今年もいよいよお花見シーズンがやってきました。南から北へ、桜前線は日々北上し、ほんのり薄紅色で列島が染まるさまは圧巻ですね。そんな心浮き立つ桜の季節に、飲んで愉しむお花見はいかがでしょうか。いにしえより桜花を愛で花見に興じるのも、小さな器の中で繊細に楽しむのも、私たち日本人ならでは。花をお湯に浮かべて、熱燗に浮かべて、訪れた春を、人生の春を、祝いましょう。

春のおもてなしばかりでなく、結納や、結婚式でも飲まれる「さくら湯」

お湯飲みに、桜の花漬けを一輪。熱湯をそそぐと、ふうわりふわりと花弁が開き、ほのかな香りが立ちのぼります。
ゆらりゆらりと湯の中で花びらがゆらめくさまも、目と心を躍らせ、春の訪れを五感で愉しむことができる「さくら湯」。「桜茶」とも呼ばれ、結納や結婚式、卒業式など、おめでたい席で飲まれた方も多いのではないでしょうか。
その場だけ取り繕うという意味の「お茶を濁す」ことを嫌う一方で、「花開く」様子が縁起がいいと好まれたことから、お茶の代わりに桜湯を出すようになったとのこと。
人生の春を迎えた花嫁と花婿を囲む晴れの日に、なんともふさわしく、華やかなおもてなしですね。

さくら湯に使われる桜の品種は主に「関山」。美しい八重桜です

さて、この「さくら湯」に用いられるのは、桜花を塩と梅酢で漬けた「桜の花漬け」。その材料は、ソメイヨシノではなく、花びらの多い八重桜です。なかでも好まれる品種が、ふんわりとこぼれるように咲く「関山(かんざん)」という名の八重桜。
花がまだ3~5分咲きの頃に摘み取り、ガクを一つ一つ取り除く繊細な手仕事を経て、器のなかで美しく花開く、桜の花漬けができるのです。

北海道にある八重桜の名所「松前」から届く桜の便り

八重桜の名所として名高い、北海道唯一の城下町・松前。南殿(なでん)、雨宿(あまやどり)、糸括(いとくくり)、普賢象(ふげんぞう)……八重のサトザクラを中心に植えられた松前公園には、この地で改良され生み出された100以上の品種も含め、約1万本250種の桜花が毎年4月下旬から5月下旬まで次々と開花します。
この桜の里で出会ったさくら湯は、「ゆざくら」とパッケージに記された名も優美。松前漬けの名店「蝦夷松前 龍野屋」で作られており、きちんと手間暇かけ発酵されているからこそ、塩出しの必要はありません。熱湯をそそぐだけで、絢爛と咲き誇る花びらひとひらひとひらを愛でるひとときは、ほっこりと夢ここちです。

雲のごとく咲き、雪のごとく散りゆく日本の桜。薄紅色の花を器の中で開かせて、はかなくも可憐な風情を愉しむ「さくら湯」。
花見のお供にお湯に一輪、熱燗に一輪、あるいはお抹茶やシャンパンに一輪……桜の花漬けを浮かべるだけで、いつでもどこでも、春の宴の幕があがります。