金大中氏が押し倒された2210号室の現在のベッドで検証する重村智計氏(撮影/今枝弘一)
金大中氏が押し倒された2210号室の現在のベッドで検証する重村智計氏(撮影/今枝弘一)

――金大中氏にとってこの事件とは何だったのでしょうか?

 当時、彼は野党から追放され、捲土(けんど)重来を目指している時期でした。国内では政治家として終わっていて、身の危険なんてなかったんです。そんな時期にあの事件が起こった。無名だった彼は事件があったからこそ、日本やアメリカ、そして韓国で有名になり、ついには大統領にもなれたといえます。数寄な運命ですね。

――金大中氏は事件でよくめげませんでしたね。

 彼には度胸があったし、危機を乗り切る頭のよさがあった。1980年に死刑判決を受けたのに、その18年後に大統領になっちゃったんだから。すごい人ですよ。

 金大中事件が発生していなかったら、韓国と日本の歴史は大きく変わっていた。そのことだけは間違いない。(西牟田靖)