コメンテーターとしても活躍する作家の室井佑月氏。なかなか進まない被災地の復興について、政府への不満をつづる。

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 東日本大震災から、もう1年が経った。なのに、この国の政府はなにやってんだか。

 20兆近い復旧・復興予算はとっくに成立しているはずなのに、未だ被災した自治体には約3000億の第1弾しか流れていないんだってね。

 復旧・復興予算て、被災地の人のためにつけられた予算じゃん。緊急を要するものじゃん。けど、大手企業や政治家、官僚たちの旨味ぶんどり合戦で、なにが目的で、なにがいちばん大切なことか、ぐちゃぐちゃになってきている。嘆かわしいことだ。

 こんな風になるぐらいなら、各自治体にお金をとっとと分配し、ある程度、判断を任せたらどうか。そのほうが、復旧・復興、本来の意味を持って、被災者たちのためになるお金使われるかも。

 というのも、政治家が頻繁に行っているらしい、それが仕事であるような議論や会議に対し、意味がないんじゃないかと思えてきたからだ。

 東日本大震災に関する政府の重要会議の議事録が作成されていなかった。

 嘘だろ。責任を取るのが嫌だから、内容を出せないんだろ。責任を取りたくない、旨味だけを欲しがる人々の議論や会議に、どんな意味があるんだろうか。もしかすると、問題解決に当たって最も邪魔になっているものかもしれん。

 そうそう、3月8日には、子ども手当の名称を、『児童のための手当』に変える案が出たそうだ。新聞には、「3月末に期限が切れる子ども手当の見直し協議で、最大の焦点になっているのが、見直し後の名称」と書かれていた。

 なんでも『児童手当』の名称にこだわる自民党・公明党が『児童のための手当』という名称では納得しないんだとか。

 馬鹿こけ! 大事なのは、子供のいる所得の低い家庭が、いかに楽になるかだろ! みんなそろって馬鹿、馬鹿、馬鹿。

 もともとあった『児童手当』は、『子ども手当』として2009年民主党のマニフェストの目玉政策となり、政権交代以降は、『子どものための手当』、『児童育成手当』『児童のための手当』と、名称をどうするかで揉めに揉めている。名称が変わるたび、内容も劣化して行っている模様。

 東日本大震災に関連する政府の重要会議の議事録を出せないっていうなら、まずこっちの会議の議事録を出してくれないかな。たかが名称で揉めてる様子を。それでいろいろ判断できると思うんだ。

 ま、たぶん想像通りなんだろう。

※週刊朝日 2012年3月30日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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