書評『山の上のランチタイム』髙森美由紀著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《話題の新刊 (週刊朝日)》

山の上のランチタイム 髙森美由紀著

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二宮郁書評#話題の新刊

 物語の舞台は、葵岳の登山口にある「葵レストラン」。そこで働くのは、天真爛漫でおっちょこちょいの主人公の美玖。彼女が恋心を寄せるのはイケメン店長、登磨。登磨の甥の瑛太も手伝って店は連日盛況だ。

 一般客だけではなく、登山客の腹を満たすのも「葵レストラン」の仕事だ。体力自慢の美玖は、山の頂上まで弁当を運ぶ仕事も請け負っている。だが、この山は11年前に彼女の母親をのみ込んだ。幼い美玖の目の前で母親は滑落したのだ。自分に悲しさを背負わせた山に、それでも登る理由を、彼女はこう語る。

「母さんは『死』だけじゃない。ご飯食べて、歌って(中略)母さんは、葵岳が大好きだったんだよ」

「仇」であるはずの山を憎まず、愛した人の言葉を信じる美玖。家族への愛と優しさ溢れる小説だ。(二宮郁)

週刊朝日  2019年11月29日号


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