書評『地平線の相談』細野晴臣、星野源著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《ベストセラー解読 (週刊朝日)》

地平線の相談 細野晴臣、星野源著

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永江朗書評#ベストセラー解読

地平線の相談

細野晴臣、星野源著

978-4163902364
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電車で読まなくてよかった

 白いサマー・スーツにボウタイ、口ひげの男が頬杖をついている。細野晴臣の名盤「泰安洋行」のジャケットと同じ意匠だ。ただし、この本では隣に星野源がいる。CDと並べてみると、細野の髪は白くなり、むしろ星野源がかつての細野のよう。親子あるいは同じ人間の過去と現在が並んでいるみたい。
『地平線の相談』は星野源が細野晴臣に人生相談をするという趣向の対談本。細野は人生の師、星野は熱心な弟子という役割が振られている。表紙が「泰安洋行」そっくりなら、タイトルは細野のエッセイ『地平線の階段』のもじりだ。星野が細野を敬愛する気持ちがあふれ出ている。
 相談といっても限りなく雑談に近い。かけ算に自信がないという話だの、楽譜が苦手だの、すぐに謝ってしまうだの(「うかつ謝り」というそうだ)。酒が飲めない二人の下戸談義とか。
 限りなく下らないのが貧乏ゆすりについての話だ。星野の相談は「体が弱ってるときの体を使わずに済むストレス発散法を知りたい」というもの。細野は「貧乏ゆすりは体にすごくいいんだよ」「細かいほどいいんだよ(笑)」「無意識にやってるんだったらカッコ悪いから、意識してやるべきだね(笑)」と、深い貧乏ゆすり哲学を語っていく。星野も「貧乏ゆすりしながら『愛してるよ』って言うのは面白いですね(笑)」などと返すものだから、ぼくは爆笑してしまった。電車や喫茶店の中じゃなくてよかったと思った。
 初出は雑誌「TV Bros.」の2007年9月1日号から13年3月27日号まで。この連載中に星野はくも膜下出血で入院・手術という事件もあった。無事に回復して、よかった、よかった。
 細野は1947年生まれで星野は81年生まれ。34歳という年齢差は親子であってもおかしくない。でも実の親だから相談できないことが世の中にはたくさんある。師と仰ぐ人だから訊けることもある。師匠を持つのは大切だ。

週刊朝日 2015年5月1日号


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