中島かずき[電人N]

みんなの力で走り抜けた『仮面ライダーフォーゼ』
みんなの力で走り抜けた『仮面ライダーフォーゼ』
『仮面ライダーフォーゼ』、この前の日曜日、8月26日に無事に一年間の放送を終了しました。  最初に東映の塚田英明プロデューサーから連絡をもらったのが、一昨年の12月ですから、この作品に関わってから1年9ヶ月がたったことになります。  勤めていた出版社を辞めて、最初にやろうとしていた仕事を諸般の事情で降板し、「さあ、会社を辞めたはいいけど、いきなり暇になったぞ。困ったぞ」と思っているところにきた連絡でした。  でも、物書き専業になったところでこれだけの大きな仕事をやることができたことは、本当にありがたかったですね。  一年のシリーズのシナリオなんて、会社を辞めたからできたわけですが、辞める前から来ていた話ではなかった。こういうタイミングの絶妙さを思うと、自分は仕事運にめぐまれているなと思います。    最初に打合せに行った時には唖然としました。  昭和の番長漫画を彷彿とさせる主人公の性格設定。仮面ライダーとは思えない奇抜なデザイン、「学園」と「宇宙」という二つのテーマを一つにする。高校生なので部活で変身ヒーローをサポートするという仮面ライダー部というアイディア。すべてが挑戦的でした。  正直、内心、もう少し安全パイな企画だったらいいのにと最初は思いました。ですが、長いシリーズをマンネリに陥らずに続けて行くには、こういう刺激的な作品があったほうがいいだろう。むしろ、こんな挑戦的な企画だから門外漢である自分が呼ばれたのかもしれないと思い、気を引き締め直して、打合せにも取り組みました。
9/27
「ゲリラ豪雨」は「ゲリラ」か?
「ゲリラ豪雨」は「ゲリラ」か?
前回、夕立の話をしましたが、今年の集中豪雨は前回のような情緒的な話ではおさまらないくらい激しいですよね。  ゲリラ豪雨という言葉もよく聞くようになりました。  でも、よく考えるとこの言葉、少し据わりが悪くありませんか。 「ゲリラ」という言葉の意味を広辞苑でひくと、「(もとスペイン語で小戦争の意。ナポレオン一世のスペイン征服当時、スペイン軍のしばしば用いた戦法に由来する語)奇襲して敵を混乱させるなど、遊撃戦を行う小部隊。また、その遊撃戦法。」とあります。  僕も「ゲリラ」といえば、少人数で奇襲で戦うというイメージでした。  だから、今の絨毯爆撃のような豪雨を「ゲリラ」と呼ぶと、ちょっと首をかしげてしまうのですね。少人数というよりはむしろ物量戦だろうと。  でも、これだけ人口に膾炙しているということは、みんなそれなりに納得する部分があるから使っているのだろうなとも思います。  少人数ではなく、奇襲戦のイメージの方が強いのかな。 「突然、ひどい目にあう」という感覚が、ゲリラを想起するのかもしれません。  でも、スコールとか集中豪雨とか他に使っていた言葉があるのに、なぜわざわざ「ゲリラ」なんて言葉を使うのでしょうか。だったら「テロ豪雨」のほうが、イメージに近い気がするのですが、「テロ」だと生々しすぎるのかもしれませんね。不謹慎といわれるかもしれない。 「ゲリラ」という、ちょっと懐かしめの言葉だから、使っているのかもしれません。  それに多少矛盾をはらんだ言葉の方が、人の心に残るような気もします。    言葉といえば、以前から不思議なのですが、なぜご飯を食べるのに使う器が「茶碗」で、お茶を飲むのが「湯呑み」なのでしょうか。  ご飯を食べるものを「飯椀」と呼び、お茶を飲むものを「茶飲み」と呼ぶことにならなかったのはなぜなんでしょう。  まあ、確かにご飯用は「ご飯茶碗」だからその省略形だと考えてもいいでしょう。でも、だったら後ろの部分だけ残さずに「飯椀」といえばいいじゃないですか。「飯椀」と言わないこともないけれど、普通には「茶碗」と呼んでることの方が圧倒的に多い。  不思議ですよね。  誰か、昔の人が「おい、おかしいぞ。飯をつぐのになんで『茶碗』なんだ」と問題提起しなかったんでしょうか。  いつ頃から「飯椀」のことを「茶碗」と呼ぶようになったのか、気になって時々調べているのですが、なかなかこれはという資料には出会えません。    日本語になじみすぎている外来語も危険ですね。  時代劇を書いている時に、台詞でつい「なにを、さぼっている」とか「敵のアジトを攻めよう」とか書きたくなる時がある。  でも「さぼる」は「サボタージュする」の短縮形だし、「アジト」は「アジテーティング・ポイント」の略。  もとがドイツ語と英語なので、時代劇にはあまりふさわしくない。  気をつけないといけません。
