すでに梅雨入りしている地域もあり、今年も雨の季節がやってきましたね。

今回は気象上の梅雨入りとは別にある、暦の上の「入梅」についてご紹介します。併せて、古来、季節の節目として大切にされてきた「二十四節気」「雑節」「五節句」の意味と由来を確認してみましょう。

知恵と経験から生まれた、天体現象に紐付く「雑節」

二十四節気、雑節、五節句など、暦の月以外にもさまざまな方法で季節の移り変わりを知り、生活に取り入れてきた日本。それぞれどのような成り立ちがあるのでしょうか。現在の日常生活では地味な存在ながら、古の人々の知恵と経験が反映された雑節についても知っておきたいですね。

◆二十四節気

現在も「立春」「春分」「夏至」「秋分」「冬至」など、季節を表す言葉として使われている二十四節気。中国の戦国時代から用いられていたといわれています。

1年間に太陽が移動する黄道(黄道座標)を15度ごとに24等分して決められており、太陽黄経0度が「春分」、15度進むごとに次の二十四節気に移り変わります。太陽は1日に1度進むとされているので、約15日ごとに季節が変化することになるのですね。日本では江戸時代の暦から使われていました。

二十四節気をさらに約5日ずつの3つに分けた期間を「七十二候」といいます。二十四節気は古代中国の名称を踏襲していますが、七十二候は日本の気候風土に合わせて変更されたものが使われています。今年は6月16日より七十二候の「梅子黄(うめのみきばむ)」の時期になります。梅雨という言葉の由来は、この「梅子黄」といわれています。

◆雑節

中国から伝わった二十四節気を補うかたちで、主に農作業に基く日本独自の生活のなかで設けられました。主な雑節には、「節分」「土用」「彼岸」「八十八夜」「入梅」「半夏生」「二百十日」などがあります。

太陽黄経が決まっているのは、春土用(27度)、夏土用(117度)、秋土用(207度)、冬土用(297度)、入梅(80度)、半夏生(100度)。それ以外の雑節は立春に紐付いており、節分は立春の前日、田植えや茶摘みの時期を知らせる八十八夜は立春から数えて88日目、台風などの自然災害が多いとされる二百十日は立春から210日目の日になります。

1年に4回ある土用は季節の変わり目にあたります。健康に注意が必要な時期とされ、さまざまな禁忌や風習がありました。入梅の時期を知ることが重要だったのは、田植えには水が必要なため。梅雨明けを控えた半夏生は、田植えを終える目安の日とされていました。

二十四節気と雑節は国立天文台の暦要項に記載があり、天文現象に紐付いた暦日とされています。

◆五節句

季節の変わり目に無病息災を願う伝統的な行事。古代中国の陰陽五行説に由来します。奈良時代に日本に伝わり、宮中行事として執り行われていたといわれています。

「人日(じんじつ)の節句」(1月7日)は、七草の日としてお馴染みですね。「上巳(じょうし)の節句(3月3日)」は桃の節句、お雛祭りです。「端午(たんご)の節句」(5月5日)はこどもの日として祝日になっていますね。「七夕(しちせき)の節句」(7月7日)、「重陽(ちょうよう)の節句」(9月9日)を合わせて五節句とされ、江戸時代には祝日と定められ重視されていました。

雑節での「入梅」は、太陽黄経が80度になる日

今日6月10日は 「太陽黄経が80度となる日」 。暦の上での「入梅」の日です。古くは二十四節気の「芒種(ぼうしゅ)」に入ってから最初の壬(みずのえ)の日とされていましたが、江戸時代の「天保暦」以来、太陽の運行に基いて入梅の日が定められました。

2020年は6月5日に芒種に入り、この日の太陽黄経は75度。5日後の今日は太陽が軌道上を5度進んで80度となり、雑節での入梅を迎えました。気象上の梅雨入りは、その年の気象状況や地域によって異なりますが、6月上~中旬は本州各地の梅雨入りの時期でもあります。さて、今年はいかに?

古代中国より二十四節気が日本に伝わり、時を経て日本の気候風土や農作業に合わせて成り立った雑節「入梅」。梅雨は昔も今も、日本に暮らす私たちの生活に影響を与える気象現象であり、梅雨入りの時期が大きな関心事であることに変わりないようですね。

参考文献

岡田芳朗・松井吉昭 『年中行事読本』 創元社

参考サイト

国立天文台