中島かずき[電人N]

新しい作品のスタートでお別れです
新しい作品のスタートでお別れです

ようやく、アニメ『キルラキル』の製作が発表になりました。 『天元突破グレンラガン』の劇場版が終了し、今石洋之監督と新しい作品を作ろうと話し始めてから、もう3年以上たつと思います。  最初は、どうしても『グレンラガン』の呪縛にとらわれて、あれ以上の企画をと勢い込み、気持ちばかりが空回りしてなかなか具体案が出ませんでした。  打ち合わせでも、自分でも肩に力が入っているなあと思うことが多々ありました。  これは危険な兆候です。  うまくいった前作に引きずられて、同じようなラインを作って中途半端な作品になるというよくないパターンに陥りそうでした。  なので、途中で気分を変えて、あまり大上段にかまえずに、わりとすぐに作れて、自分たちが面白そうと思う要素でかためたシンプルな活劇をやろうと思い直しました。  その結果出てきたのが、今回の『キルラキル』です。  子どもの頃好きだった『男一匹ガキ大将』から『男組』などの学生を主人公とした抗争劇のテイストと80年代少年ジャンプ黄金期のバトルマンガの手法を取り入れた、女子高生二人の抗争を中心とする異能力バトル物とでも言えばいいでしょうか。  一度壁を突破すると、形が見えるのは早かったのですが、おおまかなラインが決まったところで、『仮面ライダーフォーゼ』の仕事が急に決まってしまいました。 『フォーゼ』の企画を最初に聞いたときに「うわ、こっちも学園物か」と驚きました。あちらは東映さんからの企画だったのですが、偶然というものはあるのですね。  同時進行だとまずかったかもしれませんが、ちょうど今石さんも『ブラック★ロックシューター』の仕事が入ったので、『キルラキル』は一時中断という形になりました。なんとか『フォーゼ』とは差異はつけられたと思うのですが、最初は焦りましたよ。ずっと腹に抱えていたのですが、『キルラキル』が発表になったのでやっと言えます。  でも結果的に、ちょっと間を置いたのはお互いによかったのかもしれません。  僕は『フォーゼ』をやりきって『キルラキル』とはやりたいことが違うことがはっきり認識出来たし、今石さん自身も企画を見つめ直すことができたようです。   少し進めていた準備稿を捨て、もう一度設定を煮詰めた結果、かなり納得のいくものになりました。  まだ細かい内容は言えないのですが、個人的には相当楽しく書いています。  あまり肩に力をいれないようにと始めたにも関わらず、熱量は『グレンラガン』以上かもしれない。  殆どの話数を僕が書いていますし、『グレンラガン』よりも一段と、僕と今石さんの色がはっきりした作品になりそうです。  発表したばかりとはいえ、実は脚本の作業はもう大詰め。最終回に取りかかっています。  この企画の途中で、今石さんたちはガイナックスから独立して自分たちの会社、トリガーを設立したので、この『キルラキル』が初めてのテレビシリーズになります。  そういう意味でもスタッフの気合いは充分です。  ここからどういう作品に仕上がっていくか、本当に楽しみです。  さて、「AERA」本誌からAERA.Net、そして現在の朝日新聞出版dot.と、6年近くにわたって連載してきたこのコラム『電人N』も今回で終了です。  連載をしている間に、劇団☆新感線の一演目での観客動員が10万人を超え、芝居以外でも『グレンラガン』や『フォーゼ』という印象深い仕事が出来、28年つとめた双葉社をやめて物書き専業になるという、自分の人生の中でも大きな転機となった時期での思い出深い連載になりました。  おかげでなんとか毎週話のネタに困ることはなかったのは幸いでした。  毎回、好き勝手なことを書いていましたが、おつきあいいただきありがとうございました。  また、どこかでお目にかかれますように。

ウルトラのハンバーグはマックの味がした
ウルトラのハンバーグはマックの味がした
小田急が地下になってから、なんとなく下北沢にいくのがおっくうになっています。  地下のホームから地上改札までの距離が長くて降車する気がしないんですね。  いくつか好きな喫茶店があり、地下化する前は、わざわざそこまで行って仕事をしていたこともあったのですが、このところ足が遠のいています。  若い頃、下北沢に住んでいたのですが、その当時の面影はもうあまり残っていないですね。若者の町なので、店舗の入れ替わりも激しいし、もう30年ほど前のことなので仕方がないと言えば仕方ないのですが。  当時、夕食を食べによく通っていたのが駅前の王将と、マックという洋食屋でした。  南口の階段を下りた前のビル、今はスターバックスがあるあたりに王将がありました。そこからマクドナルドの方に下っていってすぐのビルの地下にあったのがマックです。  そこそこの値段で、ちゃんとした洋食が食べられる。ずいぶん通ったものです。もっぱらハンバーグ定食を食べていました。というか、値段と腹持ちというコストパフォーマンスを考えると他の選択はなかった。新入社員でしたから、そんなに余裕のある経済状態じゃありませんでしたからね。  下北沢に住んでいたのは、双葉社に入社してから結婚するまでの5年ほどです。  それまでは学生時代からずっと住んでいた桜台にいたのですが、いろいろ行き詰まっていたので、気分を変えようと思って、以前から憧れていた下北沢に住むことにしたのです。  芝居もやめてせっかく憧れの出版社に入れたのに、希望していた編集ではなく広告部に配属になり飛び込みの営業などをやらされて、当然うまくいくはずもなくめげる毎日でした。会社の仕事は面白くない。個人的な人間関係もうまくいかない。芝居もやめてしまったし、自分は何をしてるんだろうと思い悩んでいた時期でした。  そのちょっと前に本多劇場やザ・スズナリ、駅前劇場など続々と新しい劇場ができていました。小劇場のメッカということで、芝居をやっていた人間にとっては、まぶしいほど憧れの町だったのです。  でも住んだからと言って状況が激変するわけじゃない。  むしろ町が華やかな分だけ、更に「今の自分は何もやってない感」が際立って焦ったりしていました。  そんな忸怩たる思いで一人食べていた食事の象徴がマックでした。  さんざん通っていたのですが、結婚して引っ越して下北沢で一人で食事をする機会が減ると、自然に足が遠のきました。  マックの入っていたビルごと、店がなくなっていることに気づいたのも随分とあとのことです。ある日気がつくと、ケンタッキーフライドチキンに変わっていました。  ちょっと寂しかったのですが、もう二度と食べられないことも含めて、いわゆる青春の思い出なんだろうなと思っていました。   そのマックのオーナーの息子さんが、経堂にウルトラという洋食屋を出していると教えてくれたのは樋口真嗣さんです。  息子さんですから味は違うかも知れないけど、どんなものだろうと足を運びました。  メニューには、ハンバーグ定食もしっかりあります。  独特のソースのかかったハンバーグに、つけあわせのキャベツとあっさりと味付けしたスパゲッティー。それに味噌汁。  あのマックのハンバーグ定食でした。  特につけあわせのスパゲッティーが独特の味で、口に入れた瞬間、20代の悶々とした時期が走馬燈のように蘇りました。  食べ物って怖いですね。久しく忘れていた、あの頃の焦りや苛立ちを一気に思い出したのです。  おいしいんですよ。マスターも素敵な人柄だし、雰囲気のいい店です。  実際、それから何度も通っています。  でも、あのハンバーグ定食を食べると、毎回、20代の頃、自分がどういう仕事が出来るのか悩み、根拠の無い自信となにをやればいいかが見えない不安にゆれていた気分を思い出します。  この歳になって、そんな気分になるのは悪いことじゃないと思っています。あの頃の自分を思うと、もうちょっと背筋を伸ばして頑張らないとなと思えるのです。  ただ、「マックからウルトラって、それ、なんか『ウルトラマンレオ』ですか」と突っ込みたくなる特撮好きの自分もいるんですけどね。
