やり抜く力

ベストセラー解読

2016/11/02 12:21

 米国内では「天才賞」とも称されるマッカーサー賞を3年前に受賞したペンシルベニア大学心理学教授、アンジェラ・ダックワース。彼女がその研究成果をまとめた『やり抜く力』はこう主張する。
 どの分野であれ、人々が成功して偉業を達成するには、「才能」よりも「やり抜く力」が重要である──もともと才能があって努力すれば、他人よりも早くスキルが身につく。しかし、そこで終わってしまえば、達成はない。身についたスキルでさらに努力を続けて初めて、目標は達成される。成功には「才能」の優劣よりも努力の継続、つまり、「やり抜く力」が決定的な影響を及ぼすのだ。
 この「やり抜く力」は「情熱」と「粘り強さ」という要素でできているらしい。自分にとって最も重要と定めた目標に対して不変の興味を抱きながら粘り強く取り組む「情熱」と、困難や挫折に負けずに努力を続ける「粘り強さ」がそろっていれば、誰もが目標を成し遂げられるとダックワースは説く。その上で、「やり抜く力」を伸ばす方法を詳しく紹介する後半は本書の美点であり、教育界、ビジネス界、スポーツ界だけでなく、子育てに悩む親をはじめ、多くの一般読者に評価される理由となっている。
 継続は力なり、と昔からいう。ダックワースの結論をこれに倣ってまとめれば、継続こそが力なり、となる。……彼女の研究の集大成を読み進め、最後にあった「天才」の定義を目にしたとき、私はイチロー選手のことを思って納得した。
〈「天才」とは「自分の全存在をかけて、たゆまぬ努力によって卓越性を究めること」〉

週刊朝日 2016年11月11日号

やり抜く力

アンジェラ・ダックワース著、神崎朗子訳

amazon
やり抜く力

あわせて読みたい

  • 「頭が良くても使えない人」はこの差でわかる

    「頭が良くても使えない人」はこの差でわかる

    ダイヤモンド・オンライン

    10/3

    頑張ってるのに「なぜか二流」の人はこの性格が欠けている

    頑張ってるのに「なぜか二流」の人はこの性格が欠けている

    ダイヤモンド・オンライン

    9/26

  • 小泉今日子に学ぶ 今の時代を生き抜くための“4か条”

    小泉今日子に学ぶ 今の時代を生き抜くための“4か条”

    dot.

    10/8

    最終回 小泉今日子に学ぶ4か条

    最終回 小泉今日子に学ぶ4か条

    10/8

  • 自分探しはもう終わり! 心から納得できる人生を送るための「やりたいこと探し専門プログラム」

    自分探しはもう終わり! 心から納得できる人生を送るための「やりたいこと探し専門プログラム」

    BOOKSTAND

    8/5

別の視点で考える

特集をすべて見る

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す