硬派なストリートスナップの担い手・元田敬三が写す風景と身近な人々 (1/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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硬派なストリートスナップの担い手・元田敬三が写す風景と身近な人々

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米倉昭仁dot.#アサヒカメラ#スナップ
2019年2月20日。逗子で。渚橋からグッドモーニング。毎朝ココからすべてが始まる

2019年2月20日。逗子で。渚橋からグッドモーニング。毎朝ココからすべてが始まる

写真家・元田敬三さんの作品展「渚橋からグッドモーニング」が9月10日から東京・目黒のコミュニケーションギャラリー ふげん社で開催される。元田さんに聞いた。

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「見えるかな、見えないかな」と、思いつつ外に出る

「これが今回の写真展です」と、元田さんに言われ、案内状を手渡されると面食らってしまった。「えっ、富士山?」。しかも、タイトルは「渚橋からグッドモーニング」である(「泪橋」なら少しわかるような気がするが)。

 相模湾に面した神奈川県逗子市に住む元田さんは、朝4時半に目が覚めると寝床の中でごそごそし始めると言う。「もうわくわくで、寝てられないんですよ。それで撮りに行く」。

 自宅から歩くこと数分、住宅地を抜け、田越川の河口に架かる渚橋に着くと、突然視界が開ける。目の前に海が広がり、奥に江ノ島、運がよければそのすぐ左に富士山が見える。

「『おー、富士山が出てる』って、それが楽しみで。富士山って、見える日と見えない日があるじゃないですか。『うわ、今日はこんな天気。見えるかな、見えないかな』と、思いつつ外に出るんです」

 でも「撮りたくなかったら撮らない。アラームをセットすることもないし、寝たかったら、寝てる」。しかし、そう言いながらも、「めっちゃ眠い、めっちゃしんどいとき以外はほぼ毎日行ってるなあ」。ようやく案内状の謎が解けた。

「でも、タイトルにこんなん書いてありますけど、東京でも、『あっ』と思ったら撮ってるし。誰かと会ったとか、心が動いたら撮る。それはストリートで撮るときとぜんぜん変わらないです」
2019年4月5日。逗子で。コジロウ(14歳)中学校の始業式。制服が小さくなったから買って欲しいという

2019年4月5日。逗子で。コジロウ(14歳)中学校の始業式。制服が小さくなったから買って欲しいという

これで写真展をするなんて、夢にも思ってみなかった

 実をいうと半年ほど前、私はその撮影の瞬間を目撃していた。当時、私は元田さんのストリートスナップの取材で、いっしょに渋谷センター街を歩いていた。残念ながらこの日の撮影はほとんど収穫なしだった。澄み切った青空。強烈な西日が渋谷駅前の雑踏を照らしていた。宣伝放送やストリートライブの音楽が鳴り響いていた。

 突然、元田さんはすり切れたカメラバッグに手を滑り込ませると、小さなフィルムカメラ(富士フイルム・クラッセS)をつまみ出した。そしてスクランブル交差点を横断する人の群れに目をやりながら「光がきれいですね」とつぶやき、パチッとシャッターを切ったのだ。

「このカメラでうちのまわりを撮っているんです。しかもポジで。で、たまにスライドショーをかちゃかちゃやったりしてます」。そう言うと、「あー、気持ちいいなあ」。伸びをするように息を吐いた。

 たったそれだけのことだったが、なぜかそのときの光景が強く印象に残った。でも、あの小さなカメラで写した写真で展覧会を開くとは、まったく想像していなかった。

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