5/23
原恵一監督初の実写映画は、心をゆさぶる木下惠介監督の物語
原恵一監督初の実写映画は、心をゆさぶる木下惠介監督の物語
原恵一さんと初めて会ったのは、2001年の初夏、劇団☆新感線パンフレットでの対談でした。  当時、原さんは、シンエイ動画で映画とテレビどちらもあわせて、アニメ『クレヨンしんちゃん』の監督をされていました。  その年、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』が公開されて、そのあまりのおもしろさに、「是非、原さんとゆっくり話がしてみたい」と思い、こちらから対談をお願いしたのです。  当時、僕はまだ双葉社の編集者だったのですが、『クレヨンしんちゃん』関係の仕事ではなかったため、アニメスタッフに会う機会がありませんでした。  昭和のノスタルジーに逃げ込む大人と未来しかない5歳児との対立というモチーフは、当時、自分がボンヤリと感じていた気分をはっきりと形にされた気がして、映画を見ながら「やられたなあ」と圧倒されていたのです。もちろんそんな観念的なことばかりじゃなく、娯楽映画としても文句なく面白かった。  同い年だと言うこともあり、いろいろと興味深い話が聞けました。作られてきた作品を見て、多分そうだとは思っていたのですが、いわゆるアニメオタクではないからこそ、アニメに対して適度な距離感を持っているのが印象的でした。  翌年のしんちゃん映画、『戦国大合戦』も傑作でした。  これだけしっかり戦国時代の合戦の様子を描いた映像作品を見たことがなかった。  ただ、「これだけの作品をつくってしまうと、ここから先、『クレヨンしんちゃん』を作るのは厳しいんじゃないかなあ」という気持ちにもなりました。 『戦国大合戦』は傑作でしたが、原監督が『クレヨンしんちゃん』という枠組みを捨ててでも、『映画』という方向性を選んだように思えたのです。  案の定、ほどなくして原さんはシンエイ動画をやめて独立されました。  そのあと作ったのが、『河童のクゥと夏休み』、『カラフル』です。どちらも素晴らしい作品です。  ただ、アニメ表現には向かないシーンを物語のクライマックスに置くなど、あえてアニメという表現の枠組みに挑戦している気がしました。  今の売れ筋のアニメ的な手法とは一線を画したところで、自分の作品作りに挑んでいる孤高の人という印象を受けたのです。  本人にそう言うと、「そんなことないですよ」と否定されるのですが、僕にはそう思えて仕方なかった。  だから、その原さんが、実写映画を撮られると聞いたときはむしろ当然に思えました。  でも、ちょっと経緯は違ったようです。    原さんの実写初監督作品『はじまりのみち』は、木下惠介監督を題材にした映画です。  彼が戦中に軍部ににらまれて映画が撮れなくなった時期、脳卒中で寝たきりの母親を疎開のためにリヤカーに乗せて山を越えていったという逸話をもとにしています。  僕は、母と子の哀感などというベタベタな人情劇は苦手です。  それまでの作風から考えて、原さんがそういう映画を撮るはずもないが、最初の実写でこの地味なエピソードをどう映像化するのだろうかと、期待と不安を半々に試写を見せてもらったのですが、心配は杞憂に終わりました。  確かに登場人物も多くない。派手なエピソードがあるわけでもない。  でも、見終わったとき、大きく心を揺さぶられた自分がいました。  映画を撮ることが困難になった男が、再び映画を撮ろうと決意する。その息子を信頼する母親がいる。  セリフで多くを説明しない。それでも登場人物の気持ちは痛いほど伝わる。  見事な映画になっていました。  木下惠介は、かつては黒澤明と人気も評価も二分した監督ですが、今では語られることが少なくなっている監督です。  僕も最近は古い日本映画が好きで、中平康や川島雄三、増村保造、初期の市川崑、岡本喜八などはよく見ています。でも木下監督作品は殆ど見ていなかった。  黒澤監督のように骨太で男らしい作風と対比して、『二十四の瞳』や『喜びも悲しみも幾年月』などヒューマンドラマを得意とする監督というイメージが強いのですが、大ファンである原さんは、ずっと前からそれに不満を抱いていた。もっと鋭く幅の広い監督だというのです。原さん曰く「木下惠介はパンクでロックだ」と。そのことをもっと世間に知って欲しかった。だから今回も、実写映画が撮りたかったというよりも、木下監督の映画だから撮るという動機が強かったらしい。  準備期間も短く予算も潤沢ではなかった。そういう厳しい条件ではあったけれども、原さんは見事に実写初監督をやりとげたのではないでしょうか。  この映画を見ると、原恵一と木下惠介、二人の映画監督のことが気になり、他の作品を見てみようという気になると思います。     ▽映画「はじまりのみち」 6月1日公開  監督・脚本:原恵一/出演:加瀬亮、田中裕子ほか  http://www.shochiku.co.jp/kinoshita/hajimarinomichi/
5/16
テレビドラマ版『同棲時代』、幻の録画テープ発見秘話
テレビドラマ版『同棲時代』、幻の録画テープ発見秘話