9/27
入道雲と競争した、田舎の夏
入道雲と競争した、田舎の夏
子供の頃は、夏といえば夕立が当たり前でした。  夏休み、外に遊びに行く。  午後になると、遠い山の向こうにむくむくと入道雲がわきたってくる。  真っ青な空に真っ白な雲がくっきりと浮かび上がる。  ゴロゴロという音が雲の奥からかすかに聞こえてくる。  まだ大丈夫と思っていると、一気に辺りが暗くなって、ガガーンと頭の上で雷が鳴り大粒の雨が叩き付けるように降ってくる。  目の前が見えなくなるくらいひどい雨が30分も降ったかと思うと、あっという間に雷が鳴らなくなり雨も小降りになる。そして、またカラリと晴れ上がる。  田舎の夕立はメリハリがはっきりしていました。  天高く湧き上がっていく入道雲をにらみながら、雲と競争して自転車を飛ばすなんてこともしょっちゅうありました。だいたい雲に負けてずぶ濡れになったけど、たまに、こちらが早くて、家に飛び込んだ途端雨が降り出したりすると、人生の全てに勝利をおさめたような気分になったものです。    考えてみれば、田舎は空が広かった。  僕が育ったのは、福岡の田川市という盆地です。  五木寛之が『青春の門』や『風の王国』で描いた香春岳から西に福智山、東に大坂山、そこから修験道でも知られる英彦山等々、四方をグルリと山で囲まれています。  実家から少しあるけば田んぼが広がり、空がとても広くなる。  あまり高い建物がないから、本当に視界が開けます。  雲の動きもよくわかる。  雨が自分を追ってきているのか、それとも雨に向かって走っているのか一目瞭然です。  目に見えるから、雲と勝負ができたんですね。
9/27
幻のドラマ「お荷物小荷物」のサウンドトラック
幻のドラマ「お荷物小荷物」のサウンドトラック
小学校高学年の頃でした。  土曜の夜、この日だけは夜更かししても怒られることはない時間、いつものように『キイハンター』を観て、そのままぼんやりテレビをみていると、突然、若い女の子が、「私はこんなことしたくないんだけど、台本に書いてあるんで叩きます」とか言いながら、男達の頭をポンポンとひっぱたいていく。  女の子は中山千夏。天才子役としてデビューし、歌手としてもヒットを飛ばしていましたし、子供達には『ひょっこりひょうたん島』の博士役の声優として有名でした。エッセイも書けばトーク番組にも出る。マルチタレントとして大人気な女性でした。  叩かれた男達は、河原崎長一郎、浜田光夫、渡辺篤史、林隆三、佐々木剛。他に桑山正一や志村喬、子供心にもテレビで顔なじみの面々です。  そのあと軽快な音楽のあとにタイトルバックが始まり、それがドラマの導入だということはわかったのですが、「一体何が始まるのだろう」とすごく驚いたことは今でもよく覚えています。  それがドラマ『お荷物小荷物』との出会いでした。
9/27
この夏は「ヒーロー・アクション映画」が熱い!
この夏は「ヒーロー・アクション映画」が熱い!
『仮面ライダーフォーゼ THE MOVIE みんなで宇宙キターッ!』の完成披露試写に行ってきました。    フォーゼ関係の試写会で丸の内東映にくるのもこれで三回目。  主演の福士蒼汰くんや共演の清水富美加さん、高橋龍輝くんら登壇者の挨拶も慣れたものでした。  去年の冬の映画『MOVIE大戦MEGAMAX』で、最初に登壇した時は、がちがちに緊張していて、「がんばれ」と客席で手に汗握っていたのですが、あれからわずか半年ちょっとでずいぶんと落ち着いたものです。『フォーゼ』は仮面ライダー生誕40周年記念作品ということで、イベントなども普段よりは多かったのかもしれませんが、その分場数をこなしてきたことも大きいのでしょうね。
9/27
書き手の成長がたのしみな九州戯曲賞
書き手の成長がたのしみな九州戯曲賞
7月7日、七夕の日に、毎年恒例の九州戯曲賞の選考会行ってきました。  今年の審査員のメンバーは、横内謙介さん、松田正隆さん、古城十忍さんというなじみの方々に加えて、今回初めて岩松了さんが参加されて、僕を含めて五人になります。
9/27
「如月弦太朗」と初対談?!
