デジタルカメラは画像をその場で確認できる安心感がある。一方、そこにはコワさもある。スマートに見えても、何が伝えたいのかわからない「あまい」写真が量産される昨今、もう一度、きちんと、丁寧に撮ることを思い出してほしい――。「アサヒカメラ」7月号では、「人に伝わる夏風景」を写す基本技術を特集。ここでは、写真家・福田健太郎氏による「水の風景を撮る光」を紹介する。撮影テクニックに走りすぎることなく、自然や風景が見せるちょっとした変化に敏感に反応し、「本当に残したい風景」を撮ってほしい。
※【夏の風景写真撮影ガイド】水の風景を撮る基本
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ここで紹介する2枚の写真のように、直射光が当たっているかどうかによって、水の風景の表情は大きく変わる。この2枚に優劣はなく、光の変化によって感じたものをどう表現するかが大切となる。
ちなみに、夏の強い光が当たった水の風景はドラマチックではあるが、撮影するのは意外と難しい。むしろ、曇天下や日陰のフラットな落ち着いた光のほうが撮影しやすい。
事前に撮影現場の状況がわかっていれば、朝夕の斜光を利用するなど、強い光が当たらない時間帯を選んで入渓することを意識している。
いちばん難しいのは日中のまだらな光。森の中の渓流や滝に夏のトップライトが当たると、強烈な陰影が生まれる。それがスポット光のようにまだらに広がっていると、とても撮りづらい。HDR機能を使い、明暗差を軽減することもできるが、やはり、写真に明るい部分が点々としていると、画面が散漫になってしまい、集中して見ることができない。これでは作品として成り立たない。
こんな場合は、明暗差を生かしつつ、画面内で光が当たっている部分と影の部分を整理していく。左上の写真のように、光が当たり、存在感を増しているポイントを探して生かし、それを強めるようなフレーミングを考える。露出は、暗部はぐっと引き締めて明るいところを強調すると、光にあふれるイメージとなる。ハイライト部が白とびして階調が失われないように気をつけよう。
曇天や日陰の均一な光では、水の風景のやさしさや、やわらかさみたいなものを伝えやすい。濡れた岩の質感や森の緑など、湿潤な環境を伝えることもできる。このような風景に頭上からスポット光が入ってしまうと、どうしようもなくなってしまう。曇り空か光が弱い時間帯がベストだ。ISO感度を下げると、ある程度絞り込んだ状態でスローシャッターを切りやすくなる。
■水の反射は、すべて消すものではない
PLフィルターは必需品。葉の表面反射、水面の反射をカットすることによって、被写体本来の色、葉の緑、水の流れ、濡れた岩肌などが見えやすくなる。
気をつけなければならないのは、濡れた岩のにぶい輝きなどは、岩の立体感、濡れた質感を表す重要な要素なので、何でもかんでも反射を消してしまうのではなく、被写体によってはうまく反射を残すさじ加減が必要になる。高速シャッターを得たいときには外すなど、状況によってつけたり外したりすべきフィルターである。
写真・文=福田健太郎
※アサヒカメラ2019年7月号から抜粋