『同棲時代』という作品をご存じでしょうか。  70年代、「同棲」という言葉をはやらせたほど人気があった上村一夫氏の劇画です。  当時はまだ結婚前の男女が一緒に暮らすことに、世間的な抵抗が大きかった。その分、若者達は、自分たちの新しいライフスタイルとして同棲という形を支持した。  この時期、戦後に生まれた世代が20歳になり、それまでの価値観や規範を覆していこうとする動きの中の一つだったのでしょう。  まだ小学生だった僕も、そういう世の中の動きは感じられました。  もっとも世に広く知れ渡ったのは由美かおるさん主演で映画化され、大信田礼子さんが歌う主題歌とともにヒットしてからかもしれません。  全裸の由美さんが後ろ姿で立っている映画のポスターは衝撃的でした。当時は今と違って町のあちこちに映画の宣伝用ポスターが貼られていましたからね。街角で出くわすと、小学生でもドキドキしたものです。  連載されていたのはweekly漫画アクション。当時は『子連れ狼』『ルパン三世』などなど、さまざまなヒット作がひしめいていました。もちろんこの『同棲時代』も、その時代を代表する作品の一つです。  但し、あまりにもその時代の気分と近しいところにいる作品は、時がたつにつれて忘れ去られてしまうことがある。 『子連れ狼』や『ルパン三世』が、今でもよく人の口の端に上っているのに比べて、『同棲時代』は今ではある世代以上でないと知らないタイトルになっています。作者が早くに亡くなっているせいもあるのかもしれませんが。  僕自身、「ああ、そんな作品もあったなあ」という認識でした。  ましてや、この作品がドラマ化されていたことなどすっかり忘れていました。  その作品と思わぬ再会をしたのは2009年のことでした。  当時はまだ双葉社に勤めていました。  ある日、先輩が大掃除をしていて、古いビデオテープを処分しようとしていたところにたまたま出くわしました。  ユーマチックという、昔テレビ業界で使われていたテープです。  見ると「TBS 同棲時代」と書いてある。 「捨てる前に中身を確認したほうがいいな」と、直感的に思いました。  今でこそ、テレビドラマはオンエアだけでは終わらない。CSやBSで再放送されるし、DVDなどパッケージ化もされる。ですが、かつては収録に使うビデオテープが高価だったので、一度オンエアされた番組は消されて、その上に新しい番組を収録して使っていたのです。  おかげで、フィルムではなくビデオ収録の昔のテレビ番組は、見たいと思っても、すでに消去され番組そのものが残っていないということがままあった。  たとえば、小学生の頃夢中になった作品に、『タイム・トラベラー』というNHKのドラマがありました。筒井康隆氏の『時をかける少女』の最初の映像化です。この作品もテープが上書きされてもう現存していないといわれていたのですが、これがたまたま一般の人がビデオテープに録画していたものが、最近になって見つかった。放映当時は家庭用のビデオデッキなんてとても高価で一般にはまったく普及していなかったのですが、家が電器店だったとかで、最終回だけ録画していたらしいのです。おかげで最終回だけでもDVDが発売され、僕も見ることが出来た。  また同じくNHKの大河ドラマですが、『風と雲と虹と』という平将門を主人公にした作品が、最初は総集編しか残ってないと思われていたのですが、のちにNHKの倉庫に全話収録していたテープが見つかって、テレビ放送完全版のDVDが発売されたりもした。 「同棲時代 TBS」と書かれたテープを見て、こういうエピソードが脳裏をかすめたのです。  以前ドラマ化されたという記憶は微かにあったので、ひっかかったのですね。  インターネットで調べたところ、確かにTBSでドラマ化されている。沢田研二・梶芽衣子主演、脚本山田太一という豪華な布陣。しかも沢田研二が本格的に俳優としてデビューした作品です。  自分でテープの内容を確認したかったのですが、ユーマチックという特殊なテープだったので、個人ではどうしようもない。  こういうとき頼りになるのが加藤義彦さんです。以前『お荷物小荷物』のサウンドトラックを紹介したときに触れましたが、加藤さんは昔のテレビ番組に非常に造詣の深いライターで、編集者時代には何度も一緒に仕事をさせてもらったことがあります。彼とは、一緒に『8時だヨ! 全員集合』や久世光彦さんの本を作ったこともあるので、TBSにはパイプもありました。 「とりあえず、テープの中身と、TBSに『同棲時代』のマスターが残っているかどうかを確認しましょう」と、加藤さんも大いに興味を示して下さいました。古いドラマが残っていないことは彼もよく知っているのです。  しばらくして、加藤さんから連絡がありました。双葉社で見つかったテープの中身は確かにドラマ版『同棲時代』だったこと。そのマスターテープはTBSには残っていなかったということでした。  残念ながらマスターテープではなく、テレビ放映を録画したものらしい。画質もそれほどよくはありません。でも、若い沢田研二さんも梶芽衣子さんもとてもきれいで、それだけでも一見の価値はある。今では巨匠となった山田太一さんが原作物をてがけるのもとても珍しいことです。  このテープはTBSで保管したいという希望でしたので、喜んで返却しました。  このドラマ版『同棲時代』を、CSのTBSチャンネル2で放送したいので詳しい話が聞きたいという連絡が来たのは今年の3月のことでした。  テープ発見の経緯が特殊だったので、『同棲時代』のオンエアにあわせてテープ発見のドキュメント番組も作りたいということです。  その打ち合わせの席で聞いたことですが、沢田研二さん自身も、本格的な俳優デビュー作であるこのドラマには愛着があったらしい。当時『女囚さそり』などで、反逆のヒロインとして人気があった梶芽衣子さんも、こういう等身大の役は初めてだったらしく印象的だったらしい。  ただ、なぜこのテープが双葉社に残っていたのか、その謎は未だにわかりません。放送当時、局が出版社にサンプルを渡すようなことはあり得なかった。ユーマチックという業務用のテープだと見られる人間も限られる。誰が何のために送った物なのでしょうか。  それはそれとして、もし自分があの場所にいあわせなかったら、このテープは捨てられていたかもしれない。  そう思うと、ちょっと誇らしい気持ちになると同時に、運命の巡り合わせみたいなものは感じます。  ちなみに、『同棲時代』はTBSチャンネル2で5/25、18:30~と5/26、22:00~。発見秘話は5/25、18:00~他でオンエアされる予定のようです。  他の出版社やその他のみなさんも、あやしい古い業務用ビデオテープが見つかったら、捨てる前に是非中身を確認してみて下さい。  その中には、古いドラマファンが見たいと思っているお宝映像が眠っているかもしれませんから。
5/9
『ザ・流行作家』の凄絶な生き様
『ザ・流行作家』の凄絶な生き様
僕が小学生のころは、まだ貸本屋がありました。1日10円で雑誌が借りられた。僕も少年漫画誌はそこで借りていました。最初は「少年」や「ぼくら」などの月刊少年誌。そのうち「少年マガジン」や「少年サンデー」などの週刊誌。小さい頃からよく通っていたので顔なじみになっていました。だから「マガジン」や「サンデー」などは、発売日の朝、学校に行く前に寄って取り置きしておいてもらう。学校に漫画をもっていくとしかられますからね。で、下校時に寄って受け取るのです。人気のある雑誌はそうやらないと、他の人が借りていってなかなか順番が回ってこなかったので、生活の知恵でした。小学生なのに、漫画雑誌をほとんど全誌読めていたのは、貸本屋のおかげです。  貸本屋には父親に連れて行ってもらったのが最初です。父親がよく借りていたのは月刊小説誌でした。「オール読物」や「小説宝石」などA5判の平綴じの雑誌です。  さすがに一晩では読み切れないようで2、3日借りていたようですが、たまに「返しておいてくれ」と、僕に渡すことがありました。  小学校高学年になると、推理小説なども読んでいました。