タイトルと表紙から、軽いサブカルチャー論として読み始めると、痛い目に遭うだろう。確かに、400ページ近い本書の大半は表現規制を論じている。現在でこそマンガやアニメは「クールジャパン」と称賛される産業になりながらも、常に規制の対象になってきた。近年でも青少年の犯罪を誘発するなどの批判は多く、常に法改正の俎上に載せられる。
 現場では何が起きているのか。なりふり構わずに取り締まり強化の条例を定めようとする行政側と、自主規制を重ねるうちに、自ら、お上に検閲を要求する出版社。本来、法制度の埒外であり、人間の本能的欲求である表現に対する軽視と諦めがそこには交錯する。
 著者はこうした表現の自由を取り巻く現実を、人間の自由とは何かにまで深化させる。マンガやアニメの規制にとどまらず、情報統制が進む空気が現代は蔓延する。実際、ルールを無視した権力者の行動も目立ち始めた。黙って従うのか、行動するのか。言いたいことを言うのか。地を這うルポライターの誇りを賭けた一冊だ。

週刊朝日 2015年11月13日号