名作と呼ばれる小説やベストセラーになった作品には法則があるのか。欧米の著名な作家の作品をコンピューターを使って統計的に処理することで、新たな気づきを与えてくれる一冊だ。

 ヘミングウェイは副詞が少ない小説ほど優れていると説いたが本当か。天候の描写で始まる小説は本当に駄作なのか。感嘆符はどう使われているか。調査対象は本の内容にとどまらない。本の表紙に作者の名前をどれくらい大きく書くべきなのかなど、斬新なテーマは尽きない。

 分析結果に基づけば、作家は作品の質を手軽に高められる印象を受けるかもしれないが、統計が導くのは傾向に過ぎない。例えば副詞が少なくても優れていないと認定される作品は3割ほど存在する。人間の複雑な感性はまだまだ掴みきれないところも興味深い。

週刊朝日  2018年9月21日号