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堂本光一、国内演劇単独主演記録2018回達成で1位に “SHOCK”後輩たちに背中見せ走り続けた25年
堂本光一、国内演劇単独主演記録2018回達成で1位に “SHOCK”後輩たちに背中見せ走り続けた25年
4月9日の「Endless SHOCK」公開通し稽古(ゲネプロ)より。堂本光一による計4回のフライングのラストは独自の“傘フライング”で美しく魅せる(撮影/松永卓也・写真映像部)   「SHOCK」シリーズで国内ミュージカル単独主演記録を更新しつづけている堂本光一が、5月9日、ついに森光子さんが『放浪記』で打ち立てた記録を超え、国内演劇の単独主演単独1位となる2018回を達成した。 2000年11月に当時21歳の堂本光一が帝国劇場史上最年少の座長を務めて以来、毎年上演されてきたこの前人未踏のエンターテインメント作品は、今年11月をもって終幕する。AERA 2024年5月13日号より。 *  *  * 「21歳のときに帝国劇場で初めて『SHOCK』の幕を開けさせていただきました。帝国劇場が改修工事に入るということで、この作品はずっと帝劇とともに歩んできた作品ですので今年をもって幕を閉めるという決断をいたしました」  4月9日、「Endless SHOCK」の公開通し稽古を終えた後、堂本光一は改めてそう報告した。ラストイヤーに突入した「SHOCK」シリーズは4月22日の公演で2千回を達成。そして5月9日、ついに国内演劇における単独主演記録を塗り替え単独1位となった。  2020年、コロナ禍において堂本は感染リスクを減らすために新たなSHOCK作品「Eternal」を立ち上げた。本編のストーリーの3年後、カンパニーがコウイチとのエピソードを構想するスピンオフ的な内容だ。2024年は本編に加え、帝劇の前半戦は「Eternal」も上演。「SHOCK」シリーズは最後まで全力で走り続ける。  舞台はショービジネスの中心地であるニューヨーク・ブロードウェイ。頂点を目指し続ける若きエンターテイナー、コウイチ(堂本)とそのカンパニーが運命を駆け抜けるなかで、「Show Must Go On!」という言葉の意味を問い続ける。  4メートル以上の階段から転げ落ちる階段落ち、客席上空を舞う華麗なフライング、鬼気迫る殺陣、迫力満点の和太鼓の演奏といった名物シーンの数々。そして、カンパニーの絆、仲間との友情、不屈の精神、ピュアな恋心といった人間ドラマが凝縮されたストーリーを直接目にできるのもあと約7カ月。 SHOCK名物ともいえる“階段落ち”。堂本光一が20段以上を勢いよく転がり落ちるさまは圧巻で息を呑む。4月9日の「Endless SHOCK」公開通し稽古(ゲネプロ)より(撮影/松永卓也・写真映像部)   後輩に見せてきた背中  エンタメに夢を託し続けるコウイチにはやはり長年エンタメを進化させ続けてきた堂本の姿が重なる。この24年間、堂本がエンターテイナーとして歩を進めれば進めるほど、コウイチが夢を追いかける姿が生き生きとし、説得力を帯びていった。  本編後半、コウイチはこう口にする。 「走りつづける背中を見せることが、みんなを繋げることだと思っていた。でも、みんながいたからこそ、走り続けることができた。おまえたちの夢はこれからだ」  ライバル役を演じた佐藤勝利を始め、多くの後輩たちに背中を見せ続けてきた堂本。「Show Must Go On!」が意味するものとは、自らが歩みを止めないことでもあり、後続にエンタメとは何たるかを継承することでもあるのだろう。 (ライター・小松香里) ※AERA 2024年5月13日号
堂本光一
AERA 2024/05/09 18:00
堂本光一「打ち上げ花火のように」 「SHOCK」ラストイヤーついに開幕
堂本光一「打ち上げ花火のように」 「SHOCK」ラストイヤーついに開幕
4月9日の「Endless SHOCK」公開通し稽古(ゲネプロ)より。堂本光一による計4回のフライングのラストは独自の“傘フライング”で美しく魅せる(撮影/松永卓也・写真映像部)   「2024年、この『SHOCK』、ラストイヤーというふうに考えております。自分が21歳のときに、帝国劇場で初めて『SHOCK』の幕を開けさせていただきました。そこから25年目。帝国劇場が改修工事に入るということで、この作品はずっと帝劇とともに歩んできた作品ですので、今年をもって幕を閉めるという決断をいたしました」    4月9日。2幕で2時間半を超える舞台「Endless SHOCK」の公開通し稽古を終えた堂本光一は、充足感に満ちた顔つきで、改めてそう報告した。 SHOCK名物ともいえる“階段落ち”。堂本光一が20段以上を勢いよく転がり落ちるさまは圧巻で息を呑む。4月9日の「Endless SHOCK」公開通し稽古(ゲネプロ)より(撮影/松永卓也・写真映像部)    初演は2000年11月。帝国劇場史上最年少の座長として当時21歳の堂本光一が帝劇初出演・初主演を務めて以来、毎年上演し続けてきた「SHOCK」シリーズ。2025年2月に現・帝国劇場がクローズするにあたって、2024年11月の公演をもって「SHOCK」シリーズも終幕する。4月11日から「Endless SHOCK」本編と、その3年後を描くスピンオフ「Endless SHOCK-Eternal-」を同時上演するにあたり、堂本をはじめとするキャストによる開幕記念会見と公開通し稽古が行われた。 4月11日に開幕する「Endless SHOCK」本編と、その3年後を描くスピンオフ「Endless SHOCK-Eternal-」。同時上演にあたりキャストによる開幕記念会見が行われた。左から、中村麗乃、島田歌穂、佐藤勝利、堂本光一、前田美波里、越岡裕貴、松崎祐介(撮影/松永卓也・写真映像部)    記者会見に現れた堂本は「SHOCK」シリーズのラストイヤー開幕を前に「いつも通りに稽古をやって、いつも通りに幕が開くのではないでしょうか。(ライバル役の佐藤)勝利も直前まで舞台をやっていたが頑張ってくれた。良いかたちで本番を迎えられると思う」と口にし、最後ではあるが、あくまでもいつも通りであると強調した。 劇中劇の「ジャパネスク」パートでの激しい殺陣も毎回の見どころ。鬼気迫る表情の佐藤勝利(左)と堂本光一。4月9日の「Endless SHOCK」公開通し稽古(ゲネプロ)より(撮影/松永卓也・写真映像部)   コウイチ(堂本光一)が率いるカンパニーがショーを続けるオフ・ブロードウェイの劇場のオーナーを演じる前田美波里。