だから目次に目を通して、ちょっと気になる作品があるとパラパラと読んだりした。そこで、川上宗薫や宇能鴻一郎という官能小説作家の名前を見つけると、ドキドキしたものです。  月刊小説誌は、大人の世界を垣間見せてくれる扉でした。 『ザ・流行作家』という本を読みました。  著者の校條剛氏は、「小説新潮」に長く在籍し編集長もつとめた文芸編集者の生え抜きです。  彼が担当した笹沢佐保氏と川上宗薫氏、二人の強烈な個性の作家について書いた本です。  僕らより上だと、二人とも名前を聞いただけで「ああ」と思う作家でしょう。でも、下の世代ではほとんど忘れられかけた名前かもしれません。  それは二人とも、ブックライターではなくマガジンライターだったから。雑誌連載は非常に多くて、毎月猛烈な量の原稿を書くのですが、単行本はその知名度ほど売れない作家だったからです。  笹沢佐保氏は『木枯らし紋次郎』の原作者として有名で、一番人気があった頃はご本人もテレビや雑誌などによく出ていました。  子供心に顔を覚えているくらいですから、相当な露出だったと思います。  ただ、この人気絶頂期の『木枯らし紋次郎』シリーズですら、最初の単行本で初版が6000部。版は重ねたものの実売が4万部程度だったと著者は語ります。  結局、『紋次郎』本の初版が1万部を超えることはなく、唯一の長編『奥州路・七日の疾走』の初版はなんと4000部。(『紋次郎』シリーズは基本的に短編集でした)  この部数は、出版不況と言われる今の小説の初版とあまり変わりません。この当時、テレビで大ヒットしていた作品、木枯らし紋次郎といえば今でも通用するキャラクターの原作本としてはかなり少ないと言わざるを得ないでしょう。正直、僕も驚きました。  川上宗薫氏は官能小説の第一人者でした。  ポルノは一定数売れるというのが、自分が双葉社にいた時代の実感でした。  双葉社の文庫でも人気の官能作家の作品は、部数が動きます。川上氏と同時期の官能小説の有名どころで言えば、宇能鴻一郎氏がいます。彼の本はそれなりに動いたらしい。  ビッグネームの川上氏の本が売れなかったというのも意外でした。  彼らが活躍したのが小説雑誌の時代だったということでしょう。 『紋次郎』シリーズが短編だったのも、雑誌での読み切り感が大事にされていたということではないでしょうか。  当時、まだ文庫は古典を収めるものでした。  1970年代後半から80年代初頭にかけて、角川春樹氏が映画と連動することで角川文庫のエンターテインメント色を強め、ベストセラーを排出する以前のことです。ここから各社、一気に文庫のエンタメ化が進んだのです。  現在、小説雑誌は、書籍が売れる作家の作品をとるための受け皿になっています。  どこも雑誌単体ではなかなか採算がとれない。  でも、昭和40年代、小説誌は小説誌として成立していた時代があった。そしてその雑誌をまたにかけて原稿を書いた作家がいた。  それが流行作家です。  毎月1000枚以上の執筆量をきっちりこなしていく。自分が決めたノルマは確実にクリアする。  そのために笹沢氏はいったん書き始めた原稿は終わるまでは決して筆を置かない。ホテルで愛人と会っていても、原稿を書いて編集者に渡すまでは、ベッドルームで待たせておく。  川上氏は、自分の作品の素材にするために、毎月複数の新しい女性と関係を持つ。  収入はあるが恐るべき自転車操業です。しかも、賞とは無縁。  笹沢氏は直木賞候補、川上氏は芥川賞候補になりながら、とってはいません。  締め切りをこなすストレス。文壇で認められない鬱屈。そういうものをごまかすためにか、酒と女に溺れる。そしていつしか時代とずれ、アイデアが枯渇し、もっともっと酒に溺れる。  校條氏が語る二人の作家の晩年は、まさに小説と戦い討ち死にしたと言ってもいいほどです。  この本は、ただの暴露本ではありません。一緒に苦楽をともにした編集者としての視点、作品論にまで踏み込んで書かれている部分もあります。  笹沢氏が雑誌での読み心地を重視するため、プロットのどんでん返しにこだわって人物造形がステロタイプだったので、小説としては弱かったのではないかという指摘など、なるほどと思わされます。  それでも、とにかく、今は忘れ去られようとしている二人の作家の凄絶を残しておきたかった。そういう思いが伝わる本です。  僕も、書評を読んで無性に読みたくなった。笹沢氏も川上氏も名前はよく知っていたが、ろくに作品は読んだことがないにも関わらずです。  それがなぜなのか、自分でもよくわかりません。子供の時にのぞいた大人の世界を思い出したからでしょうか。  きっと流行作家というのは高度成長期が生んだ泡沫なのだと思います。  その時代への郷愁でしょうか。  我が身を削りながらも、締め切りをこなしエンターテインメントを量産することをプライドとする作家の在り方への共感でしょうか。  自分自身その辺の整理はつかないのですが、最近読んだものでは一番印象深かった本でした。
4/25
ミステリー作家・殊能将之氏の訃報に思う
ミステリー作家・殊能将之氏の訃報に思う
「論理のアクロバット」が好きです。  今まで見ていた世界が、ラストでグルリと見え方が変わるような感覚を与えられるロジックの綱渡り。  その感覚が欲しくてミステリを読んでいます。  たとえばフレドリック・ブラウンの『叫べ、沈黙よ』。 「森で木が倒れるとき、すごい音がする。だが、誰も聞く者がないところで木が倒れてもそれは音がしたと言えるのか」という問いかけからこの短編は始まります。  ある男の妻と使用人がコンクリートの燻製室に閉じこめられて死んだ。  妻の弟は、男が二人が浮気していると思ってわざと閉じこめて殺したんだと言いはっている。  ところが男は耳が聞こえなかったから、妻と使用人が閉じこめられていることに気づかなかったと言う。その言い分が公的には認められて、男は罪には問われなかった。  扉の向こうで妻が必死で助けを求めている声も、耳の聞こえない男しか住んでいない家では、無音と同じだったのだ。  ところがーーーーーーー。  最後の一行で、この物語は意味がグルリと変わります。  見事な切れ味の短編です。  だから、ミステリでも、物理的なトリックはあまり興味がありません。  一見不可能に見える密室ができていても、できているということは不可能ではなく可能だったと言うことです。その謎を解いたところで、結局そこにある世界の説明にすぎない。現実を論理が後付けするわけです。  叙述トリックが好きなのは、そこまで読んできたことの意味がラストでひっくり返るからです。  キレのいい叙述トリックだと、「○○だ」と思いこんでいた世界が実は「××のことだった」とわかる瞬間の快感はたまりません。「ああ、やられたなあ」と頭をゆさぶられるような感覚になる。論理が現実をひっくり返すのです。  殊能将之氏の『ハサミ男』は、実によくできた作品でした。  なんとなく不自然だった所が、最後の仕掛けがわかった瞬間に全て腑に落ちる。  この本のおかげで、自分が叙述トリックが好きだということをはっきりと認識したくらいです。  