中島かずき[電人N]

素直に「おめでとう」と言える一年に
素直に「おめでとう」と言える一年に
新しい年を迎えました。  今年もよろしくお願いします。  子供時代はお正月というとわくわくしましたね。  学校は休みだし、親戚は集まるし、お年玉はもらえるし、普段買ってくれない漫画やプラモデルなども買ってもらえるし。僕は兄弟がいなかったので、歳の近いいとこが来て、いつもだとできないトランプやボードゲームなどができるのが本当に楽しみでした。  ゲームは大好きだったのですが、当時はTVゲームなどなかったので、こういうときに大勢でやるトランプや人生ゲームが、とても貴重だったのです。  正月前後の本屋に行くのも楽しみでした。  月刊少年漫画誌や小学館の学年誌なども新年増大号で表紙もにぎやかだし、特別付録などがつき普段よりも一段とかさがあるのがまた華やかな雰囲気を醸し出してくれていたのです。  あれから相当歳をとった今では、今更正月でもないよという気持ちの方が強いのですが、それでもやはり新年だと思うと、どこか新鮮な気持ちにはなりますね。  12月31日と1月1日、日付が変わっても、客観的には何かが大きく変わったわけではない。  ただ人の気持ちの問題です。  でも、この人の気持ちというのが大きいんでしょうね。  たまに思うのですが、家というのは結構脆いものですよね。  たった一枚のガラスで外と仕切られている。金槌一つあれば簡単に割れる。  あとのことを考えなければ、他人の家に入ろうと思えば、実は簡単に入れます。  でも、このガラス一枚というのが、意外と割るのに抵抗がある。  ただのガラス板ならば簡単に割れても、それが「他人の家の窓」という存在になった時は、なかなか割れない。心理的な抵抗が大きくなるのですね。  今はドアも頑丈ですが、昔は玄関が土間で、板一枚で出来ている引き戸が入り口の家なんかも結構あった。これもその気になれば蹴破ることだって簡単です。  でも、他人が戸を蹴破って入ってきたという話はあまり聞かなかった。「他人の家に勝手に入っちゃいけない」と幼い頃から教えられてきた社会的なルールが、実は家を一番守っているものだったりするんだろうなあと思うのです。  そして、そのルールが弱くなればなるほど、家そのものの守りを強固にしなければならなくなる。  ペルーに旅行したとき、首都リマの住宅街は、どこも塀の上に鉄条網が張られていて、しかもそこに電流を流していると聞いて、「ああ、本当に治安が悪いんだなあ」という印象を持ったのを思い出します。  元日が特別な気持ちになるのも、幼い頃からの刷り込み。社会的ルールの賜物なんでしょう。  世間の動きをみていると、「新年なんか祝ってる場合じゃないんじゃない」という気持ちにもなりますが、なんとか来年も素直に「明けましておめでとう」といえる一年にしていきたいものです。
1/11
今年一番ツイートした単語は?
今年一番ツイートした単語は?
ツイッターで今年一番ツイートした単語がわかるというサイトがあり、やってみたところ、僕が今年一番発言していた単語は「仕事」でした。  予想外だったので驚きました。 「そんなに仕事仕事言ってたっけ」と、各月ごとに一番発言した言葉を見てみると、今年の前半が殆ど「仕事」だったのですね。  そこまで見て初めて、「そうか、『フォーゼ』に追われてたんだなあ」と、思い至りました。   この夏くらいまでは確かに『仮面ライダーフォーゼ』のシナリオをやっていました。その間に『ZIPANG PUNK -五右衛門ロックⅢ-』の脚本も並行して書かなければならなかったので、かなり切迫した気持ちだったのは事実です。  その焦りが、ツイッターにも出ていたんでしょうね。  自分としてはそんなに「仕事仕事」ばっかり言っていたつもりはないのですが、とりあえず自分で自分を鼓舞するために、ツイッターでつぶやいていたのかもしれません。  確かに当時に比べれば、今は随分と気持ちに余裕があります。  来年夏の舞台『真田十勇士』の台本のほかに、いくつか進行している仕事はあるのですが、『フォーゼ』をやっていた頃ほど切迫した気持ちはありません。 『仮面ライダー』という作品に関わるということは大変なことだったんだなあと、改めて思います。  その『フォーゼ』の最後の仕事になる、映画『仮面ライダー×仮面ライダー ウィザード&フォーゼ MOVIE大戦アルティメイタム』が公開中です。よろしければ、劇場に足をお運び下さい。  そういえば、来年夏の舞台『真田十勇士』に、『仮面ライダーオーズ』の主役、渡部秀くんの出演が決まりました。  映画の打ち上げやイベントの楽屋などで何度かお見かけしたことはあるのですが、きちんと仕事をするのはこれが初めて。楽しみです。  この『真田十勇士』、主演は上川隆也さん、共演に里見浩太朗さん、柳下大くん、倉科カナさん、賀来千香子さんという豪華な顔ぶれなのですが、実は渡部秀くんの他にも戦隊やライダー、ウルトラなどの特撮番組に出演されていた方達がキャスティングされています。 『仮面ライダークウガ』で一条刑事役をやられた葛山信吾さん、『仮面ライダー響鬼』の斬鬼役の松田賢二さん、『侍戦隊シンケンジャー』のシンケンゴールド役の相馬圭祐くん。『ウルトラマンネクサス』のダークメフィスト役の俊藤光利さん。  特撮番組出身者が活躍しているというよりは、俳優の仕事の一環として特撮ドラマも認知されてきたんだろうなと思います。  ここに粟根まことや植本潤くん、小須田康人さんなど小劇場出身のよく知った役者が加わる。  キャストだけでもバラエティに富んだ、なかなか面白い芝居になりそうです。
12/27
『ZIPANG PUNK』開幕、客席の熱気に感動と感謝!
