1993年6月9日 パレードで手をふるおふたり
<br />(c)朝日新聞社
1993年6月9日 パレードで手をふるおふたり
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 1993年6月9日に天皇陛下雅子さま結婚の儀が盛大に行われてから28年の歳月が流れた。昭和、平成、令和と時代が移り変わる中、記者が垣間見たご夫妻の素顔とエピソードを振り返る。

【写真】あわや尻餅をつきそうになった雅子さまを陛下がアシストしたショットはこちら

 朝からふり続いた雨はパレードの直前にやみ、光が差した。
 1993年6月9日午後4時45分、陛下と雅子さまを乗せたオープンカーが皇居を出発した。4・2キロを時速10キロで進む。 陛下の隣でほほ笑む雅子さま。パレードが通る皇居から元赤坂の東宮仮御所の沿道には19万人が詰めかけ、3万人の警察官が警備にあたった。

「雅子さま、きれい」

 おふたりは、祝福の声に包まれたーー。
 
【旅先の宿で同じ月を眺め、歌に詠んだおふたり】

 83年から2007年まで昭和天皇皇族方の和歌の御用掛を務めた岡野弘彦さんは、かつて記者に、ご夫妻の仲むつまじいエピソードを話してくれたことがある。

 ご結婚から最初の歌会始に向けて、おふたりは岡野さんに和歌を出した。おふたりは偶然にも、同じ夜の情景を詠みこんだ和歌であった。
 ご結婚から2カ月後におふたりは、滋賀県を訪れている。地方公務とはいえ、実質的には新婚旅行のようなものであった。そこで雅子さまは、宿泊したホテルの部屋から望む琵琶湖の風景を詠んだのだ。

<君と見る波しづかなる琵琶の湖(うみ)さやけき月は水面(みのも)おし照る>

 そして陛下も、同じ夜の情景を次のように詠んだ。

<我が妻と旅の宿より眺むればさざなみはたつ近江の湖(うみ)に>
 
 歌会始で和歌が披講されると、何人かの方からこう聞かれた。

「岡野さん、雅子さまのお歌の下の句を直したでしょう。あの調べは見事だもの」

 岡野さんは、雅子さまの和歌に手を加えることはしなかった。それほど完成されていたのだ。

登山で雅子さまはヘトヘトに】

 登山が趣味で山岳会員でもある天皇陛下。新婚当初は、よく雅子さまとお二人で山に出かけた。「女性自身」で長く皇室写真を撮り続けたカメラマンの河崎文雄さんは、懐かしそうにおふたりのエピソードを振り返ったことがある。

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「イクメン皇太子」であった陛下