- エンタメ
- 記事
ヒーローを待っていても世界は変わらない
話題の新刊
2012/10/10 12:50
貧困問題に取り組み続ける著者による「民主主義」論である。国内の民主主義が現在抱える「ねじれ」を指摘し、視点の転換を促す。
著者は近年の民意の特徴に「ヒーロー探し」をあげる。主権者が自分たちで問題を調整し、合意形成する民主主義のスタイルは現実的に面倒くさい。ゆえに、人々に代わり悪を懲らしめる切り込み隊長=ヒーローが待望される。しかし、万人が合意する判断はありえない以上ヒーロー探しは裏切りを前提とし、民主主義の空洞化を加速させるという二重のねじれを抱えている。現象の背景には格差・貧困の増大による人々の余裕の消失があるが、いま必要なのは人と人の関係を結び直す「場」を作り、「自分たちで決める」基盤を取り戻すこと。たとえば「足湯」や「炊き出し」などのボランティアはいずれも被支援者のニーズを聞き出し、共同体間の調整や合意形成をスムーズにするツールとなる。
主張は一貫しているが、押しつけがましさは微塵も感じさせない。真摯に語りかける、著者の姿勢に心を打たれる。
週刊朝日 2012年10月19日号
ヒーローを待っていても世界は変わらない
湯浅誠


あわせて読みたい
別の視点で考える
特集をすべて見る
この人と一緒に考える
コラムをすべて見る
カテゴリから探す
-
ニュース
-
教育
-
エンタメ
-
スポーツ
-
ヘルス
-
ビジネス