4月9日の「Endless SHOCK」公開通し稽古(ゲネプロ)より。島田歌穂とのWキャスト(撮影/松永卓也・写真映像部)   2013年からオーナー役を務めてきた前田美波里が「今年は初心の気持ちを忘れずに1回1回丁寧に演じたい。寂しいです」といって泣き真似をすると、「泣いてますか?」と反応したレポーターに、堂本が「松崎(祐介)が泣いてます(笑)」と言って、共演者であり事務所の後輩であるふぉ~ゆ~の松崎に話を振り、「家族のような」と堂本が表現する、気心の知れた間柄だからこそのやりとりが展開された。   ラストイヤーを前に前田美波里の「寂しいです」というコメントを受けて「松崎(祐介)が泣いてます」という堂本光一の無茶振りにも、即座に対応するふぉ~ゆ~の松崎(右)と越岡裕貴。「Endless SHOCK」開幕記念会見より(撮影/松永卓也・写真映像部)    ライバル役が3年目を迎えた佐藤勝利は、「15歳の時に初めて見た『Endless SHOCK』が自分にとって初めてのエンタメ。右も左もわからなかった状態から光一くんに憧れて、『Endless SHOCK』ラストイヤーで役として光一くんと肩を並べさせてもらえるのは光栄です。一生懸命頑張ります」と気合を見せる。 堂本光一(左)と佐藤勝利が、立ち位置を次々に入れ替えながら太鼓を叩く終盤のパフォーマンスも圧巻。4月9日の「Endless SHOCK」公開通し稽古(ゲネプロ)より(撮影/松永卓也・写真映像部)   これを受け、「ラストイヤーという感覚はない」「不思議な感覚」と語った堂本は、「ありがたいことに大阪公演も博多公演もあり、11月にはまた帝劇に戻ってきます。2000年に打ち上げ花火が上がるように『MILLENNIUM SHOCK』が始まったように、打ち上げ花火のようにいっぱいやろうということで、たくさん演じさせていただきます。みなさんにまず感謝をしたい」と、2024 年4月22日の公演でついに 2000 回を達成し、5月9日には、国内演劇における単独主演記録2017回を超え2018回を達成し、単独1位となる見込みの前人未踏の作品を支えてくれた人たちに対して感謝を述べた。 堂本光一作・構成・演出・主演の「Endless SHOCK」開幕記念会見で、佐藤勝利が所属する「timelesz」オーディションの話題に。「意外と赤いバラも似合うぜ」とアピールする堂本光一に恐縮する佐藤(撮影/松永卓也・写真映像部) 堂本光一作・構成・演出・主演の「Endless SHOCK」開幕記念会見。左から、佐藤勝利、堂本光一、前田美波里(撮影/松永卓也・写真映像部)   「ラストイヤーの実感はまだ持てていません。お客さんもそうですが、自分も一つひとつのシーンを目に焼きつけながら、みんなとの時間を大事にしながら、いつも通りのSHOCKの世界でとりあえずここから2カ月生きられるのは嬉しいことです」と感慨深そうに会見を締めた堂本。   続く通し稽古では、階段落ち、客席上空のフライング、殺陣等、「SHOCK」シリーズ恒例の体を張ってのエンターテインメントが次々と披露された。「SHOCK」シリーズの信念であり、堂本自身の軸でもある「SHOW MUST GO ON!」という言葉の意味を問い続ける唯一無二のショウが展開され、有終の美に向けてのカウントダウンが始まった。 冒頭の堂本光一のフライング。美しく宙を舞う姿は、鍛えた筋肉があってこそ。4月9日の「Endless SHOCK」公開通し稽古(ゲネプロ)より(撮影/松永卓也・写真映像部)   5月7日発売予定の「AERA」5月13日号には、本記事とは異なる、この公演の写真とレポートを掲載予定だ。 (ライター・小松香里)   *「AERA」オリジナル記事
堂本光一SHOCK
AERA 2024/04/10 12:15
堂本光一×佐藤勝利 ふたつの「SHOCK」誌上レポート “Show must go on”にかける思い
堂本光一×佐藤勝利 ふたつの「SHOCK」誌上レポート “Show must go on”にかける思い
※写真はイメージ(gettyimages)  堂本光一主演の「SHOCK」シリーズは4月9日から「Endless SHOCK」の配信が始まり、4月10日からは「Endless SHOCK -Eternal-」が東京・帝国劇場で幕を開けた。同時期に二つの作品を上演する異例の試みだ。AERA 2022年5月2-9日合併号から。 *  *  *  KinKi Kidsの堂本光一が主演を務めるミュージカルシリーズ「SHOCK」は、2000年の公演から始まった。当時、堂本は21歳、帝国劇場史上最年少の座長だった。  以来、SHOCKは20年以上にわたり上演され、20年には作・構成・演出・主演を務める堂本光一がその功績で第45回菊田一夫演劇賞大賞を受賞した。21年までの通算上演回数は1851回にものぼる。  20年はコロナ禍により上演中止を余儀なくされたが、インスタグラムでライブを行ったり、無観客で撮影した映像を映画「Endless SHOCK」として映画館で上映したりするなど、さまざまな試みを続けてきた。  そして、22年、「SHOCK」はまた進化を遂げる。「Endless SHOCK」本編を新キャストと共に無観客で配信し、20年にニューノーマルの状況下で打ち出したスピンオフ「Endless SHOCK -Eternal-」を東京・帝国劇場で上演した。同時期にふたつの「SHOCK」を発表したのだ。 「SHOCK」には、故ジャニー喜多川氏がエターナル・プロデューサーとしてクレジットされている。彼のモットーであった「Show must go on!」がそのまま、作品に通底するテーマでもある。  4月9日に配信がスタートした「Endless SHOCK」本編は、繁栄と衰退を繰り返すショービジネスの中心であるニューヨーク・ブロードウェーで、荒波に揉まれながら頂点を目指す若きエンターテイナー・コウイチを主人公にした物語だ。 ダイナミックな殺陣  帝国劇場での公演では幼なじみでありライバルでもあるショウリをSexy Zoneの佐藤勝利が、コウイチを擁するカンパニーのオーナーを前田美波里が、オーナーの娘・リカを綺咲愛里が演じている。  コウイチとショウリの気持ちがぶつかり合う、ダイナミックな殺陣は必見だ。激しさの中にも美しさがあり、見ている側も息をつく暇もない。スピーディーな殺陣と、高さ4.8メートルからの「階段落ち」は、言わずもがなの迫力だ。堂本にとっても本編は2年ぶり。会見では、「やはりとてもきつかったです」と言ったものの、手応えを感じたようで、「ブランクはなかった。まだまだ落ちられますね」と満足そうな表情を浮かべた。  