堤防やダムなどの治水技術が進歩した現代社会。しかし、こうした対策をもってしても防げない「大きな水害」は、やはり発生してしまいます。
とくに注意したいのはフラッシュフラッド(瞬発性洪水)と呼ばれる、予期しづらい洪水です。川幅が狭く、水位が急激に上がってしまう中小の河川の近くで、こうした洪水が起こりやすいといわれています。
あなたは、いざという時に慌てず行動できる自信はありますか?
街中で豪雨や冠水にあった時、どんなことに注意すべきかまとめてみました。

水位が急激に上がってしまう中小の河川近くで起きやすいフラッシュフラッド(瞬発性洪水)
水位が急激に上がってしまう中小の河川近くで起きやすいフラッシュフラッド(瞬発性洪水)

道路が冠水、地下で浸水……こんな行動を心がけよう

「駅前の道路が冠水している!」。SNSで共有される、こんなコメント付きの写真を目にしたことがある人も多いのでは。でも、実際に自分がそこに居合わせたら、どうしたらいいか考えたことはありますか?
そこで、気をつけたいポイントをまとめてみました。
●ポイント1)
ひざの高さ、またはそれ以上の深さまで冠水した場合、歩くのは厳禁です。普段は何でもない段差や側溝に足をとられ、ケガをすることがあります。とくに気をつけたいのは「マンホールのふた」。大量の雨水が下水管に流れ込むと下水管の中の圧力が高まり、その圧力でマンホールのふたが浮き上がり、外れてしまうことも! 冠水した水は濁っているため、マンホールの位置を目で確認するのは難しくなります。恐ろしい「落とし穴」にはまらないためにも、冠水した道路を歩くのは絶対やめましょう。
●ポイント2)
冠水が浅く、「やむを得ず歩く」場合は、想像できないさまざまなものが「流れてくる」可能性に注意しましょう。とがったものであれば衣服を破り、皮膚を貫通しかねませんし、硬いものであれば大ケガにいたることも! さらに、水中は汚物による汚染や細菌の感染源にもなるため、水が引くまでは行動を控えるのがベストです。
●ポイント3)
地下鉄や地下街、地下駐車場、ビルなどの地下階……。止水や排水の対策がされているこれらの施設も、豪雨になると浸水することがあります。とくに怖いのは地下室。浸水すると水圧でドアが開かなくなり、閉じ込められる恐れがあります。
地下にいると天候の状況が把握しづらく、行動が遅くなりがち。インターネットなどで最新の状況を知り、避難が必要だと思ったら即座に行動しましょう。地下の店舗などに勤務している場合は、緊急時の対応を話し合っておくといいですね。

車が浸水、水没! そんなときはどう行動すればいい?

車に乗っていても安全ではありません。水が深くなれば車が浮き上がり、流されることもあり得ます。とくに注意したいのは、道路が立体に交差している「アンダーパス」などの「くぼんだ場所」や、河川の近くの道路や橋などの「低い場所」です。
激しい豪雨が予想される時は運転そのものを控えるのが一番ですが、やむを得ず運転する場合は、常にラジオなどで最新情報を入手するようにしましょう。
●ポイント1)
冠水している道路には、絶対に進入しないこと。誤って進入し、水没して立ち往生してしまったら、すぐに車から脱出し、ロードサービスなどに救助を依頼しましょう。
●ポイント2)
車が深く水に浸かってしまった場合、水圧でドアが開かず脱出できない恐れがあります。水の影響で電気系統が故障すれば、窓を開けることもできませんので、窓を割って緊急脱出できる窓割りハンマーなどを車載しておきましょう。

ハザードマップを活用して、水に弱い場所を把握しておこう!

国土交通省の「ハザードマップポータルサイト※」を閲覧したことはありますか?
ぜひ一度アクセスして、自分が住んでいる町や通勤・通学先の町のハザードマップを見ておきましょう。
「高台だから大丈夫」と思っている場所であっても、「床上浸水の可能性あり」という意外な情報が記載されていることもあります。
さらに、都市部で気をつけたいのは、かつて河川だった場所。緑道や暗渠(あんきょ)として整備されていても、土地そのものは低いままというケースが多く、いざ豪雨となれば浸水する可能性があります。
ハザードマップを眺めているうちに「そういえば、あの交差点のあたりは谷底のような地形になっているな」などと、思い出すことも多いはず。「豪雨の時はどんなルートで帰宅すべきか」「この道路は避けて走ったほうがいい」といった想定を普段からしておけば、緊急時も慌てず行動できるはずです。
かつては夏に多かった集中豪雨も、近年は季節を問わず発生するようになっています。普段の生活からちょっとだけ意識して、豪雨への心構えをしておきたいですね。
※ 国土交通省ハザードマップ  http://disaportal.gsi.go.jp/viewer/index.html?code=1
※参考 青木 孝著「いのちを守る気象学」(岩波書店)