同時に殊能氏自身にも興味が沸きました。こんな物語を思いつくのは、いったいどんなプロフィールの人なんだろう。ところが完全な覆面作家で、そのへんのことがまったくわからない。  氏のブログや、最近ではツイッターも覗いていたのですが、なかなか正体がつかめなかった。 『美濃牛』『黒い仏』、『鏡の中は日曜日』、『樒/榁』、『キマイラの新しい城』、それから氏の作品はずっと読んできました。  どの作品も、殊能氏らしい一筋縄ではいかない感じはあるのですが、どこか本気を出していない感じがあった。 『ハサミ男』を書いた人なら、もっとすごい作品が書けるような気がする。それだけの知識と才能と頭のよさと人の悪さをもっている人のような気がする。  ずっとそう思ってきました。  しばらく作品を発表していなくて、どうしたんだろうと思っていたところに、彼の訃報が飛び込んできました。  あっけにとられました。  死因もなにもかも伏せられたままです。  はっきりしているのは、彼の新作は二度と読めないということ。  自分でも、この寡作な作家の急逝に、なぜこんなに喪失感があるのかわかりません。  結局、彼のことは何一つわからないまま、消えて行ってしまったからでしょうか。  ただただ、ご冥福をお祈りします。
4/18
『宇宙戦艦ヤマト2199』に見た"ヤマト"魂
『宇宙戦艦ヤマト2199』に見た"ヤマト"魂
『宇宙戦艦ヤマト2199』のテレビ放送が始まりました。  この作品は、まず劇場で先行公開し、映像ソフトを発売した上で、最後にテレビ放送があるという、かなり変則的な展開のプロジェクトです。  これも『ヤマト』というビッグネームタイトルだからこそ成立したやり方かもしれません。
4/12
客席を巻き込む熱量に溢れたタランティーノ最新作『ジャンゴ』
客席を巻き込む熱量に溢れたタランティーノ最新作『ジャンゴ』
クエンティン・タランティーノ監督の『ジャンゴ ―繋がれざる者―』を見ました。  今回はタランティーノ流マカロニ・ウエスタンです。  僕も、小学生の頃にマカロニ・ウエスタンが大ブームだった世代。テレビでジュリアーノ・ジェンマやフランコ・ネロの映画を夢中になって見てました。特にジュリアーノ・ジェンマが好きでしたね。野沢那智さんの吹き替えも込みで。  だから、開幕早々、『続・荒野の用心棒』の主題歌が堂々と流れるところでもう、1800円分の元はとった気分になります。タランティーノは、この曲を冒頭で流したいためにこの映画を撮ったんじゃないかと思いたくなるほど。  この手があるなら『アリゾナ・コルト』って映画だってあるぞ、『リンゴ』って映画だってあるぞ。今、大スクリーンで『荒野の1ドル銀貨』や『南から来た用心棒』のテーマが流れたら、もうたまらないぞ。まあ『リンゴ』だと『続・荒野の1ドル銀貨』だけどな、などと、オープニングを観ているだけで妄想が止まりません。  パンフレットで町山智浩氏が書いている、最近のタランティーノ映画が、アメリカの弱者の復讐を映画で果たすという見識は実に腑に落ちます。 『イングロリアス・バスターズ』の、歴史的事実を無視してユダヤ人レジスタンスがヒトラーを映画館で焼き殺すラストシーンを観たときには、最初はどう捕らえたらいいのか戸惑いました。  ただ町山さんの文章か何かで、このシーンで映画館のユダヤ人客が「こんな場面が見たかったんだ」と快哉を上げるという話を知って、「そういうことか」と目から鱗が落ちました。  今回の『ジャンゴ』は、南北戦争前、奴隷制も盛んな南部が舞台。奴隷だった黒人の主人公が、妻を取り戻すために賞金稼ぎになり、白人の悪党達をぶち殺していく。その姿に、映画館で黒人の観客達が拳を突き上げる。  日本人の自分がその心情のすべてを理解できるとは言いませんが、ただ、観客に見たいものを見せるのもまたエンターテインメントの正しい姿だと教えてくれたのです。  まあ、タランティーノの場合は、まず自分が見たいものを撮るって気もしますが。  彼が、自分が見てきたジャンルムービーへの溢れんばかりの愛と知識をその作品に注ぎ込む姿は、いつものこととはいえすがすがしいです。 『殺しが静かにやってくる』かよ、『マンディンゴ』かよ、とオマージュする作品のツボを得ていること。  大きな筋書きがわかっているとはいえ、悪役である南部の農場のどら息子、ディカプリオの屋敷に行ってから、いつどうやって最後の戦いが始まるのか、ずっとドキドキしながら見ていたので、まんまと映画の語り口にはまっていたのも間違いないですね。  新宿ピカデリー、金曜日の午後の回。  ジャンゴが、最初に賞金首を撃ち殺すところで、おばあさんが拍手していました。  黒人奴隷が犬に食われるところで若いカップルが退出して、二度と戻ってこなかった。  そんな客席も含めて面白かったです。  ところでマカロニ・ウエスタンの主題歌としては『さすらいの一匹狼』が一番好きなんですが、これってジュリアーノ・ジェンマの主演作のテーマに流用されてませんか。『夕ばえ作戦』のテーマが『江戸の旋風(かぜ)』に流用されたように。  子供の時にテレビでそんな映画を観た気がしたんですが、『星空の用心棒』かな『さいはての用心棒』かなと、それらしい映画を見ても曲は違う。僕の記憶違いだったのかなあ。
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新しい下北沢駅に行ってみました
新しい下北沢駅に行ってみました
小田急線の下北沢駅が3月23日から地下になりました。  渋谷駅の東横線と副都心線の相互乗り入れによる地下化がニュースになっていましたが、こちらも渋谷ほどの主要駅ではないとは言え、井の頭線との乗り換えもあるし、演劇の町として有名、若い頃には住んでいたこともある町です。僕としては、渋谷駅の地下化よりもはるかに身近な変更です。  思い出も結構あるので、とりあえず地上駅最終日の夜と、地下化になった翌日の日曜日に、下北沢に行ってみました。  地上駅最終日は、金曜日ということもあって、改札口から階段、踏切と人がいっぱい。係員が出て立ち止まらないように誘導していました。  改札口へ上る階段のあたりも写真を撮る人間もたくさんいましたが、それ以上に多かったのが駅近く、オオゼキというスーパーマーケットのそばの踏切。僕が住んでいる頃は、オオゼキではなく第一勧銀でした。  ここはなかなか開かなかったから、僕も住んでいるときには随分イライラさせられたものです。  それでもみなさん、なくなるとなると寂しいのでしょうか。電車が通るため踏切が降りると、みんな写真を撮っていました。  この夜は、下北沢も随分人が出ていましたね。  いきつけの串焼き屋も結構混んでるんじゃないかと顔を出すと、ここはなぜかガラガラ。 「外はあれだけ人がいるのになんで」と僕が聞くと「不思議だねえ。先週の週末は休む間もないくらい混んでたんだけどねえ」とマスターも首をひねる。 「今夜は一見さんが多いから、普通の居酒屋は混んでて、ここみたいな常連が多い所は空いてるのかもねえ」と言ってはみましたが、本当のところはわかりません。  