物語では、大きな困難に直面しながらも、ショーへの信念を燃やし続けるコウイチの姿が描かれる。それは、コロナ禍においても、エンターテインメントの火を灯し続けるために、奔走してきた堂本光一自身の姿と重なる。 人生を変えた舞台  これまでは、年ごとの相手役によって変えてきた相手役のテーマ曲を、今後の使用も想定し、新曲「MOVE ON」としたのも新しい試みだ。堂本にとってのライフワークである「SHOCK」シリーズを、より強固なものにしていこうという決意を感じた。 「MOVE ON」は、華やかでありながら、ショウリの内面が燃えていることを感じさせる楽曲だ。途中、挿入される「それでも俺は走りたいんだ」という力強い言葉が印象に残った。 14歳でジャニーズ事務所に入所した佐藤にとって、「SHOCK」は初めて直に観たエンターテインメントであり、人生を変えた舞台でもあるという。 「最初に光一君に『殻を破らなきゃいけない』とか『泥臭い部分を見せなきゃいけない』というようなことを言ってもらって、それを目指して今日までやってきました」  そう率直に語り、初披露となる「MOVE ON」について、「歌詞にもあるが、声をからすぐらい想いを込めて歌うようにしている」と語った。その言葉通り、歌声からはヒリヒリとした切実さが伝わってきた。  一方、4月10日から帝劇で満席の観客の前で上演される「Endless SHOCK-Eternal-」は本編のストーリーの3年後を舞台にし、カンパニーがコウイチとのエピソードを回想するスピンオフ的な作品だ。  20年から上演される「Eternal」は、新型コロナウイルスの感染リスクを低減するため、客席上空のフライングを無人の舞台上空でのパフォーマンスに変更し、殺陣はストップモーションや映像を使用、舞台セットもシンプルにしている。 走り続ける意味とは  今回は演出をさらにブラッシュアップし、舞台上のオーケストラが舞台下のオーケストラピットに据えられ、舞台上の自由度が上がった。  序盤、コウイチが「ショービジネスの世界では“Show must go on!”という言葉をよく耳にします。皆さんにとって、“Show must go on!”の、走り続けるという意味とは何でしょう?」と問いかける。  そして、まだ自らが生きていた3年前のブロードウェーにおける「仲間たちとともに明日の未来を夢見ていたあの頃」を回想する。  舞台上空に赤い車が舞い、ショービジネスのきらびやかな世界が描かれる中で、コウイチが「僕らの夢は終わらない」と歌う。コウイチとショウリの激しい殺陣はもちろん、カンパニー全体での大人数での殺陣も見どころだ。  1幕の終盤ではコウイチが“Show must go on!”の本当の意味と対峙する。「つまずき、立ち止まって新たに踏み出す勇気。そこに答えがあるはずだ。何があってもショーを続けなければいけない」と決意を新たにする。 やっぱりぼくはドM  2幕では、コウイチが生と死の狭間を彷徨(さまよ)うさまを描いた「Dead or Alive」があり、かつてのコウイチの映像を巧みに挟み込みながら、ショウリやカンパニーのコウイチを失った心情が描かれていく。カンパニーの気持ちが徐々にひとつになっていき、そこにコウイチも加わり、「エンターテインメントは永遠に生き続ける」という堂本自身の信念を体現するような芝居が展開される。赤い幕をまとっての舞台上空の華麗なフライングも素晴らしかった。  本編と「Eternal」両方を観ることにより、「SHOCK」に込められた物語やメッセージがより強く伝わってくる。  コロナ禍を機に、国内での大規模なライブ興行はストップした。その後、無観客の配信ライブが主となる時期があり、徐々に配信ライブと有観客ライブ両方を行うというハイブリッドに移行していった。その状態がこの先もしばらく続くと予想されている。  そのなかで、今回の「SHOCK」は前述した通り、同時期に全く違う内容の公演を配信と劇場での上演で届けるという意味で、異例の試みだ。 「みんながてんやわんやの状態で、誰がこんなことをやろうと言い出したのか(笑)。やっぱり、ぼくはドMなんです。追い込まれて燃えるんです」  そう、堂本は笑顔で語った。 夢と希望を感じさせながら、悲しみも痛みもあり、ショービジネスの光と影を鮮烈に描いた二つの新しい「SHOCK」。20年以上にわたって最前線を走り続ける堂本光一という希代のエンターテイナーの新境地を、ぜひ見届けてほしい。 (ライター・小松香里) ※AERA 2022年5月2日号-9日合併号
AERA 2022/04/29 11:30
堂本光一が作る新たな“ショー・マスト・ゴー・オン” 「Endless SHOCK」が動き出した
堂本光一が作る新たな“ショー・マスト・ゴー・オン” 「Endless SHOCK」が動き出した
※写真はイメージ(gettyimages)  2月下旬にコロナ禍で公演中止を余儀なくされた「Endless SHOCK」が、ついに動きだした。9月15日に大阪・梅田芸術劇場で開幕したのは「あれから3年後」を描いた舞台だ。AERA 2020年10月12日号に掲載された記事を紹介する。 *  *  *  堂本光一(41)のライフワークである主演舞台「SHOCK」シリーズ、その記念すべき20周年となる今年の「Endless SHOCK(エンドレス ショック)」帝国劇場公演は2月下旬、コロナ禍により公演途中での中止を余儀なくされた。ダンスにアクロバット、激しい殺陣に客席上空を舞うフライング……SHOCKという作品の醍醐味であるこれらの特性を考えると、公演続行は観客や共演者にとってあまりにも危険と考えた光一の素早い決断からだった。それから半年後の9月15日、SHOCKは大阪・梅田芸術劇場で、新たな構成・演出のスピンオフ舞台「Endless SHOCK ─Eternal─」となって再び動きだした。開幕前日の会見で光一は、キャスト全員が子細な感染症対策ガイドラインを厳守してステージに立つことを強調した。 「まだ油断の出来ない状況の中で、SHOCKで何が出来るのかを考えました。準備してきたものを思い切ってやらせていただきます」(光一)  俳優陣の発声による飛沫を考慮し、ステージ前のオーケストラピットは空のままに、オケはステージ奥の段上へと移された。開幕してすぐに聴こえてきたのは、コウイチ(光一)、タツヤ(上田竜也)、リカ(梅田彩佳)、オーナー(前田美波里)ら、ブロードウェーのショーカンパニー全員が揃う“SHOCK本編のラストシーン”のメロディーだ。物語はそのラストから3年後、ショーの最中に命を落とし、さまよい続ける魂が果てるまでパフォーマンスを続けたコウイチのことを、仲間たちが回顧する形で展開する。