「日本の人は、紅茶と言ったら、イギリスが本場だと思っているでしょう? でもフランスの紅茶の消費量はイギリスよりも多いの。だから紅茶のことはフランス人に聞きなさい」。

 紅茶の消費量の話が根拠のある話かどうかはわからない。マダムの“紅茶を愛するフランス人”としてのプライドが、この発言に結びついただけかもしれない。

 でも、「あぁ、そうなんだ」と納得してしまうくらい、出されたアイスティーがおいしかったので、私は今でもその話を信じている。

もちろんミルクを入れてアイスミルクティーにしてもおいしい
もちろんミルクを入れてアイスミルクティーにしてもおいしい

 ■教えてもらった、マダム式氷を使わないアイスティーの作り方

(1)できればやかんではなく、鍋に2リットルの水を入れ、沸かす。

(2)沸騰したら火を止め、ティーバッグを3包入れてふたをし、21分蒸らす。

(3)ふたをはずし、菜箸などでそっとティーバッグを取り出す。

(4)粗熱が取れるまで放っておき、粗熱が取れたらピッチャーやジャグなどに移し変え、冷蔵庫でひと晩冷やす。

 確かにティーポットにティーバッグと湯を入れて3~5分後、氷をたっぷりはったグラスに注ぐアイスティーの作り方とはえらい違いである。簡単に言えば、丁寧。手間がかかっている。

 マダムいわく1つ1つの作業にこだわりや意味があるとのこと。

●1度に少量作るよりもたっぷりと作った方が紅茶は絶対においしい。

●やかんではなく鍋なのは、ティーバッグを入れて蒸らす際、抽出された紅茶成分がまんべんなく全体に行き渡るから。

●ティーバッグを取り出す際、絶対に乱暴に取り出さないこと。乱暴に取り出すと渋みが出てしまうので、水面を動かさないくらいやさしく取り出して。
●急速に冷やすのではなく、時間をかけて冷やすことで紅茶の味を壊さない。

 ここまで聞いて、思わず私は質問してしまった。

「マダム、21分ですごく半端な時間ですよね? 20分蒸らすのではダメですか?」。

「ダメよ! 私はもう何十年も夏になるとアイスティーを作り続けてきて、やっとこの最適な蒸らし時間にたどりついたの。20分でも22分でもダメ。21分、ちゃんと守るのよ」。

 即答だった。

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ティーバッグでいいの?