どうせまた「女性の人材活用」とかいって女を体よく使い倒そうっていう魂胆じゃないの? でなけりゃ「女性は消費の神様だ」とか持ち上げて、せっせと物を買わせる作戦でしょ。『女性資本主義論』という書名を見れば誰だってそう思う。なぜって今までがそうだったから。が、著者の高橋仁はいうのである。
<そもそも20世紀とは、おっさんの世紀だった。/おっさん資本主義という怪物が世界を跋扈し、市場という処女地を求めては開拓と拡大を喜びとしながら油ギッシュに活動していたものだ>。しかし<おっさん資本主義は、もう死んでいる>。
 あれ、予想とちょっとちがう?
 さよう、本書は「狩猟」「開拓」「征服」を基本動作とする従来の「おっさん資本主義」と決別し、「誠実」「利他」「共感」などをベースにした「女性資本主義」にシフトせよと説いた本。アダム・スミスに始まる経済学史まで動員し<おっさん資本主義では、もう食えない>ことを立証するのだから念が入っている。
 いわく、おっさん資本主義にはブレーキがないので<これ以上の未開地がなくなっても、そのまま暴走を続けるほかない>。いわく、21世紀のトレンドは「グローバル化競争」だったが<そうした不毛な企業戦士の行進も、もう終わりである>。
 それにかわる「女性資本主義」の実例として紹介されるのは、たとえば、おっさんにとっては低コストの生産工場でしかなかったバングラデシュで労働条件の整備からはじめジュート製のバッグをブランドにしたマザーハウス。中・低所得者層の家庭を訪問してニーズを引き出しインドネシアで紙おむつのシェアをトップに引き上げたユニ・チャーム……。
 著者はエステ業界で成功した実業家。「なーんだ」という声は<そうした見方自体が「おっさん資本主義」の思考>と一蹴する。
 主張の内容にはおおむね賛成なんだけど、このタイトルはやっぱり胡散臭い。『さらば、おっさん資本主義』にすればよかったのに!

週刊朝日 2014年6月27日号