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『オーケストリオン・プロジェクト/パット・メセニー』

文・杉田宏樹

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すべての楽器を同時に演奏する『オーケストリオン』の続編
The Orchestrion Project / Pat Metheny (Nonesuch)


 2月10日(現地時間)に発表された第55回グラミー賞で、パット・メセニー『ユニティ・バンド』が見事、《ベスト・ジャズ・インストゥルメンタル・アルバム》に輝いた。過去19回のグラミー受賞歴を誇るメセニーに、また新たな勲章が加わったことになる。

 そんなタイミングでリリースされたのが、『オーケストリオン』の続編に位置づけられる本作だ。時系列で整理しておこう。パット少年が夢中になったプレイヤー・ピアノの仕組みを応用して、すべての楽器を同時に演奏するシステムを開発。ギター、ピアノ、キーボード、ベース、ドラムス、マリンバ、ヴィブラフォン、パーカッションをたった1人でリアルタイムで演奏した『オーケストリオン』は、2009年10月に録音され、2010年1月に世に出た。欧米ツアーを経て、同年6月には東京でホール・コンサートを行い、前人未到・驚天動地のパフォーマンスは観客に大きな衝撃を与えたのだった。このプロジェクトに関しては、ここで一区切りをつけた印象があり、多くのファンはパットの次の作品に期待を寄せたと思う。

 2012年1月の“ブルーノート東京”公演は、ちょっとしたサプライズとなった。メセニー・メルドー・クァルテットで共演歴があるラリー・グレナディア(b)とのデュオ。その終盤にはステージ後方にセッティングされていた小型オーケストリオンが姿を現し、一気に新たな展開へと雪崩れ込んだのである。その後6月に『ユニティ・バンド』が出て、夏にはヨーロッパ・ツアーをこなしたことで、やはりパットは次のステージに進んだのだなと納得した。

 しかし昨年12月にDVD作『オーケストリオン・プロジェクト』がリリースされると、我々が受け止めたイメージの修正が必要になった。2010年11月、ブルックリンの教会をスタジオに見立ててライヴ演奏を収録。これはつまり『オーケストリオン』制作後の各国でのステージを経験することによって、さらなる可能性を感じたパットが取り組んだ発展形と言えるのではないだろうか。そして本作は同じ音源の全13曲を、曲順を変えて再構成したものだ。まず前作に比べると全体的に音圧が上がったことが特徴で、楽器の粒立ちや鮮明度が高まった点にアルバム化したパットの企図を感じる。選曲は前作の全5曲に加えて、『ブライト・サイズ・ライフ』『ニュー・シャトークァ』『シークレット・ストーリー』といった過去作からのレパートリーをリメイク。PMG盤『ウィ・リヴ・ヒア』が初演の「ストレンジャー・イン・タウン」は少しテンポを速めてパワー・アップし、オーケストラ的色合いも加味。「メキシコの夢」や「ユニティ・ヴィレッジ」は、意外にも初演を尊重したアレンジだ。最も大胆なのが「80/81 ブロードウェイ・ブルース」で、各種楽器の動きに本プロジェクトのユニークさが表れている。パットの飽くなき執念がここに実った。


【収録曲一覧】
Disc 1:
1. Improvisation #1
2. Antonia
3. Entry Point
4. Expansion
5. Improvisation #2
6. 80/81 Broadway Blues
7. Orchestrion

Disc 2:
1. Soul Search
2. Spirit Of The Air
3. Stranger In Town
4. Sueno Con Mexico
5. Tell Her You Saw Me
6. Unity Village

パット・メセニー:Pat Metheny(g,orchestrionics)
(allmusic.comへリンクします)
2010年11月ニューヨーク録音


(更新 2013/2/14 )


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