人生最後のご馳走

話題の新刊

2015/10/22 13:01

 週に1度、患者の話を聞き「リクエスト食」を提供している病院がある。大阪市の淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院。本書はここに通ってまとめたノンフィクションだ。
 患者や見舞いに訪れた家族から取材した話が14話並ぶ。独白あり対談あり。「食」にまつわる記憶から、夫婦旅行や子育ての情景など多彩な個人史が浮かびあがる。余命宣告を受けたにもかかわらず、話に翳りがないのは、「リクエスト食」の効果と無縁ではないだろう。カラー写真で各話のご馳走が紹介される。目に香ばしい揚げたての天ぷら、色鮮やかな握り寿司、こんがり肥った秋刀魚……。高齢者から「歯が悪い」と聞けば、キャベツを茹で、豚肉をミンチにしたお好み焼きを出す。
 ただ、おいしい料理を提供するのではない。「一人ひとり違う人生を持った患者さんに、個別にできることを病院として提供する。そのことが患者さんの『自分は大切な存在である』という意識につながる」。そこに意味があると副院長は言う。「しあわせ」のお相伴にあずかり、満腹気分になる一冊だ。

週刊朝日 2015年10月30日号

人生最後のご馳走

青山ゆみこ著

amazon
人生最後のご馳走

あわせて読みたい

  • ホスピス医から在宅医へ 山崎章郎医師が語る

    ホスピス医から在宅医へ 山崎章郎医師が語る

    週刊朝日

    6/29

    7割の人が望む“在宅医療”のメリット 医療用麻薬の使用量減るケースも

    7割の人が望む“在宅医療”のメリット 医療用麻薬の使用量減るケースも

    週刊朝日

    10/12

  • 被災地の医師 「震災で在宅医療が広まった」と語る

    被災地の医師 「震災で在宅医療が広まった」と語る

    週刊朝日

    3/16

    2800人の

    2800人の"最期"を看取った医師が患者に行っている「セラピー」とは?

    BOOKSTAND

    4/8

  • がん患者が漏らした「私はまだ治療がしたい」に医師は…
    筆者の顔写真

    大塚篤司

    がん患者が漏らした「私はまだ治療がしたい」に医師は…

    dot.

    9/20

別の視点で考える

特集をすべて見る

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す