客商売は難しいものですね。  日曜日、地下化2日目に、新しい駅を見に降車しました。  まだ、工事中ですがとりあえず開業したという雰囲気で、最終的には地下2階が各駅停車、地下3階が急行のホームになるようですが、今はまだ地下3階のホームに全部の列車が止まるようになっていました。  エスカレーターで地上に上がろうとすると、これが長い長い。地下2階から、1階と、かなり時間がかかります。  井の頭線との乗り換えもこれまでは1、2分ですんでいたものが、5分かかるというアナウンスが流れていました。  本来なら高架にしたかったのに、下北沢辺りは土地買収がうまくいかなくて地下化せざるを得なかったという噂も聞いています。  もしそれが本当なら、現行の駅施設の土地面積の中で処理しなければいけないから、地下2階と3階になるのも仕方ないとは思うのですが、正直な感想をいわせてもらえば不便になりますねえ。  下北沢の駅で降りるのも、井の頭線に乗り換えるのも、余裕を見なければなりません。下北沢に芝居を観に行くときも、今までの感覚よりは5分早めに動いた方がいいと思います。  改札を抜けて町に出たときには、「やれやれ、やっと出た」という感じがしました。  ベビーカーを押した若い夫婦が「エレベーターはないんですか」と係員に聞いていましたが、その口調がちょっと怒り気味だったのも気持ちはわかります。  ちょっと話は違うのですが、帰り際、下りのエスカレーターで写真を撮ろうと携帯を出すと、一緒にいた家内に「エスカレーターで写メ撮ろうとすると、怪しい人だと思われるから気をつけて」と言われました。  なるほど、盗撮と思われるのか。  女性の視点でないと気づかなかったけど、ごもっともです。みなさんもご注意のほどを。
3/28
お茶の間に「日曜洋画劇場」があった時代
お茶の間に「日曜洋画劇場」があった時代
「日曜洋画劇場」が、4月からなくなるんですね。  正確には毎週のレギュラーではなくなり、バラエティなどもやる枠になり、映画を流すときだけは「日曜洋画劇場」の名前を残すということらしいですから、完全になくなるわけではないのでしょうが。
3/21
巻き上がる砂嵐につのる不安
巻き上がる砂嵐につのる不安
先週の日曜、いつものように喫茶店で仕事をしようと家を出ると、空の様子が違う。  北の方が妙に茶色い。 「あ、黄砂だ。それもかなりひどい」そう思いました。  生まれ育った福岡は、大陸に近いこともあり、春はよく黄砂がやってきます。  特に2年前のゴールデンウイークに帰省したときはひどかった。  100メートル前がかすむような感じでした。  あの時と同じような砂埃がやってきている。空を見て、そう思いました。  それでも喫茶店にいくまでは大丈夫だろうと歩き始めると、あっという間に砂埃に追いつかれてしまった。ひどい風が吹き、目の前がみるみる茶色くなっていく。  いやあ、驚きました。  東京に暮らしてからもう35年になりますが、こんなにひどい砂嵐は初めてです。  てっきり黄砂だと思っていましたが、気象庁の発表では煙霧でした。  何が違うのかと思いますが、はっきり中国大陸の黄土地帯からやってきた砂が舞っていると特定できたときだけ、黄砂と呼ぶらしいですね。砂が舞っていてもそれが大陸から来たと特定できなければ煙霧になるということらしいです。  今回の場合は関東地方北部で強風のために巻き上げられた砂だったので、黄砂ではなく煙霧だったそうですね。  いったん地面に落ちた黄砂が再び巻き上げられたんなら黄砂と一緒じゃないかとかいいたくもなりますが、「黄砂」か「煙霧」かは、言葉の定義の問題ですから、その定義さえきちんと押さえておけばいいと思います。  問題なのは呼称ではなく、その砂埃がどのくらい有害かということでしょう。
3/14
五右衛門ロックシリーズ、最後の日に思うこと
五右衛門ロックシリーズ、最後の日に思うこと
『ZIPANG PUNK ー五右衛門ロックⅢー』全69公演が終了しました。   いつも初日にいのうえが言うことですが、けがや病気などで一人の脱落者も出すことなく、千秋楽まで同じメンバーでやり続けることができました。  劇場に足を運んでいただいたみなさん、応援していただいたみなさん、ありがとうございました。
3/7
作品が完結した後に、作り手が伝えられること
作品が完結した後に、作り手が伝えられること
『ZIPANG PUNK -五右衛門ロックⅢ-』もいよいよ大千秋楽となりました。  今、新幹線の中でこれを書いています。  明日の大千秋楽に立ち会うために、大阪に向かっているのです。  東京のスタートが12月19日でしたから、約二ヶ月半。長い長い公演もついに終わりを迎えようとしています。  キャストもスタッフも疲労はピークに来ているでしょうが、どうやら無事に幕を下ろせそうで、ホッとしています。
2/28
この話題を考える
大谷翔平 その先へ

大谷翔平 その先へ

米プロスポーツ史上最高額での契約でロサンゼルス・ドジャースへ入団。米野球界初となるホームラン50本、50盗塁の「50-50」達成。そしてワールドシリーズ優勝。今季まさに頂点を極めた大谷翔平が次に見据えるものは――。AERAとAERAdot.はAERA増刊「大谷翔平2024完全版 ワールドシリーズ頂点への道」[特別報道記録集](11月7日発売)やAERA 2024年11月18日号(11月11日発売)で大谷翔平を特集しています。

大谷翔平2024
アメリカ大統領選挙2024

アメリカ大統領選挙2024

共和党のトランプ前大統領(78)と民主党のハリス副大統領(60)が激突した米大統領選。現地時間11月5日に投開票が行われ、トランプ氏が勝利宣言した。2024年夏の「確トラ」ムードからハリス氏の登場など、これまでの大統領選の動きを振り返り、今後アメリカはどこへゆくのか、日本、世界はどうなっていくのかを特集します。

米大統領選2024
本にひたる

本にひたる

暑かった夏が過ぎ、ようやく涼しくなってきました。木々が色づき深まる秋。本を手にしたくなる季節の到来です。AERA11月11日号は、読書好きの著名人がおすすめする「この秋読みたい本」を一挙に紹介するほか、ノーベル文学賞を受賞した韓国のハン・ガンさんら「海を渡る女性作家たち」を追った記事、本のタイトルをめぐる物語まで“読書の秋#にぴったりな企画が盛りだくさんな1冊です。

自分を創る本
まるで「劇団グレンラガン」!? 大笑いのドラマCD収録
まるで「劇団グレンラガン」!? 大笑いのドラマCD収録
