『三寒四温(さんかんしおん)』というと、暖かさを迎える頃を連想してしまいがちですが、実は冬の季語です。
この言葉の意味と使い方、そして関連する季語でもある季節の花『水仙』をご紹介します。

改めて、三寒四温(さんかんしおん)とは何ぞや?

季語を含む日本語には、不思議な言葉がたくさんあります。『三寒四温』もその一つではないでしょうか?
「三日寒く、四日温かい』と言うからには、春の訪れを表わす言葉では? と思いがちですが、これは冬、それも「厳寒の頃の…」という前提条件がありますので、立春(りっしゅん)以降=春になりますと、この表現は正しいとは言えなくなります。
「立春過ぎても厳寒の日ありますよ…」という声が聞こえてきそうです。事実、私も知らずに三月の上旬など春分前の似たような気候が続くころに使っていたことがあります。
ですが、やはりここは一つ、本当の意味を知って使ってほしいな…と思います。
正しい意味…厳寒の頃の冬の大陸性気候の特徴。三日間厳しい寒さが続いた後は、四日間やや寒さがゆるむという現象が繰り返される。*1
*1 俳句歳時記 冬 より抜粋

三寒四温の頃の花だより…水仙

三寒四温の頃に咲く花というと何を思い浮かべるでしょうか?
野庭や公園などによく見かける花に水仙があります。花屋の店先にも白や黄色の姿をみますね。その特徴は、「色より香り」がその存在を知らせてくれるということです。花自体はそう大きくない地味な花ですが、何とも言えない芳香に、目よりも先に鼻が見つけます。
水仙には面白いエピソードがあります。地中海沿岸が原産地のこの花は、学名を「ナルシサス」と言い、ギリシャ神話に深いかかわりがあるのです。美少年「ナルシサス」は、泉に映る自分の姿に見惚れてしまい、毎日眺めているうちに一輪の花に変わってしまった…という神話です。そして、ナルシストと言う言葉の語源ともなりました。水面に映る風光はどれも絵画のような美しさを魅せますから、ナルシサスは自分の姿を何倍にも美しく感じていたことでしょう。

水仙の群生はやはり、水の近く…

そんな語源のある水仙は、日本でも伊豆の瓜木崎や福井の越前海岸など、海辺に群生しています。それらの花たちも海に映る姿にうっとりしているのでしょうか?
また、別名を「雪中花(せっちゅうか)」と言います。まだ雪の残る寒さの中に春の訪れを匂わせてくれる…そんな可憐な花です。
その美しさを俳人たちもよく詠みました。
例えば…『其(そ)のにほひ桃より白し水仙花』 と、松尾芭蕉が愛でています。水仙の清廉(せいれん)な匂いと姿を桃の花と比べているところが面白いな、と思いませんか?
寒さ厳しき折、とは言え春はもうすぐそこまで来ています。水仙を眺めに早春の海辺に出かけてみるのも一興ですね。
お勧めの群生地
・福井県 越前岬
・千葉県 房総半島
・静岡県 伊豆半島
・兵庫県 淡路島 など…