『ZIPANG PUNK』開幕、客席の熱気に感動と感謝!
今、『ZIPANG PUNK ―五右衛門ロックⅢ―』の初日が終わり、初日乾杯をして帰宅したところです。  まだ、興奮が残っています。  どんな芝居でもそうですが、やはり初日の幕が開くまでは緊張と不安があります。そして、無事に初日が終わり、お客さんを送り出し、キャストやスタッフと乾杯する時のホッとした感じ。  新感線の芝居は特に、終わったあとのお客さんの興奮が大きいので、そのうねりみたいなものをこちらももらっているのでしょう。  帰宅してからも、まだ胸のざわめきが残ります。
12/20
歌の闇鍋状態?! 稽古佳境の『ZIPANG PUNK』
歌の闇鍋状態?! 稽古佳境の『ZIPANG PUNK』
週末に、『ZIPANG PUNK -五右衛門ロックⅢ-』の通し稽古を見てきました。  想像以上に歌が多いです。 『五右衛門ロック』シリーズは、生バンドが入る音楽活劇というテイストなので、いつも歌はあるのですが、今回はシリーズで最多かもしれない。  しかも、キャストのみなさん、歌がうまいです。  まあ、音楽劇なので歌える役者さんをキャスティングしているわけですから、「みなさん、歌がうまいです」なんてわざわざ言うのもおかしな話かもしれませんが。  うまいというか、それぞれ経験が違うので、歌う時の個性が違って面白いと言えばいいのかな。  高橋由美子さんや浦井健治くん、村井国夫さんなどは東宝ミュージカルの出演も多く、明瞭に朗々と歌い上げるスタイル。  三浦春馬くんは、舞台出演はこれで三度目。今まで出演した地球ゴージャスでも歌は披露しています。蒼井優さんもミュージカル『アニー』の出身。テレビや映画だとあまりそういうイメージはないでしょうが、実は二人とも良い声をしています。素直な歌声が新鮮です。  古田新太、橋本じゅん、高田聖子など劇団員は、言い方には語弊があるかも知れませんが我流の極地ですね。ずっと新感線でやってきたから、新感線という表現の中で歌う歌い方は心得ている。  それが渾然一体となっているので、歌だけでもいろいろな味わいがあり、面白いです。  もちろん、作詞作曲がそれぞれの個性をよくわかっている。  演出のいのうえひでのりが考えた曲のイメージを具現化する、作詞の森雪之丞さんと作曲の岡崎司さんの職人芸にも感心させられます。  次に何が出て来るかわからない歌の闇鍋状態。  特に、素っ頓狂なキャラクターが次々に登場する一幕は、その印象が強いです。
12/13
フォーゼ最後の映画、「仮面ライダーMOVIE大戦」公開です
フォーゼ最後の映画、「仮面ライダーMOVIE大戦」公開です
先日、『仮面ライダー×仮面ライダー ウィザード&フォーゼ MOVIE大戦アルティメイタム』の完成披露試写会が新宿バルト9で行われました。
12/6
マチュピチュ旅行記5 砂漠に町が生える
マチュピチュ旅行記5 砂漠に町が生える
チチカカ湖からリマに戻り、美人ガイドのステファニーさんと再会。  いよいよペルー旅行も終わりが近づいてきました。  最後の観光はナスカの地上絵見学です。
11/29
マチュピチュ旅行記4 チチカカ湖の上でインターネット
マチュピチュ旅行記4 チチカカ湖の上でインターネット
マチュピチュ遺跡の観光を終え、宿泊したのとは別のホテルのレストランで昼食をとることに。  インカテラ・マチュピチュというこのホテルは熱帯の植物が生い茂るジャングルの中にコテージがいくつもあるという独特なもの。実はマチュピチュはアマゾンの入り口でもあるんですね。  食事までテラスで待っていると、なんとハチドリが飛んできました。自分たちが座っていたテーブルの近くにお気に入りの枝があるようで、何度も飛んでは戻り飛んでは戻り。  生きたハチドリを見たのは初めてだったので、興奮しましたよ。  食事を終え無事に列車に乗りこむと、なんとその中でファッションショーが始まりました。乗務員が名産であるアルパカ製の服を着て、音楽に乗って車内を回るのです。  車内販売もエンターテイメントにする。ほんとにペルーは観光に力を入れているなと思いました。  オリャンタイタンボ駅でガイドのアルベルトさんと合流。クスコに戻ると、翌日はチチカカ湖に向かいます。クスコから観光バスで10時間の旅です。  出発の朝、ホテルに迎えに来たアルベルトさんがニコニコしながら言いました。 「ケータイ、家に忘れてきたよ。でもダイジョーブ」  いやいやいや、ダイジョーブじゃないでしょ。むこうで一泊するんだから。