過去の出来事、つまりSHOCK本編のさまざまなシーンが、演出をわずかに変化させて次々と繰り出されていく。主に、コウイチを殺めてしまったタツヤ、コウイチを想い続けるリカ、そしてオーナーが当時と現在(3年後)を行き来しながら、それぞれの思慕や悔恨を語っていく構成が面白い。  会見で上田は「SHOCK本編の魅力をギュッと詰めて、なおかつ新しい試みをしています。過去の自分と今の自分、その表現の切り替えがすごく難しかった」と振り返り、前田は「今回、自分の役についてたくさんの肉付けが出来た。またいつものSHOCKに戻った時に、もっと役が膨らむのでは。すごい経験をさせていただきました」と自信の笑みを見せた。梅田は、「リカの気持ちを原稿用紙5枚に書いてきて」という光一の悪戯っぽい依頼に対し、本当に詳細な胸の内を綴ったという。 「リカはコウイチさんが亡くなった後、どんな感じで過ごしていたんだろう……と思っていたので、今回の舞台で、あ、こんなふうに思っていたんだなって答え合わせが出来た気がします」(梅田)  舞台の大きな見どころであるコウイチの“階段落ち”や、怒声飛び交う熾烈な戦闘シーンの実演はなく、舞台前面に下ろされた紗幕や舞台後方のホリゾントにそれらのシーン映像が流された。大階段の上に立つタツヤの目線から見たコウイチの表情など、これまでにない新鮮な光景が映し出されて興味をそそる。荒々しい立ち回りシーンを映すと同時に、ステージでは俳優陣がストップモーションやスローモーションで戦闘イメージを表すなど、緩急を重ねて見せる演出も効いていた。 「大人数がかなりの至近距離で斬り合う戦いのシーンは、やっぱりリスキー。リアルな出来事ではなく誰かの記憶の中という表現なので、映像を使ってリスクを回避しました。ただ一対一での殺陣は、いつも通りのスピードで表現しています」(光一)  その言葉通り、コウイチとタツヤの対決シーンは、本編に劣らぬ緊迫のぶつかり合いに息をのんだ。太鼓の競演も変わらぬ迫力で興奮をあおる。さらに嬉しい驚きは、当初はやらない予定だったコウイチのフライングの登場だ。客席上空を飛ばなければ可能であることがわかり、真紅のリボンを腕に巻きつけて飛ぶリボンフライング、傘を掲げて回り舞うフライングをステージ上空で披露。やはり“SHOCKといえばフライング”。制限のある中でこれを観客に届けられたことは、カンパニーにとっても大きな喜びに違いない。  それぞれの楽曲の振り付けはほぼ本編そのままに、キレのあるダンスや艶やかな群舞を堪能。休憩なしの2時間で、本編の見どころをまんべんなく味わい、さらに新たな台詞やシーンも楽しめるという充足感たっぷりのステージに仕上がっていた。この公演を続けるために、光一は「とにかく袖にハケたら、手も、脱いだ衣装もすぐに消毒」「楽屋に行くエレベーターは4人までしか乗れないので、やっと着いた時には休憩が終わる」「外食禁止なので夜ご飯は毎日お弁当」と、裏での努力を笑いを交えて語っていた。SHOCKの根幹にあるテーマは“ショー・マスト・ゴー・オン”。今、光一はこの言葉を新たに解釈し、公演に臨んでいる。 「今大事なのは、どんなに小さいことでも何かがあった場合には、すぐに幕を閉めること。そうしなければ、また幕を開けることが出来なくなってしまうと思う。そういう意味でのショー・マスト・ゴー・オンだと、僕は今、認識しています」(光一)  一回、一回に座長の覚悟を込め、“永遠なるSHOCK”は千秋楽を目指す。また新たな年のSHOCKへとつなぐために。 (ライター・上野紀子) ※AERA 2020年10月12日号
AERA 2020/10/10 11:30
「愛する者にリスクを負わせない」 堂本光一、コロナ禍で「SHOCK」公演中止の英断
塩見圭 塩見圭
「愛する者にリスクを負わせない」 堂本光一、コロナ禍で「SHOCK」公演中止の英断
20年3月20日、再開を予定していた帝国劇場での公演中止が発表された (c)朝日新聞社  堂本光一さんが菊田一夫演劇賞大賞に選ばれた。20年にわたり、「SHOCK」シリーズを率いてきたことが評価された結果だ。AERA 2020年6月1日号掲載の記事で、その魅力と歴史を振り返った。 *  *  *  4月27日、堂本光一さん(41)が舞台「SHOCK」シリーズを20年にわたり牽引してきた功績により、第45回菊田一夫演劇賞大賞に選ばれたと発表された。現在の総上演回数は1760回。日本の演劇界で、同一演目の単独主演では森光子さんの「放浪記」の2017回に次ぐ記録だ。 “生みの親”ともいえるジャニー喜多川さん亡き後に迎える20周年──。2020年は「SHOCK」にとって特別な年だ。  映画・演劇評論家の萩尾瞳さんは今年2月初旬、「Endless SHOCK」を観劇した。 「一人で責任を背負う心細さと自由さ、そして20年の意気込みを堂本さんから感じた。ある種、完成形を見たと思った。彼は主役・演出など、舞台人としての役割を全方位的に果たすことができる稀有な存在だと思う」  しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、「SHOCK」は2月28日に公演を中止した。そして再開を予定していた3月20日朝、夜の公演中止を急遽発表。その後、31日までのすべての公演を中止すると発表し、東京・帝国劇場における今年の「SHOCK」は幕を閉じた。  堂本さんは舞台の公式インスタグラムで「今回の中止は自分の意向が強いです」と伝えている。 「SHOCKは全国から多くのお客様が集まります(略)そしてキャストだけでも50人 作品の特性として終始息を切らしながら地面も這いつくばり 演者同士近距離で発声し続けます フライングもお客様の近くに行く事になります」「今はまず何よりも第一に考えなくてはならないのは(略)感染を広げてはならないという事です そして愛するファンの方や愛する共演者にリスクを負わせて舞台に立たせる事は今の状況で自分にはできません」 「SHOCK」は、ブロードウェーを目指す若者たちが切磋琢磨し、ときにはぶつかりながら成長していく物語だ。堂本さん演じる主人公のコウイチは「ショー・マスト・ゴー・オン(何があってもショーは続けなければならない)」を信条にカンパニーをまとめている。圧倒的なスター性を持ち、最高のエンターテインメントを作るため、ストイック過ぎるほど真っ直ぐに舞台に向き合う。その姿は、堂本さん自身にも重なるものがある。  2000年の初演時、堂本さんは21歳。帝国劇場の当時最年少座長だった。