2007年にテレビ放映されたアニメ『天元突破グレンラガン』のブルーレイBOXが、6月に発売されます。  僕が初めて本格的にシリーズ構成・脚本として参加した作品です。発売が告知されてすぐ、Amazonのランキングで1位をとりました。  もうオンエアされてから6年がたとうとしているアニメなのに、息の長い人気を得ていて本当にありがたいなと思います。  このBD-BOXの特典として、シナリオ書き下ろしの新作ドラマCDがつきます。  2009年の劇場版螺巌篇のDVD特典で書いたのが最後だから、3年以上間があいてしまったので、グレンラガンのキャラクター達がうまく書けるか不安だったのですが、実際に書き始めると、個性の強い連中だったせいでしょうか、自分でも面白いくらい各キャラクターが動いてくれたのです。  全然タイムラグを感じませんでした。  そして収録日。  何人か抜き録りしなければならなかったのですが、大半の声優さんが一堂に会してくれました。  みんな多忙な中、奇跡的にスケジュールが合う日があったのです。  スタジオでみんなの顔を見た時は、ちょっとした同窓会気分でした。  収録が始まりました。  ドラマCDの内容はいつも、テレビ本編よりもコメディ仕立てにしています。していますというか、自然にそうなるというか。本編のパロディのような設定にしているので、そのほうが書きやすいのですね。  絵がない分、役者さんは自由なテンポで芝居が出来るし、そうなるとついつい台詞の掛け合いが増えてしまう。  久しぶりの『グレンラガン』なので、演じる方も戸惑うかなとも思っていたのですが、みなさん、もうびっくりするくらい以前通りのキャラクターを演じて下さいました。  特にこういうスピンオフ作品になるとついつい檜山修之さんが演じるヴィラルというキャラを書き込んでしまいます。  さすが檜山さん、次々に登場する行動原理がずれたキャラクターに、的確に突っ込んでいく。もうそれはそれは見事でした。他のキャストもかけあいのリズムがすばらしく、「まるで劇団グレンラガンだ」と、立ち会っていた僕も監督の今石洋之さんもその他のスタッフも、もうゲラゲラ笑うだけ。  もちろん、ロージェノム役の池田成志さんもアンチスパイラル役の上川隆也さんも、このドラマCDに出演します。BD-BOXを買っていただいた方には楽しんでもらえるものになっていると思います。  1回目のテストで殆どOK。すぐに本番になりました。  いやあ、楽しかったなあ。  キャストのみなさんにも愛された作品だったのだろうなと思います。  こういう作品作りに関われたことに感謝しなければ。  収録があまりに楽しかったので、『グレンラガン』のネットラジオにも飛び入りゲストで参加してしまいました。  本当は監督の今石洋之さんだけがゲストのはずだったんですが、もう少し『グレンラガン』の世界にいたくて、無理を言って出てしまいました。  こちらもパーソナリティのカミナ役小西克幸さんと今石さんとやたらに笑っていた気がします。収録が終わったら三人とも汗をかいていました。  インターネットラジオステーション音泉の『超絶復活グレンラガンラジオ』の2月22日配信分です。  宜しければお聞き下さい。
2/22
染五郎さんが舞台に帰ってきた
染五郎さんが舞台に帰ってきた
日生劇場の二月大歌舞伎を観に行ってきました。  ケガで休んでいた市川染五郎さんの復帰公演です。  日生劇場で染五郎さんと言えば、2004年の『髑髏城の七人ーアオドクロー』がこの劇場でした。  台風に襲われて交通機関がストップしてしまい、カーテンコールで染五郎さんが動いている鉄道を知らせるというハプニングがあったり(しかも二回も)、当時まだ高校生だった鈴木杏さんも出演していて、楽屋で宿題をやっていたのが印象的でした。  それからもう10年近くになろうというのですね。月日の経つのは早いものです。
2/14
『五右衛門』の名場面誕生は『グレンラガン』のおかげ!?
『五右衛門』の名場面誕生は『グレンラガン』のおかげ!?
『ZIPANG PUNK ー五右衛門ロックⅢー』、大阪公演が始まりました。  いろいろと気になったことを修正したりカットしたりして、東京公演初日よりは15分ほど短かくしました。  上演時間は、だいたい3時間30分程度になります。  東京公演中から少しずつ手直ししてはいたのですが、大きな変更には手間がかかるので、それなりの時間が必要なのですね。  曲の変更だと、今回はバンドの生演奏なので、そちらの練習もいります。  新感線の場合、アンサンブルのみんなが何役も演じているので、着替えも大変です。シーンを短くするのはいいのですが、それによって着替えが間に合わなかったりすることもある。装置の転換の都合や照明の変更もある。そういう様々な事象が絡み合っているので、カットするにも各部署が一斉に確認できる時間がいるのです。  おおがかりな芝居になっている分、扇町ミュージアムスクエアやシアタートップスでやっていた時のような小回りはきかなくなっているのでしょうね。  整理した分凝縮された上に、大阪のお客さんのノリもあり、とてもいい初日が迎えられました。  今回の舞台は京都と堺が中心ですし、豊臣秀吉や石田三成など大阪に縁深い人物も登場している。大阪での公演はまた一段と盛り上がるのではないかと思います。  特にこの『五右衛門ロック』シリーズでは、クライマックスで変装していた五右衛門が正体を明かして名乗りを上げるシーンと、そこからの流れでメインキャラクター達が悪役に向かって見得を切るシーンで、客席の温度がグッと上がって自然に拍手がわきます。  水戸黄門の印籠というか、必殺シリーズの殺しのシーンというか、これがなければこのシリーズではないという、お約束のクライマックスになっているのですね。  でも、このお約束シーンが生まれたのは、ほとんど偶然なんです。  シリーズ第一作の『五右衛門ロック』を書いていたのは、アニメ『天元突破グレンラガン』に携わっている時期でした。  この作品に登場するカミナというキャラに、毎回七五調の口上を言わせてほしいという注文が監督から来ました。僕自身は、そういう七五調の名乗りなどに飽きていた時期だったので、最初は「こんな感じですかね」と探り探りやっていた。今の若いアニメ視聴者にこういう大時代的な口上がどう受け取られるのか心配な部分もあった。  ところが書いてみると楽しかったし、お客さんも想像以上に喜んでくれた。やっぱり七五調で言い切る気持ちよさっていうのは、世代を超えてあるんだなと思いました。  そんな時期に『五右衛門ロック』を書いたので、悪役達の策略から五右衛門一党が大逆転するシーンで、思わずそれぞれの見得切りを入れてしまったんですね。その場面を書くまではそんなことをするつもりはなかったのに、ほとんど筆の勢いでした。 「まあ、自分が気持ちいいからいいか」と思っていたのですが、『五右衛門ロック』のプレビュー、初めてお客さんの前で上演した時、クライマックスシーン、五右衛門が変装を解いて正体を明かした場面で客席から拍手がわき、その辺から客席の温度がグングン上がっていくのがわかりました。そして、森山未來、松雪泰子、江口洋介、古田新太という面々が順に名乗りを上げていく時には、大喝采だったのです。  カーテンコールでは、新宿コマ劇場2000人のお客さんが一斉にスタンディング・オベーションになり、僕やいのうえの方が「この芝居、そんなに面白いですか?」と慌てたくらいでした。  逆境に追い込まれた善人が、ヒーローに救われて、大見得を切る。定番中の定番ですが、その定番も、キチンとやると、こんなに楽しんでくれるんだということを、お客さんに教えてもらった。  そして、こういう大活劇の王道の今の感覚でやるとしたら、新感線ほどふさわしい劇団はないと、改めて実感したのですね。  こうして『五右衛門ロック』はシリーズ化となったのです。