ガイドさんはバスのドライバーとかホテルとか、連絡しなきゃいけないところがいっぱいあるでしょ。今日明日二日間、携帯なしというわけにはいかないでしょ。  さすがに、本人もそう思っていたようで、家に電話して奥さんに携帯を持ってきてもらうようにしたようです。観光バスは7:30出発。間に合うかなとひやひやしていたのですが、タクシーを飛ばして来た奥さんとバス出発の10分前に合流。なんとか携帯を受け取りました。  天気に恵まれこの日も快晴。  途中、プカラという町でエイリアンのミイラなんて怪しいものも見学しながら、無事にチチカカ湖のある町プーノに到着しました。  ペルーとボリビアにまたがるチチカカ湖は、標高約3800メートル。「世界で一番高い所にある湖」と、子供の頃の教科書で見たことがあります。  クスコよりも400メートル高い。でも、この400メートル差が意外と効きます。  ここで、初めて頭痛がした。ちょっと高山病っぽくなりました。  足を上げて寝て頭に血が行くようにしたら、だいぶ楽になりましたが。  ホテルに酸素吸入室があったので、話の種に酸素吸入もしました。ベッドに横たわりでかい機械で10分吸入するという本格的なものでした。  プーノのホテルに一泊して翌朝、チチカカ湖へ。  湖には大小いくつものトトラという葦で編んで作った人工の島が浮かんでいます。  ここに暮らすのがウル族。かつて彼らの先祖は、スペイン人の侵略から逃れるために湖に葦を編んだ島を作りここで暮らし始めたのだそうです。  基本的には数家族で一つの島で暮らし、祭りなどの時には島と島をつないで大きな島を作るとか。多くの浮島を集めて作ったウロス島には幼稚園や小学校、郵便局などがあり、周辺の小さな浮島の間の行き来は舟で行うのだそうです。  浮島の一つに渡ると、そこで暮らす家族が出迎えてくれました。(この教科書でしか見たことがなかった場所に自分たちがいる不思議さよ)  葦を組んで作った船。帽子と原色が印象的な民族衣装。標高が高いうえに水の上ということで、強い紫外線がさらに増幅されるからでしょう。みんな肌が浅黒い。  45年ほど前、小学校の教科書で見たのと同じ風景です。  その湖になぜか自分たちがいる。小学生の時には、まさか自分が葦で出来た島の上に立っているとは予想だにしなかった。面白いものです。 「この島には喧嘩はないよ。喧嘩したら島を切って喧嘩をした人間を別々に分けるんだ」と、島に置いてある大きなノコギリを見せながら説明するアルベルトさん。「でも、ボリビアまで流れていくと、パスポートがなければ上陸できないんだ」と、また冗談なのかどうなのかよくわからない発言をします。  驚いたのはこの浮島でも家庭にテレビがあること。売店などもある一番大きな島にはインターネットカフェもありました。  フジモリ政権の時に、太陽光発電の設備をもうけたのだそうです。  確かに葦で作った家の屋根の上に発電パネルが並んでいる。  45年前に教科書で見たのと変わらないようでいながら、確実に生活は変化している。  特に、太陽光発電と無線LANによるインターネットは、きっとこういう少数民族の生活も大きく変えることでしょう。  この富士山の頂上よりも高い湖の浮島にいながら、僕の携帯がずっとつながっていたのもその象徴ですよね。
11/22
マチュピチュ旅行記3 朝日が降り注ぐ天空の都
マチュピチュ旅行記3 朝日が降り注ぐ天空の都
さて、昼食を終えるといよいよマチュピチュ遺跡の観光です。  入り口まではバスでこれたのですが、もちろん遺跡の中は徒歩。  初日はガイドのアルベルトさんと一緒でした。  中に入ると見学ルートが決まっています。まずジグザグの階段を登る。どんどん登る。クスコで高山に慣れてから来たので息苦しさはあまり感じないのですが、普通に登り階段が続くのが辛い。  ようやくたどりつくとそこは見張り小屋と呼ばれる遺跡の中で一番の高台。  ワイナピチュと呼ばれる山の前に遺跡が広がるという、いわゆるマチュピチュの風景として雑誌やテレビなどでも紹介される風景。あの景色が見える場所です。  確かに素晴らしい。テレビでしか見たことがない「これがマチュピチュだ」という景色が目の前に広がっています。  時間はかかったし、いろいろと不安もあったが来てよかった。この景色は絶景です。天空の都と言われるだけのことはある。  でも、思った以上に怖くもある。  石造りの遺跡です。階段も石造り。手すりや鎖などない。足が滑って落ちたらと思うと身がすくみます。  写真をあげますが、顔がこわばっているのはちょっと恐怖と戦っている表情です。