伝統のある帝劇で若いアイドルが主演を務めることに批判の声もあったが、「黙らせてやる」という気持ちで挑んだと本誌のインタビューで語っている(20年2月10日号)。  座長として前に立ち、決断しなければならないときもあった。帝劇開場100周年となった11年の3月11日、昼の部の幕間に東日本大震災が発生。28公演が中止となった。  15年には舞台装置が倒れ、出演者やスタッフら6人がけがを負う事故もあった。だが翌日には公演を再開。堂本さんは公演の冒頭で「あってはならない事故が起きてしまった」と述べ、「幕を開けることで批判を受けるかもしれないとも思いましたが、起きたことをしっかり受け止め、また一歩を踏み出すことも大切と思い、幕を開くことにしました」と語った。  舞台は生ものであり、何が起きるかわからない。だがこの20年、堂本さん自身の事情で公演が中止になったことは一度もない。高さ4.8メートルの大階段を転落する「階段落ち」、命綱をつけず腕の力だけで体を支える「フライング」、舞台上で入り乱れる激しい殺陣やダンス。これを約2カ月間、ときには1日2回公演で続ける。  05年以降は演出・脚本・音楽などのステージ面の指揮をジャニーさんに委ねられ、本質的なストーリーはそのまま、演出を進化させてきた。前出の萩尾さんはこう語る。 「初演から観続けていますが、キャラクターを明確化するためにミュージカルナンバーやコーラスを増やしたり、舞台上のポジショニングを変えたりするなど、毎年何かしらの進化が見られる。堂本さんがいろいろなものを見て聞いて吸収し、勉強してきたことがわかる。18年に『ナイツ・テイル─騎士物語─』で演出家のジョン・ケアードと仕事をしたことも大きいのでしょう。20年間、毎年即日完売する公演のカンパニーを引っ張っていくのは並大抵のことではない」  公演中止後も、堂本さんは「今自分にできること」を模索している。3月22日には舞台の公式インスタグラムで「SHOCK」の一部を約3時間にわたって生配信、視聴者は延べ40万人を超えた。  受賞後の5月2日には本人いわく「上だけ」黒のスーツを着用し、改めて受賞の感謝と現状の気持ちについて、率直に話した。 「何ができるかなあ、と毎日考えています。それが100個考えたところで、形にできるものは1個できたらいいほうだと思いますよ。でもエンターテインメントってそういうものだと思うんですよ。(略)明日がどうなるかわからない時代なので、毎日刻々と状況が変わるしね、そこを敏感にとらえて生きていかなきゃいけないかなと思います。(略)きっとここを乗り越えたときに、さらに何かいいものが待っていると自分は信じています」 (編集部・塩見圭) ※AERA 2020年6月1日号
新型コロナウイルス
AERA 2020/05/27 11:30
堂本光一「お宝写真」で振り返る舞台「SHOCK」の20年!総勢75人のジャニーズユニット「Twenty☆Twenty」の豪華顔ぶれも「週刊朝日」で一挙12ページ掲載!
堂本光一「お宝写真」で振り返る舞台「SHOCK」の20年!総勢75人のジャニーズユニット「Twenty☆Twenty」の豪華顔ぶれも「週刊朝日」で一挙12ページ掲載!
週刊朝日6月5日号 表紙は堂本光一! ※アマゾンで予約受付中!  今年20周年を迎えた舞台「SHOCK」シリーズで座長を務め、その功績が認められ菊田一夫演劇大賞を受賞した堂本光一さん。本誌はその記念として、「Endless」に駆け抜けた堂本さんの20年を秘蔵のお宝写真を使った表紙+グラビアで大特集。さらに、ジャニーズユニット「Twenty☆Twenty」のメンバー総勢75人を、過去の「名作表紙写真」とともに5ページで紹介。他にも、未曾有の危機を乗り切るためのアイディアが詰まった「コロナ大倒産時代を生きぬく知恵」、夏の甲子園中止で気になるプロ注目選手たちの将来など、盛りだくさんの内容でお届けします。 *  *  * 「日本一チケットの取れない舞台」と言われるのが、堂本光一さん率いる舞台「SHOCK」シリーズ。総動員数は300万人超、全公演で即日完売を続ける作品は歌やダンス、フライングのほか、22段にも及ぶ“大階段落ち”などを盛り込むミュージカルです。2000年に東京・帝国劇場で初演されて以来、進化を重ねてきた本作の魅力を、これまでの秘蔵写真を7ページでドーンと紹介。21歳で初演した当時の写真や、森光子、市村正親、相方の堂本剛など様々なゲストが舞台に登場したときの記録など、「お宝写真」が次々とグラビアに登場します。グラビア後編では、新型コロナウイルス感染防止支援活動の一貫として急きょ結成されるジャニーズユニット「Twenty☆Twenty」のメンバー総勢75人を、過去の週刊朝日の「名作表紙写真」とともに一挙5ページで紹介。プロデューサーをジャニーズ事務所副社長の滝沢秀明が務め、「Mr.Children」の櫻井和寿がチャリティーソングの作詞・作曲を手掛ける一大プロジェクトの全容を明らにします。 ほかの注目コンテンツは ●太宰治や森鴎外など文豪ゆかりの旅館も倒産へ…コロナ大倒産・失業時代が来る! 全国で緊急事態が解除されましたが、コロナ禍で太宰治、森鴎外らゆかりの老舗旅館が営業を終えるなど、経済に深刻な影響が出てきています。専門家への取材では、緊急事態宣言後2~3カ月が経過した夏ごろから企業の破綻が本格化し、失業者は収束が夏なら160万人、最悪340万人という予想も。そんな事態の中、生き残りをかけて宅配や生産の自動化などで新しいビジネスモデルを生み出そうと奮闘する企業を紹介します。 ●夏の甲子園中止の衝撃!元球団編成担当が語る「スカウト注目選手」の今後 コロナ禍の影響で戦後初めてとなる中止が決まった夏の甲子園。球児にとってもファンにとっても悲劇ですが、「プロ注目」だった選手たちが今後、どのような進路を辿るのかも気になります。そこで本誌はプロ野球・巨人で編成担当を勤めた三井康浩氏にインタビュー。中止が今年のドラフト会議に与える影響などを語ってもらいました。野球評論家の江本孟紀氏は高校時代に同僚の不祥事で春夏の甲子園出場が「幻」になった際の苦労話を明かし、球児たちにエールを送っています。 ●大学合格ランキング「国公私立全82医学部」志願者急減、女子合格者増の理由 本誌の名物企画「大学合格者ランキング」では、国公私立全82医学部への高校ごとの合格者数を大公開。志願者急減で「医学部バブル崩壊」とも言われる事態が起きている理由や、2018年の入試不正問題発覚後、女子の合格者数が2割も増えている実態についても詳しくリポートしています。 ■週刊朝日 http://publications.asahi.com/ecs/24.shtml ※アマゾンで予約受付中!
