ここ数年、「薪ストーブ」がひそかなブームです。特に最近は北欧風のオシャレなタイプや、ピザが焼けるオーブンつきのタイプが話題を呼んでいます。カタログを見ると、吹き抜けのリビングに薪ストーブがあり、炎のゆらぎと遠赤外線で体の芯から癒される…。薪ストーブを使いたくて、都会から郊外に引っ越した人もいるとか。
でも、この薪ストーブ、設置するには意外とハードルが高い面もあります。そこで、薪ストーブのステキな魅力とともに、設置する前に知っておきたいことをご紹介します。

炎のゆらぎと遠赤外線で、心も体もほっこり。冬の静寂を楽しもう。

薪ストーブの一番の魅力は、ズバリ、炎です。手が冷たいときは炎に向かって手をかざし、冷えた手を直接温めることができます。エアコンの暖房だと、どこに手を向けたらいいのか…。また、遠赤外線も発するので、そのぬくもりは体の芯まで温めます。
薪ストーブは音が静かなのも魅力です。温風式の暖房は送風機の音が常にゴーッとしていて、これはけっこうな音量ですが、薪ストーブは電気を使わないので、とても静かです。寒い夜、しんとした静寂の中、聞こえる音といえば、時おり薪がパチパチとはぜる音。ストーブの上のヤカンがシュンシュン鳴り、炎の前ではワンコが丸くなって寝ている…。ゆらめく炎、冬ならではの静けさ…、体の芯まで癒されますね。

ピザも焼けるオーブンつきが好評

最近の薪ストーブは、オーブン室があるタイプが人気です。オーブン室は高さ15~30cmくらいの窯状のスペースで、ピザやグラタンなどを簡単に焼くことができます。
本格的なものになると温度計がついていて、普通の調理用のオーブンと同じように温度を調節して、お菓子作りやグリル料理を楽しむことができます。電気のオーブンと違って直火のオーブンで焼くと、熱の伝わり方が違うのでしょうか、やはりおいしさが違います。

まずは煙突の取りつけ、設置後は薪の購入と保管、煙突掃除…

魅力的な薪ストーブ、さて、実際に取りつけようとすると、クリアしなければならない条件がいくつかあります。
まずは煙突の取りつけ。これは意外と高額で、薪ストーブ本体の2倍、あるいはそれ以上になることも。また、煙突は普通のタイプと二重になっているタイプがあり、普通のタイプだと内側にススがたまるので、毎年の煙突掃除が欠かせません。二重になっているタイプはススがつかないので、高額ですが一生ものです。
次に、薪の購入です。廃材をもらってくるルートがあれば、燃料費はほとんどかかりません。もらってきた木材を、チェーンソーやマサカリを駆使してちょうどいい大きさに切り分ければ、薪の出来上がり。一方、薪の状態で購入するとなると、一冬分はだいたい15万円前後かかります。また、薪をある程度ストックできるスペースも必要です。

煙突からの煙や臭いで近所迷惑になることも

横浜に住む、あるご夫婦の話です。共稼ぎで子どもなし、横浜に一軒家を購入し、3年前に念願の薪ストーブを設置しました。吹き抜けのリビング、北欧風のオシャレな薪ストーブ、冬の生活を楽しむはずでしたが…。
この一軒家にはマンションが隣接していて、煙突がちょうどお隣のマンションの2階の高さと同じ位置にあり、マンションの住人から臭いと煙に対する苦情がきました。また、薪ストーブは部屋が暖まるまでにかなりの時間がかかるのですが、せっかく薪ストーブをつけても、冬の朝は部屋が暖まりきる前に、2人はバタバタと出勤する毎日。そんなこんなで、この夫婦はあまり薪ストーブを使うことなく、今年になってとうとう薪ストーブを取り外したそうです。
薪ストーブには煙突からの煙がつきものです。都会のように住宅が密集したところでは、薪ストーブはあまり向いていないかもしれません。また、部屋が暖まるまでにはだいたい2~3時間かかるので、忙しい生活をしている家族にも向いていないといえるでしょう。
ブームの薪ストーブ、体の芯が温まったり、調理ができたりと、とても魅力的ですね。とはいえ、簡単に取りつけられるものでもありません。これから薪ストーブの購入を考えている方は、まずは専門業者に、部屋の間取り、周りの住環境、家族構成、ライフスタイル、薪の保管場所などを細かく相談することをおすすめします。
<参考サイト:「誰も言わなかった薪ストーブの話」 (http://www.woodstove.jp/)>