「春掘り長イモ」は熟成された味わい。
「春掘り長イモ」は熟成された味わい。

 長イモの旬が4月~5月なのをご存じですか。一般的に長イモは晩秋が旬というイメージがありますが、実は5月のこの時期は、「春掘り長イモ」の旬なのです。では、春の長イモは秋の長イモと何が違うのでしょう。それは、春の長イモは越冬させているので、うまみがギュッとつまっているのです。

■「春掘り長イモ」の旬は4月~5月。冬を越すので、おいしさが熟成 !!

 長イモの収穫は年2回です。5月に種イモを植えて、その年の11月から12月にかけて収穫されるのが「秋掘り」で、秋掘りは長イモ全体の6割ほどです。残りの4割が、翌年の4月ころから収穫される「春掘り」です。

 長イモの生産は、ほとんどが北海道と青森県で占められ、この2県で全体の約90%。次いで、長野県、岩手県などが続きます。北海道では土が凍るので長イモの越冬ができず秋掘りだけでしたが、最近では凍らない工夫がされるようになり、春掘りも可能となりました。

「秋掘り」の長イモは、ジャガイモでいうところの「新ジャガ」で、皮が薄く、みずみずしい食感です。ひげ根を火であぶれば皮ごと食べることができます。それに対し、「春掘り」は越冬させて熟成させるので、うまみが凝縮され、コクがあり、味わいは濃厚です。

■消化を助けるアミラーゼ、滋養強壮の「粘液糖タンパク質の混合物」など、長イモは栄養価が高い !!

 長イモは、イモ類の中では唯一、生で食べることができます。栄養価が高く、亜鉛やカリウム、鉄などのミネラルをはじめ、ビタミンB群とC、タンパク質などを豊富に含みます。

 なかでも、多く含まれているのが消化酵素のアミラーゼ。アミラーゼは消化・吸収の促進にとても役立ちます。アミラーゼ以外にも、ジアスターゼ、ウレアーゼ、オキシターゼなど、多くの消化酵素が含まれています。これらの消化酵素は加熱すると激減してしまうので、とろろや短冊など生で食べることをおススメします。

 さらに、長イモのネバネバ成分には「粘液糖タンパク質の混合物」による水溶性食物繊維が含まれています。これらの成分には細胞を活性化させる働きがあるので、新陳代謝が促され、滋養強壮、疲労回復、便秘の改善、老化予防、肌荒れなどに役立ちます。

■切り口が赤黒くなるのはポリフェノールのしわざ、切ったら酢水につけて防ぐ

 長イモの切り口は、放っておくと赤黒く変色してしまいます。これは、長イモに含まれるポリフェノールが酸化して変色するといわれています。ポリフェノールにはドーパミンが含まれています。ドーパミンは呼吸作用の代謝の産物で、先端など細胞分裂が活発な部分に多く含まれています。特に、細胞分裂が盛んな夏の長イモに多く含まれいるので、収穫の時期がドーパミンの作用がしずまる秋の終わりとなっています。

 ドーパミンは、アスリートのドーピング検査などでよく耳にしますが、長イモのドーパミンは体内ですぐに分解されるので、薬物としての効果はないそうです。
赤黒くなるのを防ぐには、切ったらすぐ切り口に酢水をつけること。これにより酸化を抑え、白いままで保存することができます。

■乾燥しないように新聞紙にくるんで保存。冷凍保存も可能

 保存するときは、乾燥しないように新聞紙にくるんで、風通しのよい冷暗所に置くと、約1ヵ月は保存できます。おがくずに埋められているものは、そのまま保存します。

 カットされたものを保存する場合は、ラップで密封して空気に触れないようにして冷蔵庫に入れれば、10日ほどもちます。

 皮をむいて使いやすい大きさに切れば、冷凍保存も可能です。使うときは自然解凍し、とろろなどに利用します。

 春掘りの長イモの旬は4月~5月、秋掘りの旬は11月~12月です。秋掘りの長イモと春堀りの長イモの切り替え時期は5月なので、うまみが凝縮した春掘りの長イモを食べることができるのは、今のうちです。とろろ、短冊、お好み焼き…。栄養価の高い長イモを食べると、元気が出るような気がします。5月の今、秋掘り用の長イモの植えつけが始まります。次の旬は11月。新ジャガならず、「新長イモ」を楽しみにしながら、春掘りの長イモを堪能したいものです。

●2018年5月29日記事の一部を修正をしました。