週刊朝日 2020/05/25 12:46
堂本光一、1732回目のSHOCKへ  2千人足らずなのにドームより「贅沢な空間」とは
堂本光一、1732回目のSHOCKへ 2千人足らずなのにドームより「贅沢な空間」とは
※写真はイメージ(gettyimages)  堂本光一さんが、20周年単独記念公演「Endless SHOCK」をスタートする。今や演出・脚本・音楽までを手がける彼が、舞台にかける想いを語った。AERA 2020年2月10日号から。 *  *  * 「今年もSHOCKの季節がやってまいりました」  ミュージカル「Endless SHOCK」のオープニングを、よくこんな挨拶で始める。2000年の初演から重ねた上演回数は1731回。2月から3月、東京・帝国劇場は「SHOCK」の色に染まる。  初演時は21歳。舞台稽古がなかなか進まず、本当に初日を迎えることができるのか、不安だらけだったという。歴史と伝統のある帝国劇場で若いアイドルが主演を務めることに対する批判の声もあったが、「黙らせてやる」という気持ちで挑んだ。  今の自分が、20年前の自分に言葉をかけてあげるとしたら? そう尋ねると、こんな答えが返ってきた。 「なにもかけられないんじゃないですか。ものすごく必死でしたから、今の俺がどう声をかけても届かないと思います」  05年からは演出・脚本・音楽など制作面の指揮をとり、現在の「SHOCK」のかたちを作り上げた。22段の「階段落ち」、命綱なしのフライング、激しい殺陣とダンス──。過酷な舞台に立ち続けることができたのは、舞台に対する強い思いがあったからだ。 「帝国劇場は満席でも2千人足らず、東京ドームなら一度のライブで5万5千人。若い世代には、『ドームのほうがいい』と思っている子もいるかもしれない。舞台には、ワーとかキャーとかいう歓声もありませんからね。でも、その限られた空間こそ、非常に贅沢だと思いますし、望めば立てるような場所ではないことを忘れてはいけません」  ジャニー喜多川さん亡き後に迎える20周年の節目には、特別な感慨もある。 「ジャニーさんは僕の中で、ずっと生き続けている。ジャニーさんの名に恥じない舞台にしたい」  3月30日夜には、1800公演を達成する。(編集部・野村美絵) ※AERA 2020年2月10日号
AERA 2020/02/04 11:30
【追悼】ジャニー喜多川さんが語った「平和の尊さ」「真実の重み」
【追悼】ジャニー喜多川さんが語った「平和の尊さ」「真実の重み」
ジャニーズ人気舞台が数多く上演された東京・日比谷の帝国劇場。終演後、ジャニーさんがロビーに立ち、関係者を見送ることもあった(c)朝日新聞社  ジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川さんが7月9日、87歳で亡くなった。多くの人気グループを生み出し、戦後日本の男性アイドル文化を確立した。所属タレントが語るエピソードを通じて、多くのファンに愛された。その功績と、彼が作り上げた数々の舞台を振り返る。 *  *  *  ジャニーズ事務所のタレントたちは、いくつになってもどこかに少年の面持ちをのぞかせ、たとえワルぶっても品の良さをきらめかせる。半世紀以上、芸能界を彩ってきたきら星のごときタレントたちこそ、ジャニーズ事務所の社長、ジャニー喜多川さんの最大・最良の作品であろう。  ジャニー喜多川さんは、そんなタレントたちの成長を父親のように見守り、叱咤激励し続けた。常に現場に身を置き、身軽に動きやすいようにするためか、運動靴を履いていたのが印象的だった。  ジャニーさんが生み出した人気グループやタレント、ミュージカル、ショー、音楽ステージは数知れず、この“運動靴のカリスマ”の喪失は、ジャニーズ事務所にとってだけでなく、日本の芸能界にとって、あまりにも大きい。  ジャニーズ事務所のタレント第1号は、1962年、あおい輝彦ら4人によって結成された「ジャニーズ」だ。彼らの活躍は、「A.B.C-Z」らによって舞台「ジャニーズ伝説」として上演された。  70年代には、後に事務所を離れる郷ひろみや、「フォーリーブス」が人気を博する。フォーリーブスの4人の個性は見事に異なり、しかもいずれも魅力的だった。これが、その後すべてのグループに発揮されるジャニーさんの「絶妙な組み合わせのセンス」の始まりだった。  80年代に入ると、各人の独立性も認めた「たのきんトリオ」やダンスを重視した「少年隊」などが芸能界を賑わせた。80年代後半にはローラースケートを取り入れた「光GENJI」も登場。  ジャニーさんの「組み合わせセンス」を考えるとき、筆者は70年代に流行したテレビアニメ「科学忍者隊ガッチャマン」における白を基調とする「大鷲の健」と、ダーク色を基調とする「コンドルのジョー」の対比術を想像する。「光GENJI」でいえば「健=諸星和己」、「ジョー=大沢樹生」の二極を置いて、メリハリをつけるという手法だ。  これは、90年代、2000年代を代表するアイドルグループ「SMAP」にも、いまや国民的グループとなった「嵐」にも、通じるものがあるのではないか。  日本では、遅くとも江戸時代ごろから、少年や少女が集まるアイドルグループ的な存在がことのほか好まれてきた。  グループのファンは、センターをとるカリスマ的なメンバーだけにひかれているわけではない。2番手や3番手、もしくは一見もっとも目立たないようなメンバーに強くひかれることもある。同じグループのメンバー同士を比べることで、発見する魅力もあるだろう。こうして、異なる個性を有するアイドルグループは、一人のアイドルでは到底獲得することのできない数のファンを獲得することとなる。  ジャニーズグループの解散や活動休止が、芸能界や娯楽世界の枠を超え、社会的な事件、事象として取り上げられるのは、このためだろう。    生前、ジャニーさんにグループメンバーの組み合わせの「錬金術」について聞いたが、ジャニーさんは、グループのメンバーを緻密に計算して組み合わせているとは、認めなかった。むしろ、そもそも論として、こんな答えが返ってきた。 「『ジャニーズ顔』と言いますけれど、顔のタイプで選んだりしていません。(「V6」の)井ノ原快彦が、よく言われる『ジャニーズ顔』ですか? 要するに、本人たちのやる気ですよ」  だがやはり、無意識のうちに理屈では説明しがたいジャニーさんならではの感覚が作用していたのではなかったか。その結果として、魅力的な集合体が生まれていったのだろう。  そして選ばれたメンバーたちは、他のメンバーとの比較から自分のキャラクターを見いだし、その個性に自覚的に磨きをかけていったと思われる。    多くの人気グループを生み出すと同時に、舞台作品も生み出した。