田代検事は2010年5月に小沢氏の元秘書、石川知裕衆院議員(38)から事情聴取をした際、捜査報告書に"架空"のやりとりを書き加えていた。捜査報告書によれば、石川氏は田代検事に、
「あなたは11万人以上の選挙民に支持されて国会議員になったんでしょ。(中略)それなのに、ヤクザの手下が親分を守るためにウソをつくのと同じようなことをしたら、選挙民を裏切ることになりますよ」
 と説得され、小沢氏の事件への関与を認めたことになっている。しかし、実際にはそんな会話はなかった。

 しかも、この虚偽記載には"元ネタ"があったようだ。刑事告発した市民団体「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」の八木啓代代表が言う。

「元衆院議員秘書の塩野谷晶さんの著書『実録 政治vs.特捜検察』(文春新書)の中で、石川氏がまったく同じ文言を、同じ特捜部の吉田正喜副部長(当時)から言われたと証言している部分があるのです」

 該当部分を引用しよう。

〈私の場合はむしろ副部長に涙ながらに諭されたことがありました。「あんた、真実を言わないで、(あなたに投票した)十一万八千六百五十五人の有権者に申し訳ないと思わないのか」と。(中略)あれは一番効きましたね。いや効いたっていう意味は、なんで信じてくれないんだろうとショックを受けるわけですよ。だから土下座もしましたよ。「(裏献金の)五千万は断じてもらっていません。もう勘弁してください」って。向こうが涙を流してくるから、こっちは土下座しかないなと思って〉

 小沢氏の関与を認めるどころか、事実はまったく逆だったわけである。

 最大の問題は、この捜査報告書が検察審査会による小沢氏強制起訴の議決に大きな影響を与えていた点だ。当の石川氏が言う。

「供述調書と違い、捜査報告書は聴取を受けた本人ですら見ることができません。問題の報告書が検察審査会の議決に使われていたとすれば非常に遺憾です。何度も取り調べを受けた経験から、田代検事個人の問題とは思えない。どのようにして報告書が作成され、審査会に提出されたのか、徹底的に調査すべきです」

 膿を出しきることができるかどうか、検察の矜持が問われている。 (本誌・大貫聡子)


週刊朝日