「如月弦太朗」と初対談?!
『シレンとラギ』は無事終了しましたが、『仮面ライダーフォーゼ』も大詰めです。  オンエアは八月いっぱいですが、この間、最終回の原稿もアップし、みんな最後の撮影に臨んでいます。
9/27
足かけ4ヶ月、『シレンとラギ』大千穐楽を迎えました
足かけ4ヶ月、『シレンとラギ』大千穐楽を迎えました
劇団☆新感線公演『シレンとラギ』、無事全公演が終了しました。  大阪で4/24に初日を迎え、東京公演が終了したのが7/2。  本番だけでも4つの月にまたがったこの公演、全69ステージ。新感線史上最長のものでした。  本当に長かった。
9/27
僕を育ててくれた高校演劇部の気風
僕を育ててくれた高校演劇部の気風
前回の話が意外に好評で驚いています。  特別面白い落ちや新しい情報があるわけでもない、「高校生から変わらないなあ」という話だったのですが、何か読んでいる方達の琴線に触れるものがあったのでしょうね。  中学高校時代というのは、辛い思い出がある人も多いようですが、僕は概して楽しかった。  もちろん将来への不安、恋愛や対人関係での問題など、決していいことばかりがあったわけではないのですが、それでも今振り返るとかなり自由に過ごしていた気がします。
9/27
タワレコの袋によみがえる、高校生の僕ら
タワレコの袋によみがえる、高校生の僕ら
先週もずっと忙しくて、今週に入ってようやく『シレンとラギ』を公演中の青山劇場に顔が出せました。  また10日ぶりです。  それでもまだまだ公演が続いているというのは、よく考えてみれば相当長いですね。  東京初日があけてから、かれこれ一ヶ月近く経つというのに、まだあと10日近く公演はある。  稽古が始まったのは3月下旬、まだ寒くて冬物のコートを着ていたと思います。それがすっかり半袖。  顔合わせの時から、「3月から稽古が始まって終わるのは7月。冬の終わりから初夏までと季節を三つまたぐなあ」と思っていたのですが、本当に長いです。  それでも、ようやく終わりが見えてきた感はあり、キャストもスタッフも少しホッとしているようです。    いつの間にか、新感線も大所帯になってしまいました。大阪以外の地方にも行けるものなら行きたいのですが、これだけ大きくなると採算の問題だけでもなかなか厳しい。  昼夜の二回公演がある時は、間で弁当が出る時があります。  主催者であるヴィレッヂだけでなく、キャストの方達なども差し入れしてくれる。なんとなく慣習になっていて、僕も一公演一回は受け持つようにしています。  この弁当の数だけでも今や100個以上。キャストとスタッフだけでそれだけの人間がこの舞台に関わっているのです。  これはバカにならない数字ですね。  今回、僕がお願いしたのは『酔心』という牡蠣と釜飯が有名な広島料理の店です。  僕も好きでたまに行くのですが、ここがお弁当の仕出しをやっているとは知らなかった。しかも、鯛飯弁当をお願いしたいとスタッフが電話したところ、そのメニューは物産展のための特別メニューだったのだが、これだけの注文数なら承りますと言うことで対応してくれた。  なるほど、一日で100個以上の注文になるわけですから大口です。  新感線という集団の経済効果は、こんなところにもあるんだなと実感しました。   芝居とは直接関係がないものだっただけに、かえってはっきりわかるのかもしれませんね。
9/27
〆切を守り続けたフォーゼシナリオ三人衆
〆切を守り続けたフォーゼシナリオ三人衆
『仮面ライダーフォーゼ』も、最終コーナーにさしかかりました。
9/27
「喫茶店」を仕事場にする理由
「喫茶店」を仕事場にする理由
久しぶりに、『シレンとラギ』を観てきました。  東京初日以来です。  前回、さんざん苦しんでいたのは『五右衛門ロックⅢ』のプロットだったのですが、新感線の事務所でも「もうだめだ」とか、制作の子に「俺が楽屋のケータリングをやるから君が台本を書くというのはどうかね」などと愚痴やら無理やらいいまくって、なんとか一日遅れで提出できました。  今回もなんとか"物語玉"の糸の端っこを捕まえる事が出来たようです。  でも、本当に綱渡りだったんですけどね。  これができないと、劇場に顔を出しても怒られるので、本番を観に行くのも自主規制していたというわけです。    10日ぶりに観た『シレンとラギ』は、少し演出も手を加えられていて、また精度が上がっている感じでした。  