長年の経験から拭き心地の良い葉っぱは熟知。2枚重ねにすると破れにくくなり、ズルッとすべったり溢れたりせず、うんこが手につくことを避けられるという。「一度経験しておくと、いざ災害が起こってトイレが使えなくなったときにも大丈夫だという気になりますよ」
長年の経験から拭き心地の良い葉っぱは熟知。2枚重ねにすると破れにくくなり、ズルッとすべったり溢れたりせず、うんこが手につくことを避けられるという。「一度経験しておくと、いざ災害が起こってトイレが使えなくなったときにも大丈夫だという気になりますよ」

■野ぐそから考える地球の未来

 伊沢さんが現在の日本のうんこ処理を問題視するのは、自然に対して強い負荷をかけているからでもある。

 日本では年間約1000万トンにもおよぶうんこが処理されているが、その方法は下水処理場を稼働するために大量の電気を使い、分解後の汚泥をやはり大量の重油を使って燃やし、その灰はセメントの原料にする、または埋め立てるのが主流だ。

 これにさらにトイレットペーパーを作るために木が切られ、化学物質やエネルギーが使われて環境を破壊し、トイレでお尻を洗い、うんこを流すために莫大な水が必要になる。

 エネルギーや資源をいっさい使わず、すべて自然に還すことができる“葉っぱ野ぐそ”こそが地球をサステナブルなものにするために最も有効な手段だ、と伊沢さんは考える。

「グレタ(・トゥンベリ)さんにもうんこのことを教えたい。彼女が『大人は何やってんだ!』と怒るのは当然ですよ。豊かになることばかり考えて地球をめちゃくちゃにしてきたこれまでの世代のツケを背負って、今の子どもたちは生きていかなきゃいけないんですから。私は17個あるSDGs(持続可能な開発目標)の18番目に、野ぐそのことを入れたいんです(笑)。

 自然界の食物連鎖の頂点にいるライオンをはじめとする肉食動物は、生きている動物を食べ、それは残酷なんだけれども、自然の中で共生していますよね。なぜなら、野ぐそをすることで食べた分の命を自然に還しているから。うんこを他の生きものに食べてもらうことで、次の生命に貢献している。そうやって自分がもらった命をうんこというかたちで自然に還すのが、共生を実現するための生き物の責任なんです」

(取材・撮影・文/飯田一史)