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伝える極意
話題の新刊
2014/04/02 16:51
本書はこれまで先進国首脳会議など多くの国際会議で同時通訳を担当してきた通訳の第一人者による、コミュニケーション論だ。
通訳というと一般的には単なる「言語仲介者」という見方が強い。しかし、本書冒頭ではそうした視点がきっぱりと否定される。話し手の発言を「伝える」役割を担う通訳者は、「話し手が伝えたいことは何か」「それをどう伝えるか」を常に考えることが求められる。著者は通訳者の作業プロセスを、聞く─理解する─分析する─翻訳する─話すという五段階に分解する。「翻訳する」とはつまり「言葉を置き換える」という作業だ。五段階の作業はいずれも、毎日のやり取りに不可欠なスキル。通訳という行為は人間対人間のやり取りにとって、多くの示唆を含んでいることがわかる。大切なのは技術より「伝えたい〈内容〉」を持っているかどうかだ、とその主張は一貫して明快だ。
スピーチやプレゼンの前などに読めば、本書のアドバイスは大いに役立つだろう。通訳という世界に縁がなかった人々にも実践的な一冊だ。
※週刊朝日 2014年4月11日号
伝える極意
長井鞠子著


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