作・演出・構成・総合演出・監修など関わり方はさまざまだったが、どの舞台にもジャニーさんならではの特色が感じられた。そして、多くは毎年のように上演されるシリーズ公演となった。 「PLAYZONE(プレゾン)」は1986年から2008年まで「少年隊」が主演を務め、それ以降はジャニーズの後輩に受け継がれたオリジナルミュージカルだ。15年、東京・青山劇場の閉館にともなって終了したが、30年にわたって夏の風物詩となった。 「KinKi Kids」の堂本光一の代表作「Endless SHOCK」は00年に始動し(当時は「MILLENNIUM SHOCK」)、今年3月31日に上演回数1700回を達成するなど、光一が単独主演の記録を伸ばし続けている。 「DREAM BOYS」は04年に始まり、滝沢秀明や「KAT―TUN」の亀梨和也らが主演、18年は「Kis-My-Ft2」の玉森裕太が主演を務めた。今年も「King & Prince」の岸優太や神宮寺勇太らにより上演される。  18年いっぱいで芸能活動を引退した滝沢秀明の代表作「滝沢歌舞伎」は06年「滝沢演舞城」として始まった和物ミュージカルだ。滝沢引退後の19年もキャストを変えて上演された。  東京・帝国劇場で12年にスタートしたミュージカル「ジャニーズ・ワールド」(後に「ジャニーズ・アイランド」と名称を変える)は年ごとにタイトルを変えて上演。「平和の尊さ」「子どもたちの可能性」「日本の素晴らしさ」など直球のメッセージを発信してきた。  これらの舞台に出演したタレントのなかには、錦織一清、光一、滝沢のように、自ら舞台の演出や脚本に関わっていく者も生まれた。  ジャニーさんの手がけた舞台にはいくつか特徴がある。  一つは、凝りに凝ったアクロバティックな演出。舞台の転換は、一瞬のもたつきも許さず、極めてスピーディーに行われる。  圧巻なのは、歌舞伎の宙乗りを現代的にバージョンアップし、ワイヤを使って空中を滑らかに飛ぶフライング。「Endless SHOCK」の光一も、「滝沢歌舞伎」の滝沢も、1度の公演で何度も飛ぶ。空中からタレントの汗が落ちてこようものなら、客席は大喜びだ。  目まぐるしく面が入れ替わる中国由来の「変面」はもはやマジックに近く、「滝沢歌舞伎」などでは定番となった。  体幹トレーニングなどでも注目される「エアリアルティシュー」も取り入れた。白い布を天上からつるし、舞台上空約10メートルの高さで展開されるパフォーマンス。命がけと言ってもいい場面だ。「嵐」の相葉雅紀も、コンサートで挑戦したことがある。タレントたちの真剣そのものの面ざしは、客席の緊張感を誘う。 「SHOCK」シリーズでは、光一が何十段もの階段落ちを見せるのが伝統となっている。いずれもおおむね、観客の目を左右上下にスピーディーに移動させ、妖精のようなタレントが危険に身をさらすハラハラ感をかき立てる効果をもたらす。  二つ目は、「ウエストサイド物語」に代表されるアメリカのショービジネスへの憧れ、オマージュだ。たとえば「SHOCK」シリーズでは、ジャジーな音楽が流れ、タキシード風の衣装の出演者たちが、街灯の下、少し物憂く、物悲しいアメリカの都会の夜の静寂を表現するシーンがよく出てくる。ストーリーもニューヨークのブロードウェーでの活躍を夢見る青年たちの姿を描いている。  こうしたシーンを見るたびに、私には、アメリカ西海岸で生まれたジャニー少年が、都会の夜、自分の影を見つめながら、ポケットに手を突っ込むなどして独り歩く、その後ろ姿と、不安と希望がないまぜになった少年の瞳の輝きが、目に浮かんでくるのだ。  前述の「ジャニーズ伝説」では、「A.B.C-Z」が初代「ジャニーズ」の歩みを演じている。渡米した66年、初代ジャニーズに提供された未発表曲「ネバー・マイ・ラブ」がテーマ曲だ。初代は諸事情で全米デビューを果たせなかったが、67年に米バンド、アソシエイションがカバーし、ビルボードチャートで2位の大ヒットとなった。舞台では、あおい輝彦が歌う「ネバー・マイ・ラブ」も流れる。運命の巡り合わせで叶わなかったとの思いは、ジャニーさんの記憶の奥でうずいていたのだろう。  三つ目は、和物へのまなざしだ。とくに近年、その傾向が強くなっていたように思う。「滝沢演舞城」「滝沢歌舞伎」などでは当然かもしれないが、そのほかの舞台でも「和」を意識したシーンが登場した。演出の根幹は主に欧米風なのだが、日本刀や太鼓といった使用する小道具・楽器、武士の無常の世界を描く物語は紛れもなく和物で、これが和洋融合の感触をもたらす。  四つ目として、「平和の尊さ」をメッセージに入れる脚本もジャニーさんの特徴だろう。16~17年の「JOHNNYS’ ALL STARS IsLAND」では「人の歴史を学ぶということはこの国の悲しみを学ぶということだ」という格言めいたセリフと共に、戦争や災害の映像が流れた。  アイドルがゴージャスに輝くショーとは対照的な、悲しみの歴史の提示。物語や暗示で平和への願いを表現する演劇はもちろん国内にもある。しかし、戦争や平和への思いが愚直なほどに純粋に、真摯に語られるセリフは、プロの舞台ではめったにお目にかかれないだろう。客席を埋め尽くす若い女性とその母親の胸を射抜く。涙を拭う人の姿もあった。  かつてジャニーさんは「ショーで日本にもかつて戦争があったことを知ってもらえれば。昔を生きているからこそ平和の尊さが分かる」と語っていた。  そして、出演者のプライベートな親子関係をそのまま吐露させることもあった。前出の「JOHNNYS’ ALL STARS IsLAND」では「Sexy Zone」の佐藤勝利が実の父の死を告白、同じ舞台で、現在は「King&Prince」の平野紫耀が、母の病気に苦悩する心情をはき出した。 「作ったストーリーに僕はあまり感動しない。真実の重みが、お客さまにもきっと勇気を与えると思うんですよ」とはジャニーさんの言。実に生々しく、シビアでもある。  ジャニーさんの舞台は、常に歌、踊り、演技、アクロバットなどの繚乱する華麗でエネルギッシュなショーとして立ち現れた。不安な者を勇気づけ、希望に燃える者を激励し、自らの姿勢を通じて、夢を抱くことの大切さ、追い続けることで訪れる何ものにも代えがたい至上の喜びを伝えたかったのではないだろうか。そこに少年の心のままの不朽の品性が光った。  自らの抱く夢の実現に心血を注いだ“不屈の夢追い人”だったのだ。 (朝日新聞社・米原範彦) ※AERAオンライン限定
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AERA 2019/07/10 18:01
堂本光一主演「SHOCK」“拝むしかない”その魅力とは?
