宗教の意義や死について発言を続ける宗教研究者による対談集。「宗教と日本社会」をテーマに、ノンフィクション作家の柳田邦男氏、イスラム研究者の内藤正典氏、政治学者の中島岳志氏や原武史氏はじめ、医師や神父、哲学教授の計7人と語り合った。
「宗教という鏡を通して日本人の心の置き所を問う」が全編を貫く問題意識だ。終末期医療や脱原発、ボランティア、靖国神社と国家神道、皇室と宮中祭祀などの現代的な課題を前に、神道や仏教から、キリスト教やイスラム教まで語る著者の博識ぶりが議論を深める。著者たちの中に特定の宗教の信仰者は、神父以外ほとんどいない。しかし、著者たちは、人知を超越した大きな存在に帰依する精神の重要性を説く。
 現代において、宗教に触れる意味は大きい。人間が生死や困難と向き合うときに信仰は助けになること、自国の歴史や異文化をわかるために宗教への理解は必須であることを、本書は教えてくれる。これからの日本人の生き方を考えるうえでも、大いに参考になる一冊だ。

週刊朝日 2015年2月13日号