広瀬隆「科学的な説明と汚染観測が必要だ」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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広瀬隆「科学的な説明と汚染観測が必要だ」

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週刊朝日#原発

原発破局を阻止せよ!

緊急連載第4弾

 4月7日深夜、宮城県沖のマグニチュード(M)7・1という最大級の余震で、大停電が起きました。青森県の六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場と、東通原発で外部電源が遮断され、非常用発電機が稼働したと報じられました。
 現在断末魔で全面停止している六ケ所村の再処理工場は、全国の原発から運ばれてきた使用済み核燃料で容量3千トンの貯蔵用プールがほぼ満杯です。電源喪失やプールの破損で冷却できなくなれば、水素爆発が起きる危険性があります。もし、厳重に管理されている強い放射能を出す高レベル放射性廃液の一部でも漏れ出せば、東北北部と北海道南部の住民が避難するほどの大惨事になるでしょう。
 M8クラスの余震もあり得ると言われています。その中で福島第一原発は事故から1カ月たっても、悪化の連鎖が止まりません。
 炉心で起きていることや汚染の広がりについて、科学的なデータに基づく説明をまったくしない国に、みな激怒しています。推測の根拠が、いずれも外国からの警告による状態で、これが近代技術国家なのか、と。
 東京電力は6日、格納容器内の放射線測定をもとに1号機の炉内の燃料棒は7割が損傷していると発表しました。しかし、溶けた燃料の状態の説明も、根拠もありません。圧力容器の底にたまっているのか。底の一部が抜けて格納容器に出ているのか。それによって、対策はまるで違います。
 翌7日未明、格納容器内の水素爆発を防ぐために窒素充填を始めましたが、この危険性に気づくのが遅すぎます。放射線で水が分解されて水素が発生するのは化学の初歩の知識であり、報道されているように米国に言われるまで対応策を講じなかったとすれば、信じられない「専門家」です。
 2号機の取水口付近の亀裂から流れ出していた汚染水の測定では、基準の750万倍のヨウ素131と、130万倍のセシウム137が検出されました。
 2日に流出が見つかってから、コンクリートを流して止めようとしたのも信じられなかった。海水がじゃぶじゃぶ混ざって固まるわけがない。おがくずや新聞紙を投げ込んで、6日には砂利をガラス状に固める薬剤で流出が止まったと発表されましたが、元を断たなければ、現在もどこかから漏れているはずです。
 破損した燃料から出た高濃度の放射性物質を含んだ水が、タービン建屋や坑道を伝って漏れ出したのは明らかでしょう。ボロボロの建屋が砕石でできた土台の上に立っているのですから、大量の水を圧力容器や使用済み燃料プールの冷却のために流すことは、汚染水を砂の上に流しているようなもので、海に流れ出ていくのは当たり前です。私は最初から、建屋内の多数の流路を推測して「じゃじゃ漏れ」になっていると言ってきましたが、実際に、そのとおりだったわけです。
 高濃度の汚染水をためる場所を確保するために、比較的汚染度の低い水の大量放出も始めました。流出ではなく、今度は「故意に放出」という国際的な犯罪行為です。たとえば全国の原子力プラントにあるタンクを持ってくれば、海に流さずに管理できるのに、それすらしていない。全国漁業協同組合連合会の会長らが東京電力本店を訪れて、「人為的に汚染水を海に放出した暴挙は許されない」と憤ったのは当然です。
 この状況は、1980年代まで大量の放射性物質を海に放出した、英国のセラフィールド(旧ウィンズケール)の核燃料再処理工場による海洋汚染と似ています。世界中に非難され、放出量は1千分の1に減少しましたが、魚介類に含まれる放射性物質の量は、30年後でもほとんど減っていません。東京電力や原子力安全・保安院は「希釈される」と言いますが、放射性物質そのものは減らない。多くが海底にたまり、それが再び海水に溶け出す循環状態になってしまうのです。

◆猛毒物を平然と海に流す大罪◆
 東京電力は「低レベルの汚染水」と言いますが、含まれている放射性物質は高レベル汚染水と同じで、単に濃度が低いだけです。たとえば、青酸カリを薄めたものを飲めと言われて、みなさんは飲みますか。彼らはそういう猛毒物を平然と海に流しているわけです。動物性たんぱく質の4割を魚介類から摂取する日本人にとっては、欧米と比べてきわめて深刻な話です。
 3月31日には東京湾のアサリからごく微量の放射性セシウムが検出されました。空から落ちたと言われますが、ウィンズケールの汚染の広がりを考えると、海流に乗ってきた可能性が高いと私は見ています。
 今、一番にやるべきことは測定です。海や土壌の汚染状況を詳しく調べて、すべて公表しなければ許されません。避難指示が出ている20キロ圏内の人たちが一時帰宅をするという話も出ています。その前提として、詳細な測定で危険性を明らかにすべきです。
 連載第1回の冒頭にも書いた電力問題に再び触れます。エネルギー業界の人たちが、ポスト原発について具体的に語り始めました。
 エネルギー・環境問題研究所代表の石井彰さんは、4月6日付のガスエネルギー新聞で、天然ガスの火力発電所は敷地さえあれば、最短数カ月で設置可能だと書いています。停電を論ずるより、電力需要の大きい夏に向けて設置作業に取りかかるべきです。
 今回は巨大発電所のもろさが表れました。今後は発電所はできるだけ小さく、分散して設置することが至上命令です。発電にはタービンを回す「湯沸かし器」があればいい。構造が複雑で、壊れたときの対処が極めて困難な原発を使う必要はない。日本人が求めているのは原子力でも放射能でもなく、電気なんです。
 石井さんは、「原発による深夜余剰電力を前提としたオール電化住宅や電気自動車のビジネスモデルが、一夜にして事実上消えた」として、こう書きます。
「政治レベルでは、日本でも欧米でも、天然ガスシフトというのが明確に示されていないが、世界のエネルギー専門家の間では、もはや議論の余地はなくなった。問題は、原発代替の天然ガスシフトが起きるか否かではなく、そのスピードと程度になってきている」
 原発を廃止する時代に向けて、希望の火がともり始めています。 (構成 本誌・堀井正明、岡野彩子)
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 ひろせ・たかし 1943年生まれ。作家。早大理工学部応用化学科卒。『二酸化炭素温暖化説の崩壊』(集英社新書)、『原子炉時限爆弾--大地震におびえる日本列島』(ダイヤモンド社)など著書多数。インターネット放送局のビデオニュース・ドットコム(http://www/videonews.com/)で広瀬さんのインタビューがアップされている

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