街角のフローリストで黄色いミモザの花を見かけるようになりました。いつの間にか今年も3月。三寒四温で気温が不安定な時期ですが、ぐっと春めいてきましたね。本日3日は、上巳の節句・雛祭り。そして8日は国際女性デー。春の始めに咲く黄色い花に託して、改めて見つめ直しておきたいことを綴りましょう。

3月3日は上巳の節句。女の子の健やかな成長を祝います

いつの間にか梅の花もほころび、三月・弥生になりました。春の訪れを感じさせる花が次々と咲き、秋に枯れて散った緑が鮮やかによみがえりはじめる季節です。
本日3日は、雛祭り。古来、五節句の一つ「上巳の節句」とも呼ばれ、源氏物語にもその日の様子が描かれています。三月最初の巳の日に陰陽師が祓えを行い、穢れを移した人形(ひとがた)を川や海に流す光景は、流し雛の風習の源流ともいえるもの。このほかにも、源氏と紫の上が人形で遊ぶ「ひいなあそび」なども綴られ、これら雅な時代の風習が、江戸、明治、現代へも続く、華やかな雛祭りとして発展していったことが分かります。
今宵は雛飾りを愛でながら、桃のお酒や白酒、ちらし寿司、蛤のお吸い物などが並ぶ雛の膳を囲んだお宅も多いことでしょう。昔も今も願う心は一つ。女の子の健やかな成長と幸せを祈る、これからも大切にしたい行事です。

3月8日は国際女性デー。イタリアでは男性が身近な女性にミモザの花を贈ります

3月にはもう一つ8日に、女性のための行事「国際女性デー」があります。制定のきっかけになったのは、1904(明治37)年3月8日のこと。ニューヨークで女性労働者が婦人参政権の要求をかかげ、デモを起こした歴史的一幕です。その後、1910(明治43)年、コペンハーゲンで開催された国際社会主義会議において、3月8日が「国際女性デー」と正式に定められました。
イタリアでは、この3月8日は別名「ミモザの日」。「FESTA DELLA DONNA(女性の日)」とも称され、男性たちが感謝を込めて、母親や妻など身近な女性にミモザの花束を贈ります。春を告げる黄色い花は街中にあふれ、女性たちは胸や髪にミモザの花を飾り、家事や育児から開放されて、食事に行ったりお喋りしたり、しばし自由を謳歌するのです。
残念ながら日本ではまだあまり認識されていない「国際婦人デー」ですが、少しずつ広がり、各地でイベントが開かれ、レストランなどでも特別メニューが用意されているようです。例えば、銀座三越では全館がミモザカラーに彩られ、3月8日(金)・9日(土)は様々な催しが。カフェでの期間限定メニューやネイル体験ブース、トークイベントなども実施されるので、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょう。

女性の生き方とは?この春、改めて読み返したい「海からの贈物」

妻として、母として、職業人として、生活者として、現代に生きる女性は実に様々な役割を担っています。忙しさに忙殺され、周囲に翻弄され、様々な壁に阻まれぶつかるたびに頭をよぎる、「いかに生きるべきか」という問い。そんな永遠の課題ともいえる自問自答に応えてくれる世界的名著が、「海からの贈物」です。
著者は、アン・モロウ・リンドバーグ(1906-2001)。あの有名な飛行家リンドバーグの夫人で、自らもいち早く飛行機を操縦した女性です。
国際的な活躍の陰に、わが子の誘拐事件や夫の裏切りなどもあった波乱に満ちた人生の半ばすぎ、島の浜辺で一人、彼女が自分自身と対話し綴ったのがこの本です。
ほら貝、つめた貝、日の出貝、牡蠣、たこぶね、幾つかの貝…と、目次に連なるのは、海辺で巡り合った貝殻たち。これらに人生の様々な段階を重ね、女性の幸せについて語りかけてくれる構成が素晴らしく、ページをめくるたび出会う一言ひとことに、迷いや不安がじんわりと癒されていくようです。
仕事、結婚、家族、孤独、人間関係、子育て、自由、生きがい、精神的充足…参政権も男女平等も得たとみえる現代においても、絶えず起こる人生の局面や問いに対し、自らを満たすためには、どうしたらいいのか。ふと立ち止まり自らの生き方を考えたとき、アンの思索を共にたどることが、きっと大いなる救済と導きになることでしょう。

この春、人生の転機を迎える方も多いと思います。心を明るく照らしてくれるミモザの花を部屋に飾り、女性だけでなく人の生き方や幸せについて、今一度思いを馳せてみてはいかがでしょう。