前回のいのうえ歌舞伎の『髑髏城の七人』、通称『ワカドクロ』では、若手が中心の芝居だったので、本当に毎日驚くように芝居の見え方が変わっていき目が離せない感じだったのですが、それとは違い高め安定という気がします。  さすがに今回はベテラン陣が多いですからね。  安定した中で芝居を円熟させていってくれたらいいなと願います。  そう言えば、久しぶりに宮藤官九郎くんに会いました。  忙しい中、見に来てくれていたのです。 「NHKの朝ドラが始まるから大変でしょ」というと「かずきさんも『ライダー』、ずっと書いてるんですか?」と。  宮藤くんの娘さんが『仮面ライダーフォーゼ』にはまっていて、彼も観てくれているらしいのです。  もちろん僕が全部書いているわけではありません。三条陸さんや長谷川圭一さんも書かれているので、僕自身がテレビ本編だと半分弱くらいの割合でしょうか。フォーゼの映画の脚本を書いている時はテレビ本編は休んでますしね。  それよりも朝ドラのほうが大変です。  半年間ずっと一人で書かなきゃいけない。 「大河ドラマよりも大変だという噂も聞くよ」と宮藤くんに言うと、まだ始まってないからと何とかなるだろうという雰囲気のいつもの宮藤節でした。  この人もかなり忙しいだろうに、いつもマイペースな雰囲気を漂わせています。   「どこで仕事しているの? 仕事場?」と聞くと「いやあ、喫茶店ですよ。ネットがつながらないように」 「そうそう、そうなんだよね。俺も同じで、近所の喫茶店転々としながら原稿書いてるよ」と僕もうなずきます。  いやあ、ここにもいました。ネットが天敵の脚本家。  宮藤くんの場合はYouTubeを見てしまうとのこと。 「ネットはやっぱり危険だよなあ」という話で盛り上がりました。      自分の意志の弱さを素直に認めて喫茶店で仕事をしている脚本家がいたら、どうかみなさんも温かい目で見てやって下さい。
9/27
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どんな人にも「忘れられない1日」がある。それはどんな著名な芸能人でも変わらない。人との出会い、別れ、挫折、後悔、歓喜…AERA dot.だけに語ってくれた珠玉のエピソード。

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3月8日は国際女性デー。AERA dot. はこの日に合わせて女性を取り巻く現状や課題をレポート。読者とともに「自分らしい生き方、働き方、子育て」について考えます。

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"物語玉"にアクセスする人たち
"物語玉"にアクセスする人たち
『シレンとラギ』東京公演が始まっています。  ですが、本番が始まると、現場のスタッフとは別に、僕は気がおもーくなります。今、本番が行われているということは、もうひと月もすればこの公演は終わるということ。  つまり、僕は次の芝居の台本を書かなければならないということなのです。  ああ、ずっと稽古してればいいのに。  もうこれから二年間くらいずっと『シレンとラギ』の公演してればいいのに。  そんな無駄なつぶやきが増えていくのです。
9/27
フォーゼグラスで金環食
フォーゼグラスで金環食
前回、『シレンとラギ』の大阪公演が終わったことを書いたと思ったら、もう東京初日です。  一週間が経つのが本当に早い。  その間何をしていたかというと、ずっと仕事していたわけですが。  今は『仮面ライダーフォーゼ』のシナリオが佳境です。  その他に進めている新企画と、劇団☆新感線の新作『五右衛門ロックⅢ』の準備を同時進行でやっています。  終局に向かうもの、新たに始まるものが交差して、気持ちの切り替えがなかなか難しいですね。
9/27
『シレンとラギ』、大阪公演の無事に感謝
『シレンとラギ』、大阪公演の無事に感謝
劇団☆新感線の『シレンとラギ』、大阪公演が無事に幕を閉じました。  とりあえず大きな事故もなく、千秋楽を迎えられたので、関係者一同ホッとしています。
9/27
声援を力に『フォーゼ』クライマックスへ
声援を力に『フォーゼ』クライマックスへ