2/8
笑顔で迎えた『ZIPANG PUNK』東京公演千秋楽
笑顔で迎えた『ZIPANG PUNK』東京公演千秋楽
『ZIPANG PUNK ー五右衛門ロックⅢー』東京公演が無事に終了しました。  千秋楽はとてもいい天気で、シアターオーブのロビーからは真っ白に雪化粧した富士山がくっきりと見えました。  公演が終わってから夕焼けの富士山を眺めていると、一分ごとにその表情が変わっていって、とても美しい光景でした。  この景色ともお別れなのは残念ですね。  前回も書いたとおり、最後の一週間はあっという間でした。  20日に中打ち上げがあったので顔を出した後いろいろあって、結局劇場に行けたのは千秋楽だけでした。  演出のいのうえひでのりも、「12月までは、まだあと一ヶ月あると思ってたけど、1月に入ってからは早かったな」と言っていたので、僕だけの感覚ではないのでしょう。  去年の夏、「ああ、『五右衛門』の台本書かなきゃなあ」と焦っている頃、電車に乗ると、しょっちゅうにっこり笑っている蒼井優さんと目が合っていました。  もちろん本人が電車に乗っていたわけじゃありません。ビールの広告です。電車のドア辺りに張ってあるシールの広告があるでしょう。吊革につかまって前を見ると、あれがちょうど目線に来る。  とってもいい笑顔で優さんがビールを勧めてくれているのですが、その笑顔が僕には「台本まだ?」と言っているように思えて、「ごめんなさいごめんなさい、がんばりますから待っててください」とむやみに申し訳ない気持ちになったものです。  その同じ銘柄のビールのCMをこの年末年始にやっていたのですが、もう大丈夫。優さんの姿を見るとむしろ「身体に気をつけて、最後までがんばってね」と暖かい気持ちになるのですから、人間というのは勝手なものですね。  千秋楽の日、舞台裏で三浦春馬くんに会ったので「大丈夫? 疲れてない?」と聞くと、「元気です。(千秋)楽だから」とにっこり笑って答えてくれました。半分は気合いだったのでしょうが、その日の本番中に、普段はやっていなかった後方宙返りを決めていたので驚きました。客席からも「おお」という声があがっていたな。若さってすごいですね。  公演終了後、役者たちを中心にした打ち上げがありました。  その席で、シャルル役の浦井健治くんを見ていたある人間が、ポツリと「ああ、よかった。浦井健治に戻ってる」とつぶやきました。  本番中の浦井くんは、たとえ楽屋でも、何をしゃべってるんだかよくわからなかったそうです。  シャルルという役のまんまだったらしいのですね。  仮にも紀伊国屋演劇賞までもらっている俳優です。よそにいけばシェークスピア芝居の大役をまかされる男なのに、大丈夫か、浦井健治。いや、それだけ役に没入してくれれば、こちらとしてはありがたい限りなのですが、彼の演劇人人生に悪い影響が出なければよいがと、ちょっとだけ心配です。  でも、舞台の上のシャルルはとてもチャーミングで、どんな瞬間も生きている喜びに満ち満ちていて、ま、多少満ち満ちすぎている時もありますが、それも含めて、凹んだときにシャルルの姿を思い出せば、多少のいやなことは乗り切れそうな気がします。   そう思わせてくれるだけ、たいしたものだと思います。  2月6日からは大阪公演が始まります。  関西のみなさんとお会いできるのを楽しみにしています。
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日本一のお祭り騒ぎはまだまだ続く
日本一のお祭り騒ぎはまだまだ続く
はやいもので『ZIPANG PUNK ー五右衛門ロックⅢー』の東京公演も、あとわずかとなりました。  去年の12月19日に始まったので、東京だけでも40日近くある長い公演ですが、今までの経験上「始まるとあっという間に感じるかもしれない」とも思っていましたが案の定でした。  もちろん、こちらは観ているだけですので、実際に毎日公演を行っているキャストやスタッフにしてみれば、そんなにのんきなことは言っていられないかもしれません。  風邪もはやっているし、疲れもたまっています。  とりあえず1月27日の東京千秋楽まで、みんな無事に本番をつとめてくれることを願います。
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大雪の成人の日に
大雪の成人の日に
成人の日、東京では驚くほどの雪が降りました。  朝はまだみぞれだったのですが、10時頃には雪が積もり始め、あっという間に一面、銀世界に。  上京してきてもう35年になりますが、東京で昼間のうちにこんなに積もったのは初めてのような気がします。  爆弾低気圧が接近しているとニュースで言ってたのに、甘く見ていました。昨年の夏、ゲリラ豪雨にあれだけ驚いたんだから、それが雪になればこうなるのも当然ですよね。  でも、関東の新成人のみなさんはかわいそうでしたね。せっかくの晴れ着なのに雪で濡れるし、自動車の移動も大変だし、おまけに次々に電車が止まるのを見ていると、会場までたどり着くのも一苦労じゃないかと、家内が心配していました。去年、我が家では娘の成人式を迎えたので、なおさらリアルに想像できたのでしょう。  夕方になっても、まだまだ雪がやむ気配はありません。10センチは積もっている感じです。  日のあるうちに玄関前だけでもきれいにしておかないと、明日の朝が大変だなと、雪かきを始めました。  スコップをつっこみ持ち上げようとすると、想像以上にずっしりとくる。重い雪です。湿気をたっぷり含んでいる。そのせいで積もりが早いのでしょう。  たった30分くらいですが、息が荒くなります。運動不足ですねえ。  北国の人たちはこれ以上のことを毎日やってるのか。大変だなあと思っていると、道の向こうから母娘連れが歩いてきているのに気づきました。  成人式からの帰りなのでしょう。傘を差し、積もった雪に足を取られないようにゆっくり歩いてきます。  娘さんは晴れ着姿なのですが、帯や着物を濡らさないようにビニールを肩からかけて、裾も雪にふれないようにたくしあげています。  せっかくの晴れ舞台なのに悔しいことでしょう。思わず雪かきの手を止めて「たいへんですね。がんばってください」と声をかけました。  いきなり見知らぬおじさんに話しかけられて驚くかなと思いきや、娘さんは晴れ晴れとした笑顔で「ありがとうございます」と返事をしてくれました。  その一瞬だけ日差しが見えたような、いい笑顔でした。  こんな大雪だけど彼女にとってはやっぱり大切な一日なんだろうなあと思わせる表情に少し力をもらったような気がして、いい気分で雪かきを続けることができました。  まあ、翌日、腰と背中が張って辛かったのには閉口しましたが。
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