『バンド・オブ・ジョイ』ロバート・プラント ※2010年発表だが、今のところの最新作。新譜は2014年9月予定
『バンド・オブ・ジョイ』ロバート・プラント ※2010年発表だが、今のところの最新作。新譜は2014年9月予定
『レッド・ツェッペリン』<2014リマスター/スーパー・デラックス・エディション>
『レッド・ツェッペリン』<2014リマスター/スーパー・デラックス・エディション>

 2014年6月、レッド・ツェッペリンのⅠ~Ⅲが、リマスターされ、発売された。
 ジミー・ペイジ本人がプロモーションのために来日し、インタビューなども受け、話題になった。かっこいい黒スーツ姿の写真を見た人も多いだろう。一時期の太ったジミー・ペイジとは、別人のようだった。

 わたしも、つい未発表音源という言葉に負け、<2014リマスター/スーパー・デラックス・エディション>を3枚とも予約して購入した。これは、リマスターCDに加え、完全未発表音源が入ったCD。今まで聴いたことがないスタジオ・アウト・テイクやライヴ演奏が入っていて、ツェッペリン史上、初めての出来事だ。加えて、LPレコード、LPサイズ豪華ブックレット、 ハイレゾ音源のダウンロード・カードほかが入っている。30cm四方のLPレコード大の箱で、それが入っている段ボール箱の厚さが5.5cmはある。それが3セットだ。
 学生時代、やっとの思いで買ったレコードを朝から晩まで、言い古された言葉だが、すり切れるほど聴いた。今はCDだから何度聴いてもすり切れることもなくなったし、1セット2万円もするレコードを、悩みはしたが、3セットまとめて買えるようにもなった。うれしいことだ。しかし、別の問題が発生してきた。

 ものが増えてきてしまったのだ。LPレコードにCD、DVD、ブルーレイ、本、本、本。加えて、ほとんど見ることのないLD、ビデオ・テープなどなど。

 レッド・ツェッペリンだけでも、中学の時に買った日本盤レコードから、イギリス盤、米国盤、CD、紙ジャケCD、再発レコード、LD、DVD、それぞれ、ほぼひとそろえ、そして、ブートレッグLP、CD多数。もちろん、ツェッペリンだけではなく、ビートルズ、ローリング・ストーンズも、同じくひとそろえ状態。加えて、ロック全般、ジャズ、クラシック、日本のフォーク、ロック、歌謡曲のLP、CD。それに、本、本、本。

 この悩みが、わたしだけのものではないのも知っている。出版関係の友人たちと話すと、本やCDの置き場についてが、家族との軋轢の一番の原因だという者もいるくらいだ。

 アフリカでホテルを経営している先輩が、そのホテルに本を運んで、壮大な図書館を作るのはどうだ? といっていたが、さすがにその運送費と、読むためにアフリカまで行くのは困難だと想像する。
 
 わたしの場合、東京の事務所の4分の1以上を、本とレコード、CDなどが占めている。しかも、その場所は、けして安いとはいえない中央区だ。その家賃分を計算すると、忸怩たる思いが、こみあげてくる。1年間だけで、……。

 はじめの頃は、宇都宮の自宅・実家に、たまってくるたびに段ボール箱に入れて送っていた。けれどいつの間にか、自宅の書庫もリビングも、いまは使わなくなってしまった写真フィルム現像のための暗室も、本とレコードで埋め尽くされてしまった。建て替えた当初は、きちんと分類し、すぐに取り出せたのだが、たまるたびに東京から送っていたら、段ボール箱の山がたくさんできただけで、必要なときに見つけることもできず、宇都宮に帰って探すより、アマゾンであらためて注文した方が早くなってしまった。だから、同じものが複数あることも珍しくはない。

 しかも、それらの本は年に何回開かれ、読まれることがあるのだろうか? レコードは、何回聴かれるのであろうか? DVDの映画は、何度観ることがあるのだろうか?

