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第120回 大好きな『ロッキー・ホラー・ショー』を舞台で観たい!

文・小熊一実

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 わたしと映画『ロッキー・ホラー・ショー』の出会いは、わたしが大学生になったころだと思う。英国公開が1975年、日本公開が1976年というから、公開してから、わりと早くに観たことになる。
 今でも覚えているが、大学生になったばかりで、時間があれば、映画を観ていた時期だ。当時、観た映画のタイトルやスタッフ、出演者の名、そして、かんたんな感想などをノートに記録していたので、そのノートを見れば、いつ観たのか正確にわかるのだが、残念ながら実家に置いてあるので、今はわからない。観た映画の本数を数えたことがあるが、テレビで観た映画もまぜれば、年間500本くらい観ていた。これでは勉強を一生懸命していたとは思えない。

 『ロッキー・ホラー・ショー』を観た場所は、池袋の文芸坐。当時わたしは、1年くらいの間に住まいを大塚、新大塚、茗荷谷と移していたので、一番近い大きな街の池袋にはよく映画を観に行った。

 このときは『マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者たちによって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺』という長いタイトルの映画を観るのが目的だった。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの演出家ピーター・ブルックが監督だというので、よくわからないが面白そうだと思って観に行ったのだ。

 タイトルを読めばわかると思うが、SMのサディズムという言葉の元になった人物、マルキ・ド・サドが収監された精神病院で、治療の一環として、そこの精神病患者たちを役者にして、フランス革命期のマラー暗殺事件を舞台化するというストーリーの映画だ。

 当時、澁澤龍彦にかぶれていたわたしは、彼が紹介していたサド侯爵という人物に興味があり、また、演劇にも参加していたので、この映画を観に行ったわけだ。

 革命家のマラーが入浴の世話をやいてくれているシャルロット・コルデーにより刺殺されるのという芝居なのだが、コルデーを演じる女性が、すぐに眠ってしまう精神病の患者なので、演技中に寝てしまったりする様子を俳優が演じているのだ。つまり、役者は精神病の患者の役であり、その精神病患者が芝居を演じているという演技をするわけだ。

 二重構造になっていて面白いなあ、などと思っているうちに、2本立てだったもう1本の映画『ロッキー・ホラー・ショー』はじまった。
 わたしにとって、この映画についての前情報はまったくなく、期待もなしに始まったのだが、スクリーンいっぱいに広がる真っ赤な唇がテーマソングを歌いながら動くのをみて、たちまちのうちにその異様な世界に引き込まれていったのだった。

 まだ観てない方は、購入でもレンタル・ビデオでもよいので、まず観ることをオススメする。

 内容についてはあまり触れないが、この映画でおもしろかったのは、上映回数を重ねるたびに観客が映画の中の出演者といっしょになって踊ったり、台詞を言ったり、同じ衣装をしてきたりして、大騒ぎをするようになったことだ。

 最近では『アナと雪の女王』で、映画館でいっしょに歌えるシング・アロング版公開というのがあった。画面に歌詞が出てきて、観客もいっしょに歌えるのだ。英語版と日本語版があった。映画『ロッキー・ホラー・ショー』は、シング・アロング版のはしりと言えよう。

 当然、静かに鑑賞したいお客様もいるので、通常の上映とは別にいっしょに歌いたい人のための上映会、シング・アロング版が上映されたわけだ。

 『ロッキー・ホラー・ショー』も同様で、大騒ぎするための上映が、日本でもいろいろなところで開催されていた。

 現在、わたしの手元にあるDVDは、製作25周年記念版(2010年に35周年版も発売されている)で、映画館で大騒ぎしながら観ている観客の映像も入っていて、いっしょにお馬鹿騒ぎができるようになっている。

 雨の中を歩くシーンでは、観客たちが水鉄砲などで水を掛け合い、映画の中で新聞紙を頭からかぶって雨をしのぐ場面では、同じように映画館の中で新聞紙を頭の上にかざして、水鉄砲の雨をよけるという具合だ。

 そういえば、インドの映画の楽しみ方も、こんな風だと聞いたことがある。

 マサラシステム、あるいはマサラ上映という。
 映画を観るのではなく、映画に参加するというスタイルだ。
 こちらも歌ったり踊ったりはもちろん、紙吹雪やクラッカーなどを鳴らし、観客も映画に参加するのだ。テレビの番組でインドの人が、新作の映画を観に行く前に、いっしょに歌えるように予習をしてから行くのだと話しているのを見たことがある。

 日本でも、インド映画をマサラシステムで上映している。
 初めての開催は、2001年、大阪で『バーシャ! 踊る夕陽のビッグボス』が、このスタイルで上映された。最近では、2013年『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』が、毎週金曜日にマサラ上映された。わたしもインド好きの友人から金曜日に行こうと誘われたのだが、スケジュールが合わず、普通の上映にしか行けなかったのが残念である。

 さて、こんな風に映画を楽しむスタイルは変わってきたが、『ロッキー・ホラー・ショー』は、元々、舞台作品だった。日本にも75年、76年とロンドン・プロダクションによる来日公演が開催された。
 
 そして、日本人による舞台化も何度となく開催されている。
 今年も、劇団☆新感線の古田新太の主演で上演される。

 わたしは、舞台をまだ見ていない。今年は観に行きたいものだ。

■公演情報はこちら


(更新 2017.8.14 )


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プロフィール

小熊一実(こぐま・かずみ)

 1956年生まれ。プロデューサー。このサイトの前身「JAZZ STREET」に引き続き、「Music Street」の企画編集を担当。ジャズ、ロックはもちろん、クラシック、歌謡曲からアヴァンギャルドまで、聴きまくっている音楽狂。音楽以外にも、落語会やロボット・イベント、映画も製作している。ここでは、ジャンルを超えて、趣味に走ったライヴ情報をお届けしたい。補足情報をfacebookに掲載します、見て下さい。https://www.facebook.com/kazumi.koguma