11/15
マチュピチュ旅行記2 高地で生きる人の知恵
マチュピチュ旅行記2 高地で生きる人の知恵
ペルーに着くまで、さんざん治安を心配していた僕とは裏腹に、家内は落ち着いたもの。  僕がいない時に、ガイドのステファニーさんと、 「ご主人、心配性ですね」 「脚本を書く仕事をしているので、いったんスイッチが入ると想像が止まらなくなって心配になるみたいですよ」  という会話をしていたようです。  確かに、悪い想像というか妄想が止まらなくなってしまい、自分でも辟易することがあるのは事実です。  物語を考える仕事上、何かをきっかけにしてどんどん想像を膨らませていくという頭の中の回路を常にオンにしているので、それが悪い方向に向かうとそうなるんだろうなと思うのですが。一種の職業病かもしれません。
11/8
マチュピチュ旅行記1 リマ、深夜0時
マチュピチュ旅行記1 リマ、深夜0時
『仮面ライダーフォーゼ』がすべて終わり、『ZIPANG PUNK』もあげて、ようやく一息ついたので、少しまとまった休みをとることにしました。 『フォーゼ』をやっていたこの二年近く、毎日が尻に火がついたような状態だったので、休む気にもならなかったのですね。  というわけで、マチュピチュに行ってきました。  そろそろ行っておかないと年齢的にもきついだろうなということで決断しました。  マチュピチュのあるペルーまでは、飛行機でもトランジットを含めればざっと一日がかり。今回はエアカナダを使ったので、トロント経由で首都のリマに向かいます。  ツアーですが、添乗員と一緒ではなくリマで現地ガイドと合流するというもの。ペルーといえば、フジモリ大統領だった十年前ぐらいは結構テロが起こっていた印象があります。リマなどの首都や一部の地域は物騒だと聞き、行きの飛行機ではかなり心配しました。  だって、成田でフライトチケットをくれる旅行会社の係員が、「日本人は誘拐されたり、腕時計目当てに片腕切り落とされたりするから気をつけろ」とか「メキシコでは日本人が一日一人殺されてるから、くれぐれも気をつけて」とかいうんですよ。  フライト直前にそんなことかまされたらビビるでしょう、普通。  添乗員いないし、結局ツアー参加者は僕と家内の二人きりだったし。  落ち着こうと、チケットと一緒にもらったペルー旅行の注意書を読むと、「ホテルのチェックイン時渡したパスポートは必ずその場で返してもらえ」とか「入国時に出国カードにスタンプを押されるが、そのスタンプが不明瞭だと出国できない可能性があるので、はっきり押されているか確認しろ。薄かったらその場で押し直してもらえ」とか「空港についたのが深夜だと、ロビーで大きな荷物は外から見られないようにしろ」とか、ますます不安をあおるような事項がズラズラ並んでいる。到着時刻は現地時間の午前零時すぎ。まさに真夜中ですよ。  たまの旅行だというのでビジネスクラス奮発したのに、もう、「現地ガイドが来てなかったらどうしよう」とか「ガイドのふりして悪い奴が来て、そのままタクシーで連れ去られたらどうしよう」とか悪い想像が止まらなくて、行きの飛行機はまんじりともしませんでした。あ、それは嘘だな。不安から逃れるためにグーグー寝ました。おかげで、行きの飛行機で原稿書こうと思ってたのに、まったく手が着けられなかった。  で、リマに着きました。  深夜の空港、僕たちの飛行機の客以外は誰もいない閑散とした見知らぬ土地、みたいのを想像してたんですが全然違った。  さすがは南米のハブ空港。12時すぎても発着待ちのお客さんでいっぱいです。照明も明るいしにぎやかだし、イメージと全然違う。入国審査もスムースだしちゃんとスタンプももらった。  出口を出ると、ちゃんと現地ガイドのステファニーさんも待っていました。  まあ、ガイドがいなけりゃ大問題なので当たり前といえば当たり前なのですが。  しかも20代半ばの細身の美人。中学まで日本にいたとかで日本語が流暢で、こちらの気持ちもよくわかる。現地ガイドっていうから中年の「リマのことなら任してよ」みたいなどっしりしたおかあさんのような人が来るかなと思っていたので、これは予想外でした。  この辺から僕もだいぶリラックスしたようで、家内が僕の顔色を見て「ガイドさん来たら、俄然元気になってきたね」と囁きました。我ながら現金なものです。  翌日はリマ市内の観光。  かつてはテロの危険で立入禁止だった旧市街も、観光資源として活用するため、警察官などを配備して、今では安全なのだとか。   「確かにリマは治安は悪いです。でもガイド付きのツアーなら大丈夫ですよ」と、ステファニーさんも笑います。  治安に関しては、実はマチュピチュで驚いたことがあったのですが、長くなったので続きはまた次回にしましょう。