 ミュージシャンの友人に、整理が趣味という人がいる。彼から、あるCDを買わないかと聞かれたことがある。タイトルを聞いて「買わない」と答えると、「ならば、あげる」といわれた。「なぜ?」とたずねたら、「もう聴いたから」という答えだった。
 彼は、CDは一度聴いたら、基本的に売るかあげるかして、自分の手元には置かないのだという。
「また聴きたくなったらどうするの?」とわたしがたずねると、「聴きたくならない」と答えた。「聴きたくなることもあるでしょう?」と重ねてたずねると、「また買う」と答えた。そして、「置いておくスペース代を考えれば、聴きたくなったときに買った方が安い」と言った。

『目指せ!耳の達人』という本の中で、著者の一人、指揮者で音楽評論家の宇野功芳が、「一回限りで壊れてしまうようなレコードを作ればいいんです」と言っている。オーディオで音楽を聴く上での利点の一つに、何度でも聴きたいときに聴くことができるということがあるけれど、それとは対照的な考え方だ。
 この発言の根拠は、もちろんCDを保管するためのスペース代とは関係なく、「演奏というものは、その場限りのもの」という考え方からでているのだが。音楽を聴くという姿勢として、CDとはいえ、聴く方も一回限りのものとして、真剣に向かい合うということをあらためて考えさせられた。
 
 本についても、自炊というものを知った。本を断裁して、スキャナーで読み取って、タブレット端末で読めるようにする方法だ。古い文庫本など、文字が小さくて読みにくくなったものが、タブレット端末だと拡大できるので、読みやすくなる。また、文字をデータ化すれば、索引などなくても検索できる。なかなか捨てにくい本の対処法として、一つの対応策ではある。しかし、『三四郎』や『ボヴァリー夫人』の文庫本を自炊して、読み直すことがあるのだろうか? すべての本をなんでもかんでも自炊する意味はなさそうだ。

 レッド・ツェッペリンの<2014リマスター/スーパー・デラックス・エディション>のセットを購入してきちんと聴いたのは、ダウンロードしたハイレゾ音源の未発表テイクのみである。ハイレゾ音源は、ダウンロードでも購入できる。また、以前、西新宿のレコード店を1日中かけて探し歩いた、ブートレッグの音源も、今では、facebookのLed Zeppelin Radio(https://www.facebook.com/LedZeppelinRadio?ref=stream )というところから、毎日のように送られてくる。

 このセットに入っていたLPサイズ豪華ブックレットをめくりながら、こんなことを考え、同時に、これらの置き場所について思いを巡らせる。

 そういえばジミー・ペイジは、リマスター音源試聴会での質疑応答の際に、「今はそれより(残りのリマスタリングより)ライヴをやりたい」と突然のステージ復帰宣言をしたという(レコード・コレクターズ2014年6月号山崎智之氏の速報による)。わたしがジミー・ペイジの演奏を最後に観たのは、1996年のペイジ&プラントとしての来日公演で、武道館であった。

『New York Times』紙のインタビューで、ジミー・ペイジが、レッド・ツェッペリンの再結成に対しロバート・プラントが「思わせぶりな態度を取っている」と非難した。アブダビの新聞『The National』によると、それに対し意見を問われたロバート・プラントは、「彼は睡眠を取って、ゆっくり休む必要があるね。そして、考え直すべきだ。僕らには素晴らしい歴史がある。全ての兄弟がそうであるように、共通の認識を持ちながら話しているってわけじゃない時もある。でも、それが人生だ」(http://news.livedoor.com/article/detail/8909247/ )と答えたという。

 バンドの再結成というのは、一度分かれた恋人同士が復活するのと同じように、そう簡単にはいかないのかもしれない。でも、ファンは待っているのである。
 
 さて、そのロバート・プラントが、2014年8月のサマーソニックに「ロバート・プラント・アンド・ザ・センセーショナル・スペース・シフターズ」として登場する。今年は、これに出かけよう![次回7/16(水)更新予定]

■公演情報はこちら
http://www.summersonic.com/2014/lineup/002.html?a=t1

■参考
Led Zeppelin Radio(facebook)
https://www.facebook.com/LedZeppelinRadio?fref=nf