気象庁はきのう、夏の間にラニーニャ現象が発生する可能性は低くなり、秋になる可能性が出てきたと発表しました。なぜ遅れる予想に変わってきたのか考えてみました。

気象庁はきのう、夏の間にラニーニャ現象が発生する可能性は低くなり、秋になる可能性が出てきたと発表しました。なぜラニーニャ現象の発生が遅れる予想に変わったのかを考えてみました。
海面水温の周期変化は、有名なものが「エルニーニョ現象」と「ラニーニャ現象」です。
エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象です。逆に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれ、それぞれ4、5年おきに発生します。エルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すると、日本を含め世界中で異常な天候が起こると考えられています。 前回までの予想では、今年は夏のうちにラニーニャ現象が発生するのではないかと発表されていました。これまでの傾向から、日本で夏にラニーニャ現象が発生した年に、暑さが厳しかったデータがあることから、この夏の猛暑についてメディアでも話題となり、多くの方が口にするほど「ラニーニャ現象」が有名となったことを感じました。
実は、海面水温の周期変化はラニーニャ現象とエルニーニョ現象だけではありません。いくつかあるうちの一つが、北太平洋に見られる海面水温の変動、PDOです。

PDOとは?

北太平洋に見られる主要な海面水温の変動として、中央部付近と北米沿岸で逆の偏差が現れるパターンが知られており、太平洋十年規模振動(Pacific Decadal Oscillation:PDO)と呼ばれています。北米沿岸の海面水温が、1940年代から1970年代末までは負、その後1990年代までは正、2000年頃から2010年代前半にかけては負の値が多く、十年から数十年ごとに変化があることが分かります。2010年代後半から正の値が続いています。
PDOが正の場合は、太平洋熱帯域の中部から東部にかけて正の値が見られ、まるで、太平洋赤道域の中部から南米のペルー沖にかけての広い海域で、海面水温が平年に比べて高くなるエルニーニョ現象時の海面水温に似た分布となっています。
太平洋に見られる十年~数十年規模の変動については、大規模な海洋表層循環など様々な要素が関わっている可能性が示唆されていますが、メカニズムはまだ十分には解明されていません。
このように、海面水温には、十年~数十年規模の変動も確認されており、その重要性が近年注目されています。
もしかすると、今回ラニーニャ現象の発生が夏に発生する可能性が小さくなったといえる理由の1つに、PDOが高いということがあるかもしれません。