5月3日、4日と、『仮面ライダーフォーゼ』のイベントがありました。  高校を舞台にしているので「春の学園祭」と銘打ち、ヒーローショーとライブ、キャストのトークショーをあわせた構成でした。  以前観たイベントは、戦隊35周年とライダー40周年をあわせた合同のものだったので、「フォーゼ」単独のイベントは初めてです。  でも番組が始まってもう8ヶ月。役への理解も深まり、映画の完成披露やこういうイベントもこなしてきて経験を積んだのでしょう。舞台の上にいる自分たちに随分慣れてきたように見えました。  オーディションで「ライダーとか見てませんでした」と柔らかい笑顔を浮かべていた福士蒼汰君や、去年の冬映画の完成披露試写の挨拶で上がりまくっていた清水富美加さんを思い出すと、若者の成長は早いなあとしみじみしてしまいます。
9/27
劇団☆新感線公演『シレンとラギ』、初日を迎えました
劇団☆新感線公演『シレンとラギ』、初日を迎えました
劇団☆新感線の公演『シレンとラギ』、大阪公演の幕が開きました。  初日前日の通し稽古であるゲネプロを見ていて、ひさしぶりに「ああ、新作の始まりだなあ」という感じがしました。  いや、新感線はいつも新作なんですけどね。昨年夏の『髑髏城の七人』が、七年ぶりの再演だったくらいですから。  それでも、今回のゲネプロはちょっと違った。
9/27
映画への敬愛に溢れた2つの映画
映画への敬愛に溢れた2つの映画
今年のアカデミー作品賞ほかを受賞した『アーティスト』を観てきました。  フランス映画でしかもサイレント作品。アカデミー賞をとっていなければ、足を運ばなかったかもしれません。  でも、行ってよかった。  見終わったあとに、美味しい食事でもしながら「おもしろかったね」と楽しく会話がしたくなるような、素敵な作品でした。    今年のアカデミー賞は、この『アーティスト』と、マーティン・スコセッシ監督の『ヒューゴの不思議な発明』とが賞を二分しています。  この二作、奇妙な共通点がいくつかあります。  まず、どちらも「映画」をテーマにした映画であること。 『アーティスト』は、サイレントからトーキーに変わっていく時代の、サイレント映画のスター俳優とトーキーで人気が出た新進女優とのラブ・ロマンスです。  しかもそれをこの時代に,サイレント映画として撮っている。 『ヒューゴ』の方は、ある少年が、失意のどん底にいた映画の祖であるメリエスと出会い、彼の魂を救済する話です。  こちらは最新の技術である3D映画としての粋をこらして撮られている。さすがはスコセッシだと感心しました。  どちらも、「映画」への敬愛に溢れている作品ですし、サイレント映画が作品の大きなモチーフになっているのに、片やサイレント、片や3Dと真逆の技術です。    もう一つは「アメリカとフランス」という関係。 『アーティスト』は言語こそ英語で撮られていますが、れっきとしたフランス映画。監督も主演の二人ともフランス人。でも舞台はアメリカ西海岸のハリウッド。 『ヒューゴ』は、ニューヨーク育ちで作品の舞台にすることも多いマーティン・スコセッシ監督ですが、舞台はパリ。  フランス人監督がハリウッドを描き、アメリカ人監督がメリエスを描く。なぜか逆転しているのです。    そして、共通しているモチーフが、「映画により一世を風靡した人物が、時代の変化により落ちぶれてしまうが、純粋な善意によりその誇りを取り戻し再び映画を愛するようになる」ということ。 『アーティスト』では、サイレント時代に人気のスターだった男が、エキストラのダンサーである女優を目にかけるのだが、トーキーに乗り遅れ、人気も失せ財産もなくなる。片や女優はトーキー映画でスターとなる。だが、男への想いを忘れなかった女優は彼を救うために懸命になる。  片や『ヒューゴ』では、主人公のヒューゴが、過去を封印しおもちゃ屋として生きているメリエスにかつての誇りを取り戻させます。  偶然の一致なのか、それともアカデミー関係者の気分なのかわかりませんが、これだけ真逆の表現方式でありながらその精神を同じにする作品が同時に評価されるのが、面白いなあと思ってしまいます。  今年はアメリカの映画人達は、映画というジャンルをもう一度誇りたかったのでしょうか。  確かに、両作品とも見終わったあとに「やっぱり映画っていいなあ」と思いながら帰れた作品でした。
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