現代美術の辿ってきた道筋を、「芸術と社会との関わり」という観点から概観した労作。拡散の限りを尽くして門外漢には取っつきづらくなっている現代美術が、大きく見れば、美術館という既成の権威に囲い込まれてしまっているアートを、市井の人々に開かれたものにしていこうとするひとつの潮流であったということがよくわかる。

 本書のもうひとつの特徴は、美術史を貫いていた西洋中心主義を相対化する視座を意識的に提供している点。大正期の「マヴォ」を始めとする日本のさまざまな流派の活動を掘り起こしながら、旧植民地である台湾、韓国などにおけるポストコロニアルな動きにまで目を配っている。

 あいちトリエンナーレの一件も記憶に新しい中、身近な存在としての現代美術に気づかされる。(平山瑞穂)

週刊朝日  2019年12月13日号