中島かずき
11/1
3つの作品が交差した、偶然の一日
3つの作品が交差した、偶然の一日
昨日(10月23日)、来年夏の仕事が発表されました。 『真田十勇士』という舞台です。  主演は上川隆也さん、演出は宮田慶子さん、主題歌が中島みゆきさんという豪華な布陣で、TBS制作の舞台脚本を書き下ろします。  真田十勇士に関しては、数年前に『ジェノサイド』というマンガの原作を書いたことがあります。  この時は、「真田十勇士対里見八犬士」というひねったアイディアだったのですが、今回は真っ向から真田幸村と十勇士達の物語を書こうと思っています。もちろん、僕が書くので、史実を裏や斜めから見る話にはなると思うのですが。  ところで昨日は忙しい日でした。  朝、ネットで『真田十勇士』が発表されたのを確認した後は、劇団☆新感線の12月公演、『ZIPANG PUNK ―五右衛門ロック3―』の顔合わせと本読み、夕方からはその制作発表でした。  今回、主演の石川五右衛門はいつもの古田新太ですが、新感線初参加として三浦春馬くん、蒼井優さん、村井国夫さん、麿赤兒さんに、高橋由美子さん、浦井健治さんという新感線参加組を加えた面白い組み合わせのキャストになりました。  麿さんが大駱駝鑑の世界ツアーに出かけられていて参加できなかったのが残念でしたが、その他のメンバーで読んだ本読みは、手応え充分。  初参加組の三浦くん、蒼井さん、村井さんも初読からいいトーンを出していましたし、五右衛門シリーズ前作の『薔薇とサムライ』にも登場したシャルル・ド・ボスコーニュ役を演じる浦井くんは、彼のあたり役だったこともあり、本読みの段階からもうのびのび。水を得た魚のように演じていました。  年末から年始にかけてのお正月興行らしい華やかで楽しい作品になると思います。  そのあとは場所を変えてニューオータニで『ZIPANG PUNK』の制作発表。  多くの記者さんに集まってもらっていたのですが、登壇者からの挨拶が一通りすんだ後、記者さんからの質問が何も出ない。  いつも質問殺到ということはないのですが、普通は一つや二つは出ます。何も出ないというのは初めてでした。  司会の中井美穂さんが僕らに質問を振ったりしたあとに、ようやく一人が質問してくれて格好がつきましたが、制作発表が終わり控え室でいのうえと「『ああ、いつものあれだよね』という感じで質問なんかするまでもないと思われたのかな」と、苦笑いをしました。  そして夜、『仮面ライダー×仮面ライダー ウィザード&フォーゼMOVIE大戦アルティメイタム』のクランクアップ打ち上げがありました。 『フォーゼ』としては最後の作品になります。  仮面ライダー部のみんなと久しぶりに顔を合わせました。  この映画ではテレビシリーズの五年後を描いていますので、どことなくみんなもおとなびている。去年の今頃、同様に映画の打ち上げでは主演の福士蒼汰くんもヒロインの清水富美加さんも、挨拶をするのにもどこかあぶなっかしかったのですが、今年は堂々としたもの。この一年で随分と成長したものだと改めて思いました。  思えば、今年の夏はこの『MOVIE大戦』のシナリオと『ZIPANG PUNK』の台本に追われて汲々としていました。  来年夏、『真田十勇士』が公演されることを考えると、今年の夏から来年の夏までの仕事がたった一日でまとめられてしまったわけですね。偶然というのはあるものです。
中島かずき
10/25
男子もはまった『りぼん』の強力“新人”作家たち
男子もはまった『りぼん』の強力“新人”作家たち
小学校の時に通っていた市立図書館の児童部屋にはわずかですがマンガも置いてありました。  コミックスだと、なぜか『巨人の星』が全巻。  雑誌は、『冒険王』『りぼん』『なかよし』が毎月購入されていました。  貸し出しはできなかったので、館内で読むしかありませんでした。  マンガに飢えていたので、少女マンガである『りぼん』も『なかよし』も毎月読んでいました。 『巨人の星』の記憶が鮮明なのはここで何度も何度も読み返したからですし、児童部屋に出入りできた中学三年生までは、『りぼん』も『なかよし』もしっかり読み込んでいました。  当時の印象だと、『なかよし』は全体的に垢抜けない感じでした。