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ウイスキー粋人列伝
話題の新刊
2013/07/17 18:26
酒の飲み方は人の性格を表すとは昔から言ったものだ。本書に登場する90人の著名人の逸話をひもとけば、ウイスキーほど飲み方がわかれる酒はなく、人の個性が前面に出る酒はないことがわかる。
作家の永井龍男は自宅に訪れた客にはウイスキーをたっぷり注いだ紅茶を出し続けた。夫人にたしなめられても誰が相手でも決して流儀を変えなかったという。江戸川乱歩はウイスキーを出さない小料理屋にも小瓶を忍ばせて通った。イラストレーターのリリー・フランキーは仲間と地図を見ながらバーを巡る。ウイスキーには飲み手の多種多様な楽しみ方を受け止め、遊び心を包み込む懐の深さを感じさせる。
最近は、ウイスキーを炭酸で割ったハイボールが若者の一部で再び人気とも聞くが、焼酎やワインに押されている感は否めない。ただ、本書の古今の魅力的なウイスキー愛飲史は、ウイスキーが廃れたのではなく、飲み手の多くが遊び心を失ってしまったのではと我々に投げかける。酒飲みには楽しくも反省させられる一冊である。
※週刊朝日 2013年7月26日号
ウイスキー粋人列伝
矢島裕紀彦著


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