撮影:竹沢うるま
撮影:竹沢うるま

 写真家・竹沢うるまさんの作品展「BOUNDARY|境界」が4月20日から東京・銀座のキヤノンギャラリー銀座で開催される(大阪は6月8日~6月19日)。竹沢さんに聞いた。

【竹沢うるまさんの作品はこちら】

*  *  *
(んん、)。送られてきた竹沢さんの写真展案内を開くと、考え込んでしまった。そこには2枚の写真が並んでいるのだが、その脈絡がよくわからないのだ。

 右の写真は雪の降り積もった砂浜に打ち寄せる波。波打ち際の雪がとけ、境目に白と黒のくっきりとしたギザギザのラインが写っている。(なるほど、これが「BOUNDARY」、境界線なわけね)。そう、思った。

 気になったのはもう一枚の写真。ずらりとたくさんの仏像が写っている。京都・三十三間堂のような感じである。しかもブレている。しばらく考えてみたものの、となりの浜辺の写真や作品タイトルとどう結びつくのか、よくわからない。

撮影:竹沢うるま
撮影:竹沢うるま

■SNSでは反応がないと思う

 インタビューの出だしで、そんな疑問を竹沢さんに伝えると、それが今回の写真展のねらいの一つという。

「ちょっと、難しいかなあ、とは思いましたけれど、写真展を見た人が、(あれっ)と思うわけですよ。そこに疑問が生まれる。考えながら見ていかなければならないので、写真と向き合う時間が長くなるんじゃないか、と」

 先に書いた波打ち際の風景は、北大西洋に浮かぶ火山の島国、アイスランド。流れ出した溶岩が冷えて固まり、真っ黒でなだらかな地形を生み出している。人口密度は極めて薄く、人の手が触れていない原始の大地が広がっている。

 撮影に訪れたのは11月。黒い大地を薄く覆った新雪が少しとけ、白と黒のまだら模様のクリアーなコントラストが美しい。カラーで写されているけれど、モノトーンの世界。

「意識したのは『風景』というより『造形』。極力シンプルでありたかった。たぶん、こういう写真って、SNSにアップしてもそんなに反応がないと思うんです」

 はたして、そうだろうか。思い浮かんだのは山岳写真家、田淵行男の代表作「初冬の浅間」。なだらかな黒い山肌と雪がつくり出したディテールが印象的な作品で、竹沢さんの写真にもそれに通じる美しさを感じる。

 境界線を感じさせないのっぺりとした地形。対照的に、黒い大地と白い雪はくっきりとした境界線を感じさせる。

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流れに乗る必要性は感じなかった