絵柄も話も古くさいお涙頂戴のメロドラマが多くて、少なくとも男の僕が読んでもピンと来るマンガが少なかった。  その点、『りぼん』のほうが面白かった。最初は、巴里夫という男性作家が連載していた『5年ひばり組』という作品が好きでした。わりとお行儀のいい学園ドラマだったのですが、それでもメロドラマよりは楽しめました。  そのうち、もりたじゅん、一条ゆかり、弓月光などが登場し、一気に誌面に活気が出ました。  弓月光のドタバタコメディーには男でも爆笑できたし、もりたじゅんの元気のいいヒロインも共感できた。  一条ゆかりは、『デザイナー』という作品のインパクトが大きかった。読んだ時期は中学二、三年だったでしょうか  デザイナーをめざす主人公の愛憎劇はそれまでの少女マンガの物語のイメージを超えるスケールで、そのストーリーテリングは洋画を観るようでした。絵も精緻で一級品のマンガだと感じました。 『なかよし』よりも『りぼん』の方が、はるかに垢抜けているように思え出したのも、この頃からです。  集英社新書から出た『同期生』という本は、一条ゆかり、もりたじゅん、弓月光、三人の漫画家が語る半生です。  文体から受けた印象ですが、それぞれにインタビューしたものを起こした本のように思えます。  でも、だからこそ、それぞれの性格がすごく伝わってくる気がする。  一条ゆかりが語る半生は、とにかくパワフル。幼い頃貧しかったことも、そのあとの仕事の仕方も、悩みも喜びも全部ひっくるめてパワフルに、少女マンガの女王の道を邁進しているように感じられました。  マンガ業界に身を置いていた時に漏れ聞いた一条ゆかり像とも、ぶれることはない。  この語りも一条マンガを読んでいるような気になりました。  もりたじゅんの回想は、自身のこともありますが、途中から、結婚した本宮ひろ志のエピソードが多くなるのが面白かったです。  もりたじゅんと結婚して、本宮マンガの女性達がグッと色っぽくなったのは、一読者であった僕もわかりました。本宮マンガの女性はもりたが描いているという噂は、中学生だった僕も耳にしたことがありました。『俺の空』なんかの成功は、もりたのアシストあってこそだと言われていました。  その辺の分業のやり方が彼女側から聞けたことは、とても興味深かったです。  弓月光はほんとにマンガを描くのが好きな、永遠のマンガ少年なんだなという感じでした。  この三人が実は『りぼん』の第一回新人賞の入選者であることを、この本を読んで初めて知りました。  そして、この三人が、自分たちの描きたい物を描くことで『りぼん』の誌面を変えたというのです。  子供の頃、「垢抜けてるなあ」と思っていた誌面は、デビューして間もない10代後半から20代前半の新人作家達が作ったものだったのですね。 『少年ジャンプ』が新人作家を登用することでヒット作を作っていくことは有名ですが、その先鞭を『りぼん』がつけていたとは。  どちらも出版しているのは集英社、やはり社風というのはあるのかもしれませんね。
中島かずき
10/18
この話題を考える
大谷翔平 その先へ

大谷翔平 その先へ

米プロスポーツ史上最高額での契約でロサンゼルス・ドジャースへ入団。米野球界初となるホームラン50本、50盗塁の「50-50」達成。そしてワールドシリーズ優勝。今季まさに頂点を極めた大谷翔平が次に見据えるものは――。AERAとAERAdot.はAERA増刊「大谷翔平2024完全版 ワールドシリーズ頂点への道」[特別報道記録集](11月7日発売)やAERA 2024年11月18日号(11月11日発売)で大谷翔平を特集しています。

大谷翔平2024
アメリカ大統領選挙2024

アメリカ大統領選挙2024

共和党のトランプ前大統領(78)と民主党のハリス副大統領(60)が激突した米大統領選。現地時間11月5日に投開票が行われ、トランプ氏が勝利宣言した。2024年夏の「確トラ」ムードからハリス氏の登場など、これまでの大統領選の動きを振り返り、今後アメリカはどこへゆくのか、日本、世界はどうなっていくのかを特集します。

米大統領選2024
本にひたる

本にひたる

暑かった夏が過ぎ、ようやく涼しくなってきました。木々が色づき深まる秋。本を手にしたくなる季節の到来です。AERA11月11日号は、読書好きの著名人がおすすめする「この秋読みたい本」を一挙に紹介するほか、ノーベル文学賞を受賞した韓国のハン・ガンさんら「海を渡る女性作家たち」を追った記事、本のタイトルをめぐる物語まで“読書の秋#にぴったりな企画が盛りだくさんな1冊です。

