立春もすぎ、日差しもだいぶ春めいてきました。そろそろ山菜がおいしい季節です。山菜は採れる種類が各地で違っていて、地元の人しか知らないようなものがたくさんあり、道の駅などをのぞくのも春の楽しみの一つですね。一方、同じ山菜でもウドは日本各地で採れます。早いところでは、もう出回っているでしょうか。ところで、大きいけれど役に立たないことのたとえを「ウドの大木」といいますが、実はウドは“大木”になりません。なぜ大木にならないのでしょうか。その理由は…。
この記事の写真をすべて見る栽培ものは3月から旬。日光にあてない「軟化栽培」は江戸時代から
ウドは日本各地の山野に自生しています。食べることができるのは、土から出たばかりの新芽や、やや育った茎と若い芽の部分です。野菜というよりは山菜の仲間なので、新芽の部分を食べ、成長してしまったものは食べることができません。
ウドは基本的には山菜ですが、スーパーなどに並んでいるものの多くは栽培ものです。栽培ものは、もやしのように日光を完全に遮断してつくる「軟白ウド」と、根元に土をかぶせて、出荷前に日光にあてて芽の部分に色をつける「山ウド」があります。江戸時代にはすでに軟化栽培がはじまっていたといわれており、現在は、主に栃木や群馬などで栽培されています。
天然もののウドはそろそろ旬の時期です。日本の南のほうでは3月から旬がはじまり、関西や中部では4月、東北では5月、北海道では6月が旬となります。一方、栽培もののウドは3月が旬です。もうすでにスーパーの店頭に並んでいるのを見かけた方も多いのではないでしょうか。
「ウドの大木」というけれど、ウドは樹木ではなく、草です
ウドはウコギ科タラノキ属の多年草で、同じウコギ科タラノキ属のタラの木(タラの芽をつける木)とは違い、木ではなく草です。
春の新芽は山菜としておいしく食されますが、夏になるとぐんぐん成長し、大きなものだと2~3mもの高さになります。大きく成長したウドは茎が太くなりますが、軟らかすぎて木材には適さず、かといって食用にもなりません。このことから転じて、「図体ばかりでかくて役に立たないもの」のたとえを、「ウドの大木」というようになりました。
しかし、“大木”といわれるウドですが、実際は樹木ではなく、草です。樹木と違って冬には枯れてしまい、春にまた芽を出します。何年たっても樹木にはなりません。それなのに、なぜ大木といわれているのか、不思議ですね。
ウドに似ているので「ウドノキ」と命名された樹木
ウドとはまったく別な種類でウドノキという植物があります。こちらはウコギ科のウドと違ってオシロイバナ科の樹木です。小笠原諸島などに分布していて、高さは7~8mほどにもなりますが、樹木の中ではもっとも材質が軟らかく、腐りやすいといわれています。
ウドノキは葉の形がウコギ科のウドに似ていること、そして、ウドと同じように材質が軟らかくて役に立たないことから、「ウドノキ」と命名されたとか。ウドとはまったく関係がないのに、まるで“ウド”の仲間であるかのように扱われるなんて、植物の世界は奥が深いですね。
参考
『もっと からだにおいしい野菜の便利帳』高橋書店
旬の食材百科:ウド、山うど
レファレンス協同データベース:慣用句「ウドの大木」の由来を調べたい
旬のウドはシャキシャキとした歯ごたえが特徴です。独特の香りと苦味があり、好き嫌いが分かれるところですが、“春の味”として人気が高く、天ぷらや酢みそあえ、きんぴらなどで食されています。そろそろ山菜がおいしい季節。今年も“春の味”を楽しみたいですね。