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第119回 日本のタブラオでフラメンコを観よう

文・小熊一実

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フラメンコ公演「Las Mascaras ~仮面~」より
バイア:高関テラ
撮影/伊藤晃

フラメンコ公演「Las Mascaras ~仮面~」より
バイア:高関テラ
撮影/伊藤晃

フラメンコ公演「Las Mascaras ~仮面~」より
バイア:高関テラ
撮影/伊藤晃

フラメンコ公演「Las Mascaras ~仮面~」より
バイア:高関テラ
撮影/伊藤晃

 前回、ステファン・グラッペリについて書くにあたり、いろいろ調べたり確認したりしているうちに、ロマ族やジプシーという単語から、自然とフラメンコという言葉につながっていった。今回は、わたしとフラメンコについて書いてみたい。

 わたしはときどき、タブラオとよばれるフラメンコ・ダンスや音楽を見たり聴いたりしながら食事ができる場所に行く。そしてそれは、とても楽しい時間だ。

 わたしとフラメンコの出会いについて、考えてみた。

 時期は、小学校の中学年、記憶は曖昧なのだが、叔父のひろちゃんだと思う。ひろちゃんはわたしの父の弟で、音楽が好きで、当時は高価だったステレオも持っていた。特にラテン音楽が好きで、よく《ベサメ・ムーチョ》を歌っていた。ほかにも《キサス・キサス・キサス》など、マラカスを振る真似をしながら歌っていた。ひろちゃんがフラメンコを歌ったり、踊ったりした記憶はないのだが、フラメンコという名前やジプシーという言葉、そして、『カルメン』を教えてくれたのがこの叔父だったと思う。

 ひろちゃんはおもしろい人で、わたしが小学校の低学年の頃、わたしにサングラスとベレー帽をかぶせ、自分をひもで縛らせた。それからおもちゃの拳銃をわたしに持たせ、ひろちゃんに銃口を向けている写真を撮ったりした。わたしを正義の味方にしたて、ギャングの親分を捕まえたという設定だ。

 そんな叔父に教わったフラメンコを実際に観たのは、20歳のときだった。

 1977年、わたしはロンドンに3週間ほどのホームステイと1週間ほどのヨーロッパを巡る旅に出かけた。そのロンドンでの3週間ほどの間、ウォータールー駅からから30分ほどのところにあるウェイブリッジ駅のテームズ川のほとりの家にステイした。家の主はミセス・ミラー、名前はマーガレット。彼女は一人暮らしの54才だった。今思えば現在のわたしより若い。そこに一緒にステイしていたのが、17才のスペイン人の高校生エドワルドだった。

 わたしと彼は気が合って、よく一緒に近所のパブに飲みに行った。わたしは20歳になっていたが、彼は17歳。「ビールを飲んでいいのか?」とたずねると、スペインではOKだといっていた。

 パブに集まってくる日本人はわたしだけだったが、エドワルドの仲間のスペイン人たちが4、5人は集まってきていた。彼らもホームステイで来ていた。年齢は小学生から高校生くらいまでだろうか。たぶん、わたしが一番年上だった。

 彼らは集まると政治や宗教の話をしていた。「フランコは好きか?」とか、「カストロはどうだ?」とか。「君は、どう思うか」と意見を聞かれた。

 はじめての海外旅行で、行く前に聞かされていた注意事項の中で、政治や宗教の話はするな、と言われていたので、適当に流すと「ちゃんと自分の意見をもたなくてはだめだ」と17歳のエドワルドに言われたのを覚えている。

 そのパブで飲んでいるうちにカルメンの話になった。するとエドワルドが「おれはフラメンコを踊れるんだ」と言いだした。わたしが見たいというと、仲間のマリアという女性に話しかけ、一緒に踊ることになった。そして二人は、わたしや店にいるイギリス人のためにフラメンコを踊ってくれた。

 その後、2002年にわたしははじめてマドリッドに行き、25年ぶりにエドワルドと再会した。17歳のとき、わたしが法学部だというと「一実(筆者)は、弁護士になるのか」と聞かれた。わたしは「弁護士になるつもりはないな」と言った。かれは「ぼくは、弁護士もいいと思ってるんだ」と言った。そして、42歳になったエドワルドは弁護士になっていた。奥さんのグローリアは経済新聞社の社員、子供も男の子が3人。

 今でもフラメンコを踊ってるのかときくと、もう踊っていないとのことだった。奥さんのグローリアは、エドワルドがフラメンコを踊ることさえ知らなかった。

 その旅でわたしは、毎夜バルをはしごし、その後タブラオに行ってフラメンコを堪能した。

 最近は、スペインまで行く時間がないので、もっぱら日本のタブラオに出かけたりしている。

 最後に、わたしの友人のバイラオーラ(踊り子)のひとりを紹介しよう。

 昨年末に、フラメンコ公演「Las Mascaras ~仮面~」@座・高円寺2を主催し、踊った、高関テラさんだ。テラさんは、高円寺にあるタブラオ「カサ・デ・エスペランサ」にも出演し、また、さまざまな場所で指導もしている。7月20日(木)には、下記のアルハンブラへの出演、9月10日(土)には、カサ・デ・エスペランサへの出演が、決まったようだ。今回は、昨年のフラメンコ公演「Las Mascaras ~仮面~」の写真をご覧に入れたい。またタブラオおよび、イベント情報をいくつか紹介しておきたい。

■タブラオ・フラメンコ・ガルロチ:スペイン人によるカンテ(歌)、バイレ(踊り)、トケ(フラメンコ・ギター)を観ることができる。もちろん、スペイン料理やワインも美味しい。
http://garlochi.net/

■カサ・デ・エスペランサ:こちらは、日本人による演奏や踊りが中心。
http://tablaoesperanza.com/

■アルハムブラ西日暮里店:こちらは、フラメンコだけでなく、ベリーダンスの日もある。
http://alhambra.co.jp/

■日本フラメンコ協会
http://www.anif.jp/

[次回8/7(水)更新予定]


(更新 2017.7.10 )


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プロフィール

小熊一実(こぐま・かずみ)

 1956年生まれ。プロデューサー。このサイトの前身「JAZZ STREET」に引き続き、「Music Street」の企画編集を担当。ジャズ、ロックはもちろん、クラシック、歌謡曲からアヴァンギャルドまで、聴きまくっている音楽狂。音楽以外にも、落語会やロボット・イベント、映画も製作している。ここでは、ジャンルを超えて、趣味に走ったライヴ情報をお届けしたい。補足情報をfacebookに掲載します、見て下さい。https://www.facebook.com/kazumi.koguma