ClubhouseDexter Gordon
Clubhouse
Dexter Gordon

 現在EMIミュージック・ジャパンから「BNLT 999シリーズ」としてブルーノート・レーベルの旧作が再発されている。ブルーノートと言えば1500番台シリーズ4000番台シリーズが有名だが、後期BNLTシリーズは「よくわからないブルーノート」として片付けられがちだった。いわゆる「未発表シリーズ」で、私はこのデクスター・ゴードンのアルバムを70年代にアナログ日本盤で購入している。

 今回EMIから当時のアメリカ盤オリジナル・デザインを踏襲したCDがお買い得の999シリーズで出たのだが、ジャケットに使われたカラー写真のイメージはキレイと言えばキレイなんだけど、なんか軽い。言っちゃあ悪いけれど、いかにも70年代フュージョンにピッタリで、黒々としたブルーノート・ハードバップのイメージからは程遠い。  そこで内容もお蔵入り二番煎じ物と見られがちだけど、これが大違い。よく言われるようにブルーノートの完全主義は、ファンからすればどこにも傷が無い様な演奏もお蔵入りにしてしまうと言われたが、まさにこのシリーズはその典型。恐ろしいほど「隠れ名盤」がゴロゴロしている。

 たとえばこのデクスター・ゴードンの『クラブハウス』など、名盤と言われた『ゴー』(Blue Note)やら『ゲッティング・アラウンド』(Blue Note)の隣に並べてもいささかの見劣りもしない。つまりこの作品が録音された1965年当時、正規にリリースされていたら間違いなくコレクターズ・アイテム足りえたアルバムなのだ。

 内容は、フレディ・ハバードのトランペットとデックスの2管を、バリー・ハリス、ボブ・クランショー、ビリー・ヒギンズのリズム・セクションが支える由緒正しいハードバップ。この時代の「あの音」を知っているジャズ・マニアなら文句なく喰い付いてくる演奏だ。黒く、そして深い味わいとコクがある。

 それにしても、こうした端正かつどす黒い演奏って、彼ら特有のものなのだろうか。60年代も半ばを迎え、時代は“ブルーノート新主流派”など、新し目のサウンドが席巻しつつあるとき、特に目新しい趣向も凝らさず聴き手を惹き付けるデックスのテナーはただものではない。また、フレディもいいんです。後のフュージョン・フレディの軽さは微塵もない腰の据わったフレーズの小気味よさはなんともいえない。

 そしてヒギンスの歯切れの良いドラミングにハリスの渋いピアノと来れば、これもう言うことナシだ。まさに「隠れ名盤」。

【収録曲一覧】
1. Hanky Panky
2. I'm A Fool To Want You
3. Devilette
4. Clubhouse
5. Lady Iris B
6. Jodi

FREDDIE HUBBARD(tp)
DEXTER GORDON(ts)
BARRY HARRIS(p)
BOB CRANSHAW(b)
BILLY HIGGINS(ds)

Recorded in 1965/5/27