同じ場所にうんこをしつづけると分解しきれなくなるため、次の野ぐそまでに1年以上あいだをあけるために、野ぐそ跡には枯れ枝で目印のバッテンを立てる。ゆえに掘り返し調査も容易。写真は菌類の分解がすんでミミズに食べられ、“団粒土”という状態になったもの。「今、うんこ触ってんですよ?」と楽しげに語る
同じ場所にうんこをしつづけると分解しきれなくなるため、次の野ぐそまでに1年以上あいだをあけるために、野ぐそ跡には枯れ枝で目印のバッテンを立てる。ゆえに掘り返し調査も容易。写真は菌類の分解がすんでミミズに食べられ、“団粒土”という状態になったもの。「今、うんこ触ってんですよ?」と楽しげに語る

■野ぐそはなぜ必要なのか?

 こう言っても「変わった人がいるんだなあ」くらいの感想しか抱かないかもしれないが、災害大国日本では、いつトイレの機能が停止してもおかしくない。

 実際、震災などで電気も水道も止まれば、水洗トイレはたちまち使用不能に陥る。そこで新たな防災対策では、携帯トイレとトイレットペーパーを備蓄し、燃えるゴミへの移行を推奨するようになったが、先の地震のようにゴミ焼却場が被災してしまえば、それも不可能。南海トラフ巨大地震が起きたとき、静岡県富士市の海岸沿いに集中している製紙工場が機能停止すれば、紙の供給も滞り、うんこが出せない、拭けない、燃やせないという最悪の事態になってしまう。

 ところが茨城在住の伊沢さんは、東日本大震災で電気が5日間、水道が3週間も止まったが、野ぐそをし、葉っぱで拭くスタイルを実践していたため、普段通りすごせたという。

■野ぐそ感度が高いのは女性と子ども

 しかし、女の人が野ぐそをするのは危ないのではと振ると、「講演会には女性のほうが来ます。どちらかというと女の人のほうが勇気がありますね。若い男が一番だめ」と言う。つい先日も伊沢さんの家にうんこを扱った創作劇の取材で訪れ、庭で野ぐそをしていった若い女性がいたそうだ。

登山や釣りに行った人たちで野ぐそしている人は本当はたくさんいるんです。でもそれは、トイレがないから仕方なく、という人たちがほとんど。そうじゃなくて『自然との共生なんだ』と教えたい」

 伊沢さんは各地で子どもに対しても自然の循環のしくみを説き、野ぐその掘り返し調査の実践も提案している。

「子どもも多様ですから、好奇心が強い子もいれば今の生活から出たくない子もいます。でも総じて若いほど頭は柔軟。おもしろければすぐに『やってみよう』となります。3年前に夏休みの野外活動に呼ばれて講演したんですけれども、私が『野ぐそは人間が食べて奪ったものの命を自然に還すことなんだ』と言ったら、小学5年生の女の子が翌日早速実行してくれて、そのことを作文コンクールに出したんですね。それが学校や自治会で評判になって、今度は姫路市の小学校で講演会に呼ばれ、さらにうんこの授業もしてきました」

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「グレタ(・トゥンベリ)さんにも教えたい」