2月24日、AIJ投資顧問が顧客から預かった約2100億円の企業年金が消失したことが発覚した。AIJは1989年に設立され、リーマンショックによって東証株価指数が35%下落した2008年度でも、7.45%の利益をあげるなど"高収益"を売り物に、預かり金を急増させていった。

 しかし、AIJの内部事情を知る証券マンはこう語る。

「今回は同業者から証券取引等監視委員会への告発で発覚したようです。今年から監視委員会の調査が入っていました。AIJの運用については、2月24日にホームページに突如として掲載された『事業報告書』の4ページ目に、重要なヒントがあります」

 その書類の4ページ目をみると、表の下に小さな文字で「※」がある。そこにはこう記してあった。

〈国内の運用資産総額の殆どは、当社と投資一任契約を締結する海外管理会社が設定する外国籍私募投資信託を対象としています〉

 小難しい金融用語が並んでいるが、簡単に言うと、こうなる。「運用資産は海外に持ち出されています」

 本誌記者がそこまで読んだのを確認すると、前出の証券マンはこう言った。「もう、ピンときただろう。これは、オリンパス事件と酷似している」

 こういうことだ。

「海外」が、ケイマン諸島籍など租税回避地のペーパーカンパニーであれば、その中身はブラックボックスとなり、損失が発覚する可能性は極めて低くなる。まさにオリンパス事件の「損失隠し」と同じである。

 さらに、オリンパス事件との共通点を推測させる要因がある。この証券マンが続ける。

「AIJ代表の浅川氏は、野村時代は本支店長まで務めました。実は、野村時代には、オリンパス事件の『損失隠しスキーム』の指南役の一人として金融商品取引法違反の疑いで逮捕された中川昭夫容疑者の部下だった。中川容疑者は外資系証券の東京支店長に転職した際、浅川氏をスカウトするほどの仲でした」

 そう、ここでもオリンパス事件で暗躍した野村OB人脈がつながっているのだ。

※週刊朝日 2012年3月9日号