壮絶な環境でも海外大進学の目標を曲げなかった松本さん(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)
壮絶な環境でも海外大進学の目標を曲げなかった松本さん(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)

■「アメリカの大学受験って簡単なんやろ?」と言われて

――海外大受験について、周りの人の反応は。

松本:私の周りは猛反発でした。私が勉強していたら、同級生が「アメリカの大学受験って簡単なんやろ?」「数学は誰でも解けるレベルなんやろ」と謎の嫌がらせをしにくる。学校の先生にも、廊下ですれ違いざまに「アメリカの大学は帰国子女とかじゃないと無理だと思うから、考え直した方がいいと思うぞ」と言われていました。海外大出願のためのエッセイ(小論文)を書くために教室でパソコンをいじっていると、「でもエッセイ書くだけでしょ?」「日本より楽じゃん、逃げじゃん」とも言われましたね。

松野:私の学校には人のやりたいことを尊重するという自由な空気があったので、そこまで荒波という環境ではなかったです。周りの皆も海外大受験がどういうものなのか理解はしていなかったと思うのですが、私が頑張っているということは伝わっていて、同級生から「頑張ってね」と声をかけてもらったのはありがたかったですね。

松本:私も頑張っている姿を見せるとその状況も変わってきました。秋ごろになると切羽詰まってきて、頭はぼさぼさの状態で眼鏡をかけて登校して、机にエナジードリンクを置いて誰とも話さずに勉強していたんです。先生も「寝てるか? 大丈夫か?」と心配してくるんですよ(笑)。最後のほうは、皆「こいつは本気なんだな」とわかって応援してくれました。

 私の学校では「女子は絶対に続かないから理工系には行くな」と言われていました。物理の先生から「今ここにいる女子は物理は向いてないから生物選択に変えてこい」と言われて女子が泣き出したことがあったんです。そこで私が「何を言ってるんだ」と立ち上がったら、ほかの皆に「考えすぎなんじゃない」と言われて。

松野:ええ……実際に理工系に進学した人もいないの? 

松本: 本当は工学部に行きたかったのに、「潰しが効かない」から仕方なく医学部に行った先輩がいて、彼女が高校に合格体験記を話しに来た時に、号泣しながら「医学部なんて行きたくなかった」と言ったんですよ。そのあとトイレに行ったら、私と同じ理工系志望の同期の女子たちが泣いていて。その子たちに「お前ら絶対行きたい道曲げんなよ、行きたいところに絶対行くべきだ」って言ったら、今年はたくさん理工系進学者が出た(笑)。

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東京の高校生と会って気づいた地方との格差