梅のつぼみが早くもふくらみそうな、暖かな日々が太平洋側で続いていますが、暦のうえでは寒中。二十四節気「小寒」の次候・七十二候「水泉動(しみず あたたかをふくむ)」となりました。本日11日は、成人の日でもあり、お正月にお供えした鏡を下げて食す「鏡開き」。寒に入って9日目の「寒九」もまもなく迎えます。

寒に入って9日目「寒九(かんく)」。寒九の水、寒九の雨とは?

6日に迎えた「小寒」から寒中に入り、今週はようやく寒さが本格的になっていこうとしています。松の内も過ぎた本日、七十二候も第68候「水泉動(しみず あたたかをふくむ)」となりました。「水泉」とは、湧きいでる泉のこと。例年寒さ厳しい小寒ですが、季節はほんの少しだけ春に向かっていて、地中では凍った泉がとけて流れ動き始める時節といわれています。
寒に入って9日目、今年でいうと1月14日に迎えるのが「寒九(かんく)」。冬の季語でもありますが、この日に汲んだ水は、薬を飲むのによしとされ、「寒九の水」と呼びます。
また、この日に降る雨は吉兆とされる「寒九の雨」。寒空から降りそぼる冷たい雨は、やがて来る秋の実りの豊饒の兆し。とくに青森・八戸地方では、真冬の雨を「かんぐの雨」と呼び、暖かい春の到来と豊作を予想するものとして喜ぶ風習があるそうです。雪深い北国の冬の雨は、実りの季節を予感させる明るい希望のしるしなのかもしれませんね。
さて、今年の「寒九」、期待の雨は降るでしょうか?

寒中の気象に関することわざ「冬すずめが群がり鳴くときは雪」

「寒九の雨」のほかにも、1月の寒中に昔から伝わる気象に関することわざがあります。
たとえば、「冬すずめが群がり鳴くときは雪」。
寒さに全身の羽毛をふくらませた冬のすずめを「ふくら雀」と言いますが、真ん丸にふくらんだ可愛いすずめたちが、大勢で群がってチュンチュンと鳴いている時は雪が降りやすいといわれています。
雪が降るのは、いずれの地方も低気圧が通るとき。その低気圧前線のはざかい(南寄りの風が吹き寒気がゆるんだとき)に、すずめたちは盛んに活動し、雪が降る前に餌を求めて群がり鳴くようです。
このほか「寒に霜多き年は夏干ばつあり」「寒中の雷は豊作の兆し」「寒に雨なければ夏日照り」など、さまざまな地域に残っている言い伝えも面白いものですね。
またお正月の鏡餅にも、
「餅に赤カビ生えれば日照り、青カビ生えれば雨」
「鏡餅の割れ多ければ豊作」といったことわざが。
最近はパックされた鏡餅も多いですから、なかなか「カビ」も「割れ」も見られなくなりましたが、神が宿る神聖なものとされた鏡餅で、昔は豊作の吉凶をうらなったのでしょう。

本日1月11日は鏡開き。お供えの鏡餅を下げてお雑煮やお汁粉に

さて、本日1月11日は「鏡開きの日」。
鏡開きの日には家族円満や無病息災などを祈って、神様に供えた鏡餅をお下がりとして食します。
固いものを食べて歯を丈夫にする「歯固め」の意味合いもあり、長寿を願うことにもなるそうですので、大切にしたい年中行事ですね。
この行事はもともと松の内が終わる小正月(1月15日)後の1月20日に行われていたのですが、徳川家光が他界した月命日の20日を忌日として避け、以後1月11日とされたのだそう。武家の風習がベースになっていることから、刃物で切るのは(切腹をイメージさせることから)さけ、飾っておいて硬くなったお餅を木槌などで割り、手で砕きます。
さらに、神様と縁を切らないように「割る」や「砕く」とは言わず、縁起のよい言葉「開く」に言い換えて表現するのも、言霊の幸ふ国・日本ならではですね。
さて、開いた鏡餅、どんなふうに食べましょうか。
そのまま焼いてもよし。お雑煮にしてもよし。小豆をたいて、ぜんざいやお汁粉にしてもよし。からりと揚げて、おかきにしてもよし。
「今年一年、家族仲良く、健やかに過ごせますように」
そんな願いを込めて、大切な人と仲良く食卓を囲み、笑顔でいただきたいものですね。

※参照&出典
天気予知ことわざ辞典(東京堂出版)、現代こよみ読み解き事典(柏書房)、雨の名前(小学館)