自分を創る本
こどもの城は、未来を育てる場所なのに
こどもの城は、未来を育てる場所なのに
今から25年ほど前になるでしょうか。青山円形劇場は、憧れの劇場でした。  円形の舞台の周りをぐるりと客席が取り囲むという、ほかにはない構造が特色の劇場です。  当時、円形劇場では青山演劇フェスティバル、通称演フェスと呼ばれていた、小劇場のフェスティバルが毎年開催されていて、遊◎機械/全自動シアターなど、ここに参加した劇団は注目され一気に動員を増やすことが多く、若手の登竜門といった趣がありました。 「新感線もはやく演フェスに呼ばれるようになりたいね」と、いのうえひでのり達と話していたものです。  大阪の小劇団だった新感線が東京進出して一年ほどして、演フェスに声がかかった時は本当に嬉しくて、「鉄鋲打ってゴリゴリのヘビメタの衣装着た連中がローラースケートでグルグル舞台を回るんだ」「巨大な龍戦車も出そうぜ」と、気持ち的には代々木体育館進出のようなイメージで挑んだものです。  演目は『スサノオ 神の剣の物語』。  定員300人くらいの劇場ですから、もちろん代々木体育館よりは遙かに小さいのですが、気合いだけは十二分で臨んだこの芝居は幸いなことに好評で、これをきっかけに東京の演劇界でも認知されて、お客さんもグングン増えていくことになりました。  そういう意味ではとても思い出深い小屋ですし、新感線が今のように大きな劇団になるきっかけを与えてくれた劇場です。  新感線だけではありません。  あの頃から今に至るまで、数々の劇団がこの劇場に育てられました。  前回触れた劇団、本谷有希子の『遭難、』も初演は青山円形劇場でした。  360度どの方向からもお客さんから見られるという、この劇場ならではの体験が役者を大きく成長させてくれたとも思います。  客席が1000人規模の大劇場に新感線が初めて進出したのは、隣の青山劇場でした。  ホリプロと組んで上演した『西遊記』。初演は新宿のシアタートップスでした。この芝居を見て気に入ってくれた円形劇場のプロデューサーが、演フェスに声をかけてくれたのですから、この縁もおもしろいものです。  それから何度も青山劇場にはお世話になりました。  この春に公演した『シレンとラギ』もその前の夏の『髑髏城の七人』もこの劇場でした。  最近の新感線の常打ち小屋の一つといっても過言ではありません。  劇場だけではなく、青山円形劇場が入っているこどもの城という施設には、僕の子供達が小さい頃には何度も遊びに来ました。  表参道と渋谷の中間にあるという地の利の良さも含めて、天気の悪い日に子供を遊ばせる大型施設として、便利に使わせてもらいました。  家内と子供四人で手をつないで帰っていると、前から知り合いの演劇関係者がやってきて(その人は円形劇場に芝居を見に来ていたのです)、バツの悪い思いをしたことも今ではいい思い出です。  その青山劇場、円形劇場を含めたこどもの城が閉館するというニュースを聞いて大きなショックを受けています。  慣れ親しんだ劇場がなくなるということも大きいのですが、都内でも足の便のいい、幼児を安心して自由に遊ばせることができる施設を閉鎖するということが腑に落ちません。  少しでも子育てをしやすくして、若い世代が子供を作ろうと思える国にしないと、この国の未来は厳しいと思うのですがね。  閉館の決定がなんとか撤回されないものかと願います。
中島かずき
10/11
アクシデントを乗り越える、舞台人の強さ
アクシデントを乗り越える、舞台人の強さ
劇団☆新感線の事務所で、『ZIPANG PUNK ―五右衛門ロック・―』の台本のチェックをしていると、みんな何やら慌ただしくしています。  どうしたのと聞いてみると、その日が劇団、本谷有希子の『遭難、』の再演の初日だったのです。  いけないいけない。自分の仕事にかまけてすっかり忘れていました。  劇団、本谷有希子は、劇団☆新感線と同じヴィレッヂという会社が制作をしているのです。  今回の公演は、稽古開始後、体調不良で主役が降板した為、大変だったということは耳にしていました。主役の女性役を菅原永二さんに頼むというアクロバット的キャスティングで、再スタートを切ったということも。  幸い仕事が早めに終わったので、駆け込みで『遭難、』の初日を観劇してきました。
中島かずき
10/4
「『グレンラガン』デー」で嬉しい再会
「『グレンラガン』デー」で嬉しい再会
