ササラ電車にササラを取りつけるには熟練のワザが必要になりますが、運転そのものにも難しい技術が必要になります。まず、早朝の雪の状態を確認します。ベタ雪の場合は“掃き出し”に時間がかかるので、早めに出動します。次に、ササラを動かすときは、掃き飛ばした雪が自動車や電停にいる人にかからないように、回転数を調整して進みます。また、圧雪や凍結でレールの溝が埋まってしまった場合には、車輪で慎重に押し割りながら進まなければなりません。ササラがすり減ってきたらブラシ部分の高さを少し下げたり、積雪の深さによって上下させたりもします。


雪が降っても降らなくても、毎朝4時に出動して全線を往復し、除雪と点検を繰り返す札幌のササラ電車。夜中でも雪が降ると出動し、溝が車に踏み固められる前にササラで掃き出すササラ電車。おかげで札幌では、雪が多い真冬の日でも市電が運休になることはありません。そしてそれが、市電関係者の誇りとなっています。
〈参考:「札幌市の路面電車の走行環境について」、平成23年、札幌市営企業調査審議会 第2 回交通部会〉
JRのラッセル車は豪快に雪をかき分ける。
JRのラッセル車は豪快に雪をかき分ける。

函館のササラ電車は、明治時代の木造の客車を改造した “レトロ” タイプ。

札幌ではササラ電車が現役で活躍していますが、函館では1990年代中頃から、“ササラトラック”で除雪を行っています。ササラトラックは、その名の通り、トラックの前方に回転するササラがついているもので、軌道上にいる電車を追い越して除雪をすることができるので、電車が通る前に“先手”を打つことができます。北海道の中では比較的雪が少ない函館では、現在はこのササラトラックによる除雪が主力ですが、雪が多い日にはやはりササラ電車が出動します。
函館のササラ電車はもともとは、1910年(明治43年)に造られた大変古いタイプの木造の客車で、1937年(昭和12年)にササラ電車に改造されました。古い車両に修理を重ね、平成の今に至ります。レトロな珍しいタイプですが、最近は大雪の日くらいにしかお目にかかることができません。そのため、26日の試運転にはその“勇姿”を見ようと、道外からも鉄道(?)ファンが見学に来ていました。
これから冬本番を迎えます。北海道の冬の風物詩、「ササラ電車」。雪の多い札幌では、これから毎日、市民や観光客のためにササラ電車が活躍します。雪の少ない函館にもドカ雪が降ったら、その凛々しい姿を見ることができるでしょう。冬に観光などで両市を訪れたとき、この、全国的にも珍しいササラ電車に出会えるかもしれませんね。

雪が降るまで車庫で待機する札幌のササラ電車。
雪が降るまで車庫で待機する札幌のササラ電車。