カトリーヌあやこ カトリーヌあやこ
堂本光一主演「SHOCK」“拝むしかない”その魅力とは?
カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など イラスト/カトリーヌあやこ  漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、舞台「Endless SHOCK」(2月4日~3月31日 東京・帝国劇場)をウォッチした。 *  *  *  まばゆい! まばゆすぎて目がつぶれる。そんな堂本光一の主演ミュージカル「Endless SHOCK」のオープニングなんである。  キラッキラのライトの中、自ら発光しているかのような主役(なんたって名前も光一だ)が降臨する。  一幕で、彼がシャツの胸元をゆるめると、ザッ! 9割方女性の客席では、一斉にオペラグラスが掲げられる。ガン見。ガン見とは、まさにこのことだ。  とんでもない熱量の野鳥の会、いやこの場合、座長の会か。その視線が、舞台の一点(シャツが開いた三角地帯)に集中する。  帝国劇場にて、初演からなんと19年目のこの舞台。通算上演回数は今シーズンで1700公演にも到達したという。一人で主演を務める国内の舞台では、森光子主演の「放浪記」2017回に次ぐ記録だ。  19年たっても、まだまだ進化を続け、満員の客席も熱気みなぎる舞台。そのテーマはシンプルに「ショーマストゴーオン」だ。 「何があってもショーは続けなければならない」  物語の主人公、ニューヨークで舞台公演を続けるカンパニーのリーダー格であるコウイチ(堂本)が、常に語る言葉。 「ステージは生き物だ」  たとえ誰かがミスしても、全員でフォローするのだと。  金の粉を振りまくようなコウイチの軽やかなフライング。次の瞬間、(物語の演出で)落下しかけるが、見事にフォロー。  舞台は360度回転する真っ赤なオープンカーのイリュージョンへ……と、流れるように、舞台の表と裏が描かれていく。  もうこれ、アミューズメントパークのアトラクションかってくらい。座ってるだけで(当たり前ですが)、スイーッと目の前の景色がどんどん変わる。  フライング(ちなみにこの時のはりつめた上腕二頭筋も、オペラグラスポイント)から、マジックから、ダンスから、太鼓から、階段落ちへ。これがエンドレスなショックなんですねと、存分に思い知らされるのだ。  まぁ、私もかれこれウン十年ジャニーズのコンサートを見てきたわけなんですが。この舞台、まさにジャニーズの全部詰めですよ。  まずお化けね。お化けってのはヒュ~ドロドロじゃなくて、マイケル・ジャクソンの「スリラー」みたいな踊るゾンビ。二幕の冒頭に、あっ、お化け出たって思ったら、すぐシェークスピアだから。ジャニー(喜多川)さん、シェークスピア好きだから。  皆さんある? お化けからの「ハムレット」見たことある? ここで見られます。「ハムレット」からの「リチャード三世」からの棺桶。棺桶も必須アイテムなんで、よろしく。  そして、さらなる必須要素は、ジャパネスクだ。劇中劇で演じられる凄まじい殺陣(たて)。鎧(よろい)姿のコウイチと、きらめく刃、飛び散る鮮血。舞台中央には紅蓮(ぐれん)の炎に包まれた真っ赤な大階段。  その頂上から、なんのためらいもなく転がり落ちる。ノーマットレス&ノー命綱。  毎日、毎日、コウイチは落ちるのだ。千回、2千回と落ち続けるのだ。  堂本さん、今年の1月で40歳になったんですよ。信じられねぇ。年をとらねぇ。3時間の舞台をノンストップで突っ走るエネルギー、もう拝む。手を合わせて拝むしかない。ハッと周囲を見回すと、みんなも拝んでた、たぶん。  言うなれば、この舞台は「琥珀」だ。果てしない年月をかけて樹脂が化石化した琥珀。光にかざせば、黄金に輝く。  その輝きの中には、長い長いジャニーズの歴史の中、育まれてきたエンターテインメントのDNAが、閉じ込められているのだ。  座長であり演出家でもある堂本は、その「ジャニーズの琥珀」を手の中で温め、磨きあげ、輝かせ続けている。ジャニーさんがよく言っている「YOUやっちゃいなよ」こそ、「ショーマストゴーオン」なんだって、今私わかりました(え、違う?)。  今回の公演から、オーケストラの演奏者を増員し、舞台正面のオーケストラピットから、生演奏が響いてくる。その圧がすごい。歌と共に、音を振動として体感できる。まさに生のミュージカルならではの迫力だ。 「~SHOCK」は今、ジャニーズのエッセンスを色濃く生かしながら、よりリアルにシンプルに、本格的なミュージカルとしてさらなる高みに向かっている。 「止めろよ、なんで止めねぇんだ。続けろ、続けろって、何を続けるんだ!?」  これは、コウイチの幼なじみでライバル役・ウチ(内博貴)の台詞だ。ちなみにこの役は、ジャニーズ若手にとってミュージカルへの登竜門。これまでも今井翼、錦戸亮、生田斗真、屋良朝幸たちが演じている。  彼らが追い続けるのは、コウイチの背中。まぶしく大きなその存在。舞台のその先にある夢や憧れ。そして焦燥。まるで、現実の彼らとシンクロするように見えてくる。  止まらないこと。続けること。この物語で、くり返し語られる舞台の約束。けれど、舞台を止めないのはコウイチなのか、何があっても続けようと命を賭けているのは光一なのか。虚なのか、実なのか。見ていると、その境界線がどんどんあやふやになってくるのだ。 「ショーマストゴーオン」  19年間。1700回。何度、彼は自分に、ライバルに、観客に問い続けたことだろう。毎回全力で生きて、落ちて、飛んで。これからも決してショーは終わらないのだと、彼は言う。まばゆいばかりの光を放つコウイチの顔に浮かび上がる矜持と孤高を、ぜひ生で見て頂きたい。きっと寿命が延びるから。 ※週刊朝日  2019年4月12日号
カトリーヌあやこ
週刊朝日 2019/04/05 07:00
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すべては命を救うため──。朝から翌日夕方まで、36時間の連続勤務もざらだった医師たち。2024年4月から「働き方改革」が始まり、原則、時間外・休日の労働時間は年間960時間に制限された。いま、医療現場で何が起こっているのか。医師×AIは最強の切り札になるのか。患者とのギャップは解消されるのか。医師676人に対して行ったアンケートから読み解きます。

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