京都国際マンガミュージアムという博物館で現在「ガイナックス流アニメ作法」という特集展示が行われています。  ガイナックスというアニメスタジオが、どういう風にアニメ制作に取り組んでいるか、その過去から現在を展示しているのですが、その一環として、先日、「まるごと『グレンラガン』デー」というイベントが行われました。 『グレンラガン』制作時のドキュメント映画と劇場版アニメ『紅蓮篇』『螺巖篇』の3本を連続上映し、間に声優の井上麻里奈さんと僕のトークを行うというイベントです。 『グレンラガン』ももう五年前の作品になります。午前11時から午後7時まで丸一日な上に、200人以上入る会場だということで、お客さんがどのくらい集まるのか不安だったのですが、朝の8時か9時くらいにはもう整理券がなくなったとのことで、驚きました。  この流行りすたりの早いアニメの世界で、五年経ってもまだ熱心なファンがいるというのは有難いことです。
中島かずき
9/27
女性ファンを獲得しつつあるアメコミ映画
女性ファンを獲得しつつあるアメコミ映画
今年の夏映画は、いろいろと見たい映画が多かったですね。  特にアメコミ原作が目立ちました。  6月の『アメージング・スパイダーマン』を皮切りに『ダークナイト ライジング』『アベンジャーズ』とマーベル、DC、二つの会社を代表するキャラクターが登場していました。
9/27
笑顔と涙のフォーゼファイナルイベント
笑顔と涙のフォーゼファイナルイベント
先週の週末はイベント三昧でした。  9/8(土)と9/9(日)の二日間、中野サンプラザホールで『仮面ライダーフォーゼ』のファイナルイベントが行われました。一日三回の公演です。   どちらも最終回を観に行くつもりで予定を入れていたのですが、9/8の深夜に『アベンジャーズ』のオールナイトトークイベントのゲストが決まりました。  土曜の夜に『フォーゼ』のイベントを見て、そのあと徹夜でアメコミトークして、徹夜で帰って仮眠を取ったら、『フォーゼ』のファイナルイベントの本当の最終回に出かける。  楽しいと言えば相当楽しい週末ですが、気がかりなのは仕事。  このスケジュールだと土日に仕事をするのはかなり厳しい。ちょうど劇団☆新感線の冬の新作『ZIPANG PUNK -五右衛門ロックIII。-』の脚本の追い込みだったので、これを残したままだと気持ちが悪いなあと思っていました。  二三日前までは、週末までにはあがらなさそうで、新感線の制作の方に「ちょっと厳しいかも」と弱音を吐いていたのですが、なんとかラストスパートが効いて、土曜日の朝にアップすることが出来ました。  これで心置きなく二日間、イベント脳にできます。
9/27
元・高校生も楽しめる「高校生もの」の秀作
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『高校生クイズ』が放送されると、夏休みも終わるという感じがしますね。  夕食をとりながら観ていると、うちの子供達が「つまらなくなった」と文句を言い出しました。二人とも大学生なのですが、自分たちが小さい時に観ていた『高校生クイズ』のほうがよかった。今の学力偏重の番組はつまらないと口を揃えて文句を言います。  昔は確かにもう少しバラエティ色が強かった。  今のように本当に知識と学力が試されるクイズ形式ではなく、もう少し見た目も派手だったし運が作用する部分もあった。 「予算が減って、昔のような派手な番組作りができなくったんじゃない?」と言うと、「確かにそうかもしれないけど」と、娘などはまだまだ不満そう。  偏差値の高い学校しか残れない今の『高校生クイズ』に対して、拒否感を示したくなる子供達の気持ちもわからないではありません。  でも、一時期、学力が高いことが悪いことのようなイメージが出来て、ゆとり教育が提唱されて、結局近隣アジアの諸国とも差がついてしまった現在、知識があり難問を解く学力のある若者が、その能力を評価される番組があってもいいと、僕なんかは思います。  走るのが速い若者、サッカーがうまい若者が、その能力を評価されるのに陸上競技の大会やサッカーの大会があり、それがテレビ中継されるのならば、学力の高い若者にもそういう機会があってもいいだろうと思うのです。  そう、子供達に言っても、彼らは納得いかないふうな顔をして自分の部屋に戻りました。まあ、僕のように50を過ぎた人間と、まだ学生で学校の成績が自身の評価の大きな物差しになる彼らとでは、感じ方が違っても仕方ないのかもしれませんが。
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