで、緊急事態は大丈夫なのか。
 4月13日当日、防衛省が米の早期警戒衛星(SEW)から発射情報を得たのは午前7時40分。8時には韓国国防省が発表し、米テレビも速報した。だが、政府は8時3分、地方自治体に情報を伝達するシステム「エムネット」で「我が国は発射を確認していない」と発信した。
 政府がSEWの情報を公にしたのは8時23分。田中直紀防衛相が「7時40分ごろ、飛翔体が発射されたとの情報を得ている」と発表したのだ。
 軍事ジャーナリストの田岡俊次氏によると、SEWは熱源を感知し、ミサイル発射だけでなく、火山の噴火なども感知するという。
「SEWの情報で発表するか、裏取りをしてから確実な情報として出すかは政府の方針の違いだ。日本政府は前回の早とちりに相当懲りて、裏取りを重視したのだろう」(田岡氏)
"前回"とは、2009年4月、北朝鮮によるミサイル発射の際のこと。速報を急ぐあまり、前日に誤報を流し、自治体が混乱した。航空自衛隊航空総隊司令部が、別の飛行物を探知した地上レーダー情報をミサイル発射と勘違いし、防衛省に伝えたのが原因だった。
 軍事評論家の岡部いさく氏は「日本が情報分析に時間がかかったのは仕方がない」という立場だが、こうも指摘する。
「国民は少しでも早く『本当に発射されたのか』『自分に危険が及ぶのか』を知りたい。日本政府は『確認中ではあるが、SEWによるとこうなっている』という情報を出した方がよかったのではないか」
 確かに言えることは、ミサイルが飛んできた後に情報を出されても後の祭りだということだ。

※週刊朝日

 2012年4月27日号