「ブラック企業」という言葉の急速な広がりとは裏腹に専門家が異口同音に指摘するのは、深刻な事態を引き起こす「真性ブラック企業」がある一方で、「何をもってブラック企業と判断するか」は人によって異なる、ということだ。とりわけ、学生が抱く「ブラック企業」像は「残業が多い」「賃金が低い」「ワンマン社長がいる」など、一面的で画一的。

 就活生と採用担当者を対象に「月にどれくらい残業したらブラック企業を疑うか」を調査したところ、学生は1カ月の残業が20時間未満でも6.1%がブラックを疑うという結果が出た。もっとも「ブラック認定」が多かったのは、40~60時間未満。これでは、日本中の会社がブラック企業だ。

 前出の今野さんによれば「真性ブラック企業」とは、「社員を育てる気がなく、労働者を使いつぶす企業」。適正な賃金を得られず、キャリアを積むこともかなわず、心身共に消耗し、重篤なダメージを負いかねない。

「企業側に明らかな悪意があれば、ブラックでしょう」

 ブラック企業アナリストの新田龍さんの定義は、「企業規模を問わず、明らかに違法性があり、それを改める気がない企業」。違法行為を強要する。明らかなパワハラやセクハラがある。度を超した長時間労働やサービス残業の強要も違法行為にあたる。

「ですが、新入社員から『自分の会社はブラック企業では?』と相談を受けたなかで、私がブラックと認識したケースはごく少数。ほとんどは、単なるミスマッチなんです」(新田